デート④―黒憐花―
シアside
『連れて行きたい所がある。』
そう言われてかふえ?を出て、今は国を出た森の中にいた。
「イブ?どこにいくの?」
『行ってからのお楽しみだ。』
イブはスタスタと森の中を歩き始めた。
そして、それから少し歩くと開けた場所に出た。
「ここ?」
何もない、ただの更地。
ここになにかあるのかしら?
『転移。』
イブは転移の魔法を使ってゲートを出現させた。
どうやら違う場所に移動するみたいね。
『ここを入り口に設定していたんだ。』
イブは少し笑うと手を私に差し出した。
「楽しみだわ。」
私はその手をとって出現したゲートへ足を向けた。
『その期待に答えられるといいんだが…。』
そういったイブに誘われ、
ゲートを潜った先には―――――
「……っ…イブ!これ!ここは!!?」
広い花畑。
そこに咲くのは…黒憐花
(黒憐花)
人は目にした事はないだろうこの花は、karulaでのみ見れる花。
しかも、狭間でしか見れない花。
karulaは神々の領域であり、神々の住まう世界。
その中でも、私と彼の二神は最高神とされ、在るべき姿は真逆。
私シアファリーナは女神として、世界を愛す存在。
彼イブログラディエスは邪神として、世界を滅ぼす存在。
言うなれば、正と悪、太陽と月。
互いに相容れることの無い二神。
例え、本人が否定しようとも私達は在り方が決まっていた。
そして、そういった在り方はkarulaとて例外ではなく、karulaには私達の関係と似たように白と黒の領域が存在する。
その領域の狭間に咲くのがこの黒憐花。
花の中心部は白く、広がるにつれて黒の花弁と色を変えている花。
まるで、karulaを表しているかのような花はkarulaに住まう者達を魅了してやまない花だった。
黒憐花の花言葉は
「不滅の愛」「永遠の愛」「向こう側の貴方に捧げる愛」「狂おしい程に貴方を愛している」
等々沢山花言葉は存在する。
遥か昔karulaでは白と黒の領域の行き来が禁止されていた。
唯一許されているのは狭間で会うこと。向こう側には行けず、ただ見えない壁に塞がれていた。
そんな時代、白の領域に住まう神と黒の世界に住まう神とで恋仲の者がいた。その二人は互いに触れ合う事も出来ないが、それでも愛し合っていた。
そして、透明の壁の向こうと自身の側にも咲く黒憐花に気づき、二人はお互いの側に咲く黒憐花に花言葉を作った。
それが先程の花言葉達。
これがkarula中に広まった頃は神々はそれはもうこの黒憐花に夢中になった。
そして、私もそんな意味を持つ黒憐花がとても好きだった。
今では私達以外の誰も知らない昔話。
『覚えているか?』
「勿論。忘れられる訳ないじゃない。」
私は側に咲く黒憐花を一輪手折った。
「受け取ってくれるかしら?」
『受け取ってくれるか?』
いつの間にか彼も黒憐花を手にしており、台詞も被ってしまった。
「勿論よ。」
『当たり前だ。』
ここでもやはり言葉が重なり、けれど気にする事なく互いの手にある黒憐花を受け取った。
『この場所はシアの為に作った。』
「…っ…ええ。ありがとうイブ。」
『今日はシアに初めて出会った記念すべき日だから、何か贈りたくてな。』
フワッと笑うイブの笑顔を見て、何故だか泣き出したくなってしまった。
「私も…」
胸に溢れる嬉しさを何とか抑えて、亜空間からある物を取り出した。
『これは…』
イブは私の手にあるものを見て驚いていた。
私が今日イブにプレゼントしようと前から準備していたもの。
可愛いデザインだけれど、黒憐花だし高貴さもあってイブに似合うと思った。
「黒憐花をモチーフにしたピアスよ。その、私とお揃いなの。男性が着けるには花柄だから可愛らし過ぎて嫌かとは思ったんだけど」
『そんな事はない。この花はシアとの大切な思い出の花だからな。』
イブはピアスごと、私の手を優しく包んだ。
「覚えていて…くれたのね。」
『当たり前だ。もし、今日シアに誘われなければ俺がデートに誘っていた。』
そう、私が今日誘ったのは記念日だから。これが一番の理由。嫉妬する彼を見たいという理由もあったけれど、それは何も゛今日゛でなくてもいい。
それに気づいてくれた彼に驚きつつも、幸福感が溢れた。
そして、こんな素敵な場所を用意してくれているなんて…。
黒憐花は入手困難な花。
狭間に咲くとは言ったけれど、咲いてる数は少数で1年に1回だけしか増殖しない。
しかも、増殖する花も少ない。
だからこそ、この場にある黒憐花はここ最近で集められたものではないというのが分かる。
何年も、何十年もこの日の為に用意してくれたのだと、…私には分かる。
本当に彼が好き。
どうしたらこの気持ちを彼に伝えられるのか。
「…っ……」
気付けば涙がでていた。
目の前に広がる黒憐花の花畑を見て、そして目の前にいる彼を見て。
『シア。』
彼は私を抱き締めてくれた。
そして、ふっと思い出す。
あの日も私は泣いて、彼はそんな私の名を呼んで抱き締めてくれた。
優しくも力強い腕に抱かれ、安心したのを覚えている。
『今からここはシアのものだ。好きな時に使ってくれ。』
「ええ、素敵なプレゼントをありがとう。」