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賢者サイド 外道1

「何をしているのです!? もっと前に出なさい!」


 私は雇った冒険者に向けて、叱咤しました。


 私は今、手頃なダンジョンに潜り、経験値を貯めています。


 本来であれば、こんな面倒なことはしたくありません。


 私には既に巨大な権力があるのですから。


 しかしです。


 忌々しいレオダスが、妙な動きをしている。


 “真実の鳥”なるアイテムを手に入れて、私の邪魔をしようとしているのは間違いないでしょう。


 そうなると、こちらもなんの準備もせずに待っているのは愚策というもの。


 力に訴えてられた時、なんらかの対策をしなくてはならないでしょう。


 その為のレベル上げというわけです。


 あのレオダスでさえ、強力なスキルを得たのです。


 ならばら私がレベルアップすればどれだけ強力なスキルを得ることが出来るのでしょうか?


 ふふ、軽く笑ってしまいますね。


 タダでさえ強い私が、さらに強くなってしまうとは。


 ですが。


 噂では優秀といわれていた冒険者も、いざパーティーを組んで、冒険に出てみれば、全く大したことがないのです。


 まず、前に出ようとしません。


 アルトスなどは、ガンガン前に出て、私(後衛)を守ったというのに、モンスターが抜かれてしまった後の対応が遅いのです。


 これでは、私に被害が及んでしまいますよ。


 当然、私は後ろに下がります。


 しょうがない連中ですね。


「セリシオさん。魔法はまだか!?」


「今、唱えています。あなた達こそもっと私を守りなさい!」


「精いっぱいだ。頼む、早くしてくれ!」


 くっ、クレアなら身を挺して私を守ったのに。


 モンスターがこちらに近づいてきます。


 ま、不味い。


 私は、魔法を放ち、これをなんとか撃退しました。


 ですが、まだまだ魔物はいるのです。


 冗談じゃありませんよ。


 レベル上げに来たというのに返り討ちにあうなど。


 仕方ありません。


 私は後方に撤退しました。


「なっ、セリシオさん。あんた逃げるのか!?」


 冒険者の一人は、酷く驚いているようです。


 なんですか? 私も満足に守れないのに、時間稼ぎも出来ないのですか、このグズめ。


「私が逃げるまで、時間稼ぎをしなさい!!」


「じょ、冗談じゃないぞ」


 冒険者は懐から閃光玉を取り出し、それピンを抜き、宙に放りました。


 眩い光が辺りを覆い、モンスターは怯みます。


 その隙に冒険者達も撤退を始めました。


 一緒に逃げるのですか?

 使えませんね。


 まあ、足止めが出来たのでしたら、構わないでしょう。


 私達は安全地帯までなんとか逃げ延びました。


*********


 私は息を整えると、冒険者に向かって悪態をつきました。


「全く、あなた方はなんなのですか? こっちは高い金を払っているのですよ? 私を守ることも出来ないのですか?」


 それを言うと、冒険者達は顔を真っ赤にして怒っているようです。


 なんですか?


「ふざけるな! あんた、戦えるんだろ! だったら戦え、俺らは一緒に冒険しようっていうからついてきたんだ。おもりをするためじゃない!」


「なっ、なんだとぉ!!」


 なんと愚かな。

 こいつらはいったい何を言っているんだ?


「雇い主を守るのは当然のことでしょう?」


「だから、俺らはあんたの護衛をする為に雇われたんじゃないって言ってんだ。足手まといを連れて難易度の高いダンジョンに挑むなんてまっぴらごめんなんだよ!」


「あ、足手まといですって? この私が!?」


 こいつらの頭はおかしいのですか?


 勇者パーティーの一員であった私を足手まとい?

 愚かにも程がある。


「何故、私が足手まといだと言うのです?」


「逃げてばっかりだろ。ちゃんと援護してくれ」


「文句は私のセリフですよ。私は雇い主であると同時に、魔法使い。つまりは後衛ですよ。しっかり守ってくれなくては困ります」


「こっちはいっぱいいっぱいだ。逃げなくてもいい場面でも、我が身可愛さに逃げ回っているんじゃ、こっちもどう立ち回っていいのか分からない」


「だから、何度言わせるのですか。私は雇い主であると同時に後衛だと」


 冒険者は私が喋っているというのに、それを塞ぎ喚き立ててきました。


「それに、自分の身が危険になると、こっちの被爆を考えずに魔法をぶっ放つ。俺達も一緒に殺すつもりか!?」


「私の身を守る為です。仕方ないでしょう」


 私は当然の反論をしました。


 こいつら、どこまで無能なのですか?


 あの、あのレオダスでさえ、私が魔法を撃つ時は配慮したというのに、こいつらは自分の無能さを棚に上げて、何をのたまわっているのです?


 これでは前にステラが言ったことと同じではないですか。


 冒険者はだらんと身体を垂らし、諦めともいえる態度で、歩き出します。


「ど、何処に行くのですか?」


「帰るんだよ。あんたと一緒にいたら、命がいくつあっても足りないからな」

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