第029回『イセカイカクメイ』の感想!
心理描写と状況把握が、
主体となって進む、
手さぐり異世界転移ものと書くと、
どういう印象を受けるでしょうか?
「今回は異世界転移物ですわ」
「異世界転移、チートはあるんですか?」
「それは、微妙ね」
作者:凪と玄
イセカイカクメイ
https://ncode.syosetu.com/n4293fa/
「イセカイカクメイは、
異世界に転移した主人公イツキと、
幼馴染のヒナタが、
状況に戸惑いながらも、
徐々に異世界に馴染んでいく物語よ」
「イツキたちは早くも事件にまきこまれてしまいます」
「そうね、異世界の住人にとって、
何も知らないイツキ達は格好のカモ、
獲物として狙われてしまうわ」
「なんとも不穏な始まりですけど」
「ただ、心強い亜人たちのグループの登場と、
活躍によって、イツキ達は、
亜人達と暮らす事になるの」
「イツキは活躍しないんですね」
「イツキは考えをめぐらせて、
突飛な判断で気転を効かせたつもりが、
逆効果、なんて感じになりやすくって、
ちょっと活躍というより、
考えて悪い方向に行くことが多いみたい」
「自分の落ち度でオオヤケドしてしまいますからね」
「そうね、この物語、
イツキの内心と葛藤がよく描かれていて、
それに伴って、周りの人物の考えや、
状況把握に多くの文が割かれているわ」
「そこがこの物語の醍醐味なのかもしれません」
「ふつうの転移物ならここまで悩まないよ、
ってことまで考えて主人公が疑心暗鬼に陥ってしまう描写、
思考をつづけて空回りする主人公イツキの役割は、
普通の高校生ならこうなるだろって感じで、
そう簡単に異世界に馴染めたりしないんだなって、
納得できるところでもあるわ」
異世界の世界観は中世の封建主義に魔石を用いた魔法が、
加わって、さらに亜人という存在が人により、
どこか虐げられているといったところで、
それにより主人公イツキ達が関わることになった、
亜人達のグループの集落が辿る道は、
決して楽なものでないことが示されているわ。
「亜人だけでなく魔法使いも迫害の対象なんですよね」
「そうね、だから主人公イツキが、
始まりの辺りで知り合った魔法使いシルの存在も、
人の住む地域、王都などでは少し立場的に弱いみたい」
「だからイセカイカクメイというタイトルなのかも?」
「まだタイトルを回収するところまでは、
進んでいないけれど、
お話しの骨格を見てみると、
亜人のグループが人間の王位決定戦に、
足を踏み入れることになって、
亜人の扱いを人間と対等なものにまで、
引き上げたいって考えてるのが分かるわね」
「文章に独特の緊張感がありますよね、ぷるぷる」
「そうね、それが魅力の一つね、
地の文で語られる、それぞれの、
感情の動きやキャラクターごとの、
情緒なんかが上手く表されていて、
それがどういう心理戦につながっていくのか?
まで道筋が立てられてるようで、
読んでいて意外な所を突かれる感覚よ」
「キャラクターで魅力があるのは?」
「子供の魔法使いパルムかしら?
イツキを守るという役割を与えられて、
一気に花開いた感じで、
10歳に満たない年齢ながら、
結構つよい魔法を使って、
イツキを助けてくれるから、
見ていて好きになれるキャラクターよ」
「ぷるぷる、今後の展開はどうなるんでしょうか?」
「このあと気になるのはそうね、
亜人達が辿ることになる人間の、
王位決定戦による亜人の地位向上と、
シル達が求めている人間と亜人の対等な未来が、
訪れるのかといったところが話の筋ね、
一応人間であるイツキとヒナタは、
亜人達の味方であるという所から、
人間と亜人の協調の象徴的な存在として、
否応なく利用されているのは確かだわ」
「でもイツキたちはこれを逃れることは、
できないんですよね、姫様」
「そうね、スライム、
イツキたちは、ある程度の自由を代償にして、
亜人達のグループの庇護下に置かれるのは、
人間の町の治安を考えても、
仕方のない事といっちゃあそうね」
「二章からは王位決定戦の候補である、
ルクス家の領主 セレネ・セルヘイト・ルクスが、
登場するわけですが」
「二章でもキャラクターの心理描写が、
それぞれの想いが交錯している様が、
よく描かれているわね、
それは新しく現れたルクス家の家の面々も、
同じことで、同等の文の圧力で、
彼女らの存在が描かれてるいるわね」
「内心にこだわった作品ですよね」
「そうねイセカイカクメイは、
キャラクターの情緒の変化から、
はじまっていくのかもしれないわね!」
感想はこれくらいです、
個人的には主人公が疑心暗鬼から打ち解けて、
亜人達と軽妙な掛け合いが出来るようになった、
辺りが、なかなか、和みました。
では、
文字数は、195,471文字と、
物事の大半が内心の葛藤に割かれているような、
気がする本作ですが、
まだまだ読んで追いつけるところにあるので、
これからトライしてみたい方は、
是非、読みに行ってあげてください、
意外な発見があるかもしれませんよ。
亜人のルボンとイツキの関係に、
ドキドキさせられるのは、
なかなかどうして面白いものです。




