デート③
『だが、学校へ行くとなると根回しが必要になるな。』
「そこは任せて、校長を説得してくるわ。」
『知り合いなのか?』
「いいえ?」
ん?余りにも当然というように聞こえたからてっきり知り合いなのかと思ったが違うのか。
『そうか、ならどうやって説得するつもりだ?』
「んー、そうね。信託を授けるのはどうかしら?」
『信託?校長にか?』
「ええ。勇者選考が難航しているから、使徒を編入させて、勇者選考の参考にしたいので力を貸してほしいって。もちろんその使徒っていうのが私達よ。」
なるほど。女神だからこそ出来る事だな。
『そうだな。クレンティスは女神を信仰しているし、女神からそんな信託をもらえば喜んで力を貸してくれるだろう。』
「うふふ。決まりね。」
『それにしても、俺達が使徒とはな。女神の使徒となると天使か?俺が?』
天使…俺が。…………駄目だ。想像できない。
「イブが天使なんて…想像できないわね。」
やはり。シアもそう思うか。まぁ、逆にシアが悪魔というのも想像出来ないし、当たり前か。
『変幻する事は可能だ。』
何かあれば変幻でもなんでもして誤魔化せばいい。
「イブはなんでもありね。天使姿のイブを見てみたい気もするけれど。」
『似合わないからあまり変幻はしたくはないがな。』
「あら?似合うと思うけど?」
シアの口からとんでもない言葉が飛び出た。
『邪神である俺に天使の姿が似合う筈がない。』
「貴方が邪神なんて神と使徒しか知らないわ。それに、イブ?貴方自分の容姿を自覚しているかしら?」
『それはそうだが…容姿?容姿がどうかしたのか。』
「邪神の姿でも、翼と髪と目の色を変えれば天使よ。笑った顔なんてもう背景に花が咲いたように見えるもの。」
シアは俺が落ち込んでるように思ったのかフォローを入れてくれたらしい。
『…シア。やめてくれ。似合わないのは分かってるんだ。セバスや八魔公にも、玉座に座る姿が恐ろしいやら俺が黙っているだけで緊張して呼吸も出来ないやら他にも色々と言われている。』
邪気は抑えているし、やはり俺の容姿がいけないのだろうか。
「(確かに端から見たら、イブが黙って座っている姿が怖いと思うのかもしれないわ。美形だと、無表情ってだけでも威圧感があるものね。)」
『なので、天使の変幻は極力したくはないな。』
セバスや八魔公が恐ろしいと思うのであれば、人間なんぞ死んでしまうかもしれない。
「(んー…恐ろしいって言っても、イブの笑った顔を見ればそんな事ないと思うのだけど…)」
何故かシアは黙り込んでいる。
『シア?』
「イブ、貴方ってkarula―神の領域―では笑ったりするの?」
『?…シアと一緒の時は笑っている自覚はあるが。』
「私といる時以外は?」
『……………………………使徒といる時…偶に。』
思い返して見ると、俺はシアといる時以外笑わないな。
「(あ、この反応は私といる時以外あまり笑っていないのね。だから、怖い印象があるのかも。)」
「城では?」
『城だと…その、邪神として在ろうとするせいか、表情が固くなっている…ような気はする。』
「そう、……今度貴方の城に行っても良いかしら?」
『ああ。確かにシアは来たことなかったな。』
「いつも私の城に来てくれていたものね。偶には貴方の城にお邪魔したいわ。」
『ああ。是非来てくれ。良い奴ばかりだし、庭も綺麗に保ってくれているからシアに見せてやりたい。』
本当に俺の周りの使徒達は良い奴ばかりだ。
「その笑顔を見せれば一発なんだろうけど…。」
『?』
「(イブは私といる時はよく笑っているし、お城にお邪魔して少しお城の中を回ればイブの笑顔を目撃する人も増えるはず。そしたらイブを怖いなんて思う事はなくなる筈だわ!)」
シアは何か考え込んだ後拳をつくりグッと僅かに上げていた。
『どうかしたか?』
「なんでもないわ。」
『ならいいんだが。』
「(…何故かしら。私といる時にしか笑う事がないと知って…嬉しい。これは…、独占欲?優越感?兎に角、恥ずかしいし、嬉しいしで…。)」
『どうしたんだ?顔が赤い…シア?』
何故かシアが話している途中に手で顔を覆ってしまった。
「(もう!私が恥ずかしがってるっていうのに、どうしたのかと首を傾げて見せるイブが可愛い……無自覚なのが恐ろしいわ!)」
『イブ?』
「な、なんでもない、わ。」
ふむ、なんでもなくはない気がするが何故か照れてる?シアが可愛いのでそっとしておこう。
こう思ってる間にも、シアに可愛いと思われている事など知るよしもない。