二神―女神様と邪神様―
――――――――――
―――――
「そ、そんな…」
「あら?どうかした?」
「ひ、酷いです!その御話は出鱈目です!邪神様が悪だなんて!!」
「そうねぇ…確かに、出鱈目ばかりよね。」
「それに!!女神様と邪神様は争ってなんていません!アレを見れば分かります!!」
「そうねぇ…。」
「女神様と邪神様はラブラブです!」
「うふふ。でも、人間は知らないの。ここは神の領域。来る事が出来ないのだから知らなくて当然よ。」
「うううっ!悔しいです!邪神様はとっても優しいのに!」
「それは…どうかしらねぇ?」
「えええ??」
「うふふふ。邪神様の近くにいれば、いつか貴方も分かるときが来るわ。」
「でも…私は天使です。お近くに行ってもいいのでしょうか?御本には女神様と邪神様が争っているとあります。…なら、天使も邪神様と争う仲なのでしょうか…。」
「あら?貴方もさっき言っていたじゃない。女神様と邪神様は仲がいいと。なら、天使も悪魔も女神様も邪神様も関係なく皆仲が良いのよ。」
「本当ですか!?」
「ええ。ほら、それに私と貴方でこうして話しているじゃない?問題ないわ。あ、でも女神様と邪神様の仲を邪魔しては駄目よ?」
「はい!」
――――――――――
―――――
『……。』
「イブ?」
『………。』
「イブ?」
『……………。』
「あら、酷い。無視?」
『……いや。』
「ふふふ。冗談よ。分かりやすいんだから。」
『シアは意地悪だ。』
「あら、意地悪な私は嫌い?」
『…知ってて言っているだろう?』
「ふふ。だって、私達ラブラブなのですって。イブはどう思ったのかしら?」
『特には…。』
「無表情で隠せていると思ったら大間違いだわ。耳が赤いわよ?」
『……。』
「それにしても、あんな可愛い子にラブラブだと言ってもらえるなんて…。それに、イブの事大好きなのね。少し妬けちゃうわ。」
『シアの使徒だろう?俺はシアのついでだ。』
「そんなこと無いわ。きっと貴方の事を狙ってる。あの子は可愛いから気をつけないと。というより、私達の使徒は皆可愛いのよね。」
『そうだな。悪魔も天使も皆等しく可愛い。特に先程いた天使程の歳の子は特にな。この地を護らなければと思わせる。』
「……不思議よね。」
『?』
「こんなに優しいのに、邪神という存在だというだけで忌み嫌われ、悪者として扱われているんだもの」
『優しくはないさ。』
「あら、謙遜?」
『本心だ。俺が優しいと感じるのなら、それは俺が愛おしいと思う者だからだ。』
「そう?」
『正直、シアと俺達の使徒は守るべき存在で愛おしく思う者達だ。が、他はどうでもいい。』
「…確かに、貴方は人間に興味がないわね。というより、クレンティスの世界自体興味なさそう。」
『ああ。人間には基本干渉するつもりはない。だがもし…人間が俺の大切な者達に危害を加えるというのなら徹底的に滅ぼすだろう。そうなれば優しいなんて言葉は出てこない。』
「そんなの誰でも同じでしょう?私も貴方と使徒達に危害を加えられたら怒るわ。特に、貴方に手を出そうものなら滅ぼしてやるわよ。」
『ふっ…女神が何を言っている。』
「女神なんて関係ないわ。私が貴方や使徒達を愛しているの。それ以前に私は貴方の女なんだから。貴方に危害を加えられたら怒って当然でしょう?」
『それもそうだな。』
「でしょう?…あ、」
『なんだ。』
「久しぶりにデートしない?」
『構わない。行きたいところがあるのか?』
「ええ。ちょっと人間界に。」
『………………。』
「あら?さっき良いって言ってくれたわよね?」
『何故人間界なんだ。』
「面白いからよ。」
『…………。』
「何をそんなに警戒しているの?たかが人間よ?私達なら気にする事もないでしょう?」
『はぁ……分かってていってるな?』
「嫌?」
『嫌ではない。シアが行きたいと言うなら行こう。ここはよく知る地であるし、折角デートするからには神の領域から出て変わった場所へ行くのも楽しいだろうしな。』
「やった!嬉しいわ!」
『……そうか。』
「あら?嫉妬するのが早いわよ?」
『はぁ……。』
「うふふ。前回人間界に行ったときは視線だけで殺せそうな程睨んでたものね。」
『お前は綺麗だから周りの蝿が煩くてな。潰して静かになればさぞ気分が良いだろうと思った。』
「あら?邪神っぽい?」
『邪神っぽいんじゃなくて、邪神だ。態々蝿が群がると知っていて自分の女を連れ回す奴がいるか。』
「ふふ。」
『………。』
「兎に角!デートはいつがいいかしら?明日?明後日?なんて冗談…」
『…明日にしよう。』
「え?その…さっきのは冗談なの。急に決まったのに。明日だって忙しいでしょう?」
『シアより優先することは無い。』
「……。」
『今日初めてシアのそんな顔を見れた。ふっ…じゃあ、明日にまた。』
コツコツコツ
「……。」
「……。」
「もう、真顔でそんなこと言うんだから。それに何よ最後の嬉しそうな顔!!もうっ!もう!!」
そう叫んでしゃがみこんだ女神の姿を知る者はいない。