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追放

「出て行きなさいレオダス。あなたは不要です」


 賢者(自分では大賢者と言っている)セリシオからそう言われ、俺は茫然とした。


 同時に遂に言われたかとも思った。


 だが、それは口に出さず、俺は震えた声で問うた。


「何故だ?」


 セリシオは呆れすぎていっそ憐れだといった表情を作り答える。


 こいつ・・・。


 賢者セリシオ。

 165センチ程。

 紫色で肩のあたりまで伸びた艶のある長髪で、目にはモノクルを付けており、魔法使いが好む飴色のローブを纏っている。


 賢者というだけあって、非常に物覚えがいい。


 その上、魔法の習得も早い。


 だからだろう。

 自分よりも下と思った奴はとことんまで馬鹿にする。


 自分よりも優秀、あるいは借りを作った相手には、そいつのことをいつまでも根にもったり、陰口を叩く。


 俺の場合は前者。


 俺の名はレオダス。

 ジョブは魔法剣士。

 耳にかかるくらいの黒髪と、今は身軽で、村人がよく着ている服を着ており、背丈は179センチで、細いながらに鍛え抜かれた筋肉を保持出来ているという自負を持っている。


 セリシオは俺のことをある境を期に見下し始めた。


 それからは酷いもので、事ある毎に俺を馬鹿にしたり、あげつらったり、俺の心に傷をつけてのだ。


 そして、奴は言う。


「あなたが足手まといだからです。いつまで私に甘えて居座るつもりですか?」


「少なくとも、お前に甘えたことはないぞ」


 セリシオは鼻で笑いながら肩をすくめた。


「自覚がないというのは困ったものですね」


 ・・・屈辱だ。

 これは屈辱だ!


 俺はこれまで決して口に出さなかったことを言ってしまう。


「今までおんぶに抱っこだったのはお前の方だろうが」


「黙りなさい」


 それが気に障ったのか、セリシオは顔を歪めピシャリと言った。


「いつまで昔のことを言っているのです? 過去の栄光、それがあなたの心の支えですか? 女々しいことこの上ない」


「このっ」


 思わず拳に力が入る。


 落ち着け。

 落ち着くんだ俺。


 一瞬俺の怒気に当てられてセリシオは鼻白むが、すぐに気を取り直し、再び嘲笑した。


「自分でも解かっている筈です。なるほど、あなたのスキル“早熟”はこれまで役に立ちました。ですが、ここ最近はどうです?」


「っく」


「早熟。そう、早熟ですよ。あなたはレベルアップが早かった。この私を先んじてどんどんレベルアップし、パーティーに貢献した」


「そうだ。俺はこれまで全力で」

「ですが!」


 声を強め、奴は俺の言葉を遮ぎる。


「ここ一年、あなたはレベルアップしましたか?」


「そ、それは・・・」


 俺が言いよどむとここぞとばかりにセリシオは攻勢に出た。


「そう! していない。私達がレベルアップしていく中で、あなただけがしていない!」


「ま、待って。待ってくれ」


「私のレベルは23。勇者様は24。聖女クレアと戦士アルトスは22。あなたは19。ずっと19」


 わざわざ『ずっと』を強調して、奴は俺を追い込む。


 そうなんだ。

 俺はここ一年、まるでレベルアップしなかった。


 皆はぐんぐん成長している中で、俺は足踏みしていた。


 パーティーが結成されて三年。


 “早熟”のスキルを持つ俺は、皆よりも早くレベルアップし、このパーティーを引っ張った。


 このいけ好かない賢者様を助けたことも一度や二度じゃない。


 だが、それが当たり前だと、奴は礼を言ったことなど一度もない。


 まあそれはいい。


 確かに仲間ならそれが当然だし、いちいち礼を言う必要などない。


 でも、感謝を何もしないのは違うんじゃないのか?


 こいつの場合はむしろ、借りを作ってしまったという風に、悔し気な顔をしていたが。


「ここ最近のあなたの体たらくは目に余る。この間の戦闘でも、足を引っ張った」


「そ、そんな。ダメージを負ったから戦線を離れただけだろう?」


「確かにあなたなど戦力にならない。ですが、あなたを回復する為に聖女クレアも一緒に戦線を離れた。もしそれで私が怪我を負ったらどうするつもりだったのです?」


「お前は怪我していないだろう。怪我をしたのは前衛で戦ったアルトスだ」


「まあ結果はそうですね。彼は怪我をしました。戦士の怪我は勲章といいますし、どうでもいいのですが」


 前々から思っていたんだが、こいつにとって仲間って何なんだ?


 自分の駒としか思っていないんじゃないのか?


 俺も、クレアも、アルトスも、勇者アトスでさえも。


「もう一度言います。出て行きなさい。足手まといは要りません」

ゲームでも同じ経験値を貰っているのにレベルアップの個人差がありますよね。

この作品はそれをきっかけに作った物語です。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けた方は、

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