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魔王は勇者の中にいる  作者: さかもときょうじゅ
二章 勇者の帰還(魔王付き)
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十六話

「あら、どうしたの?」

「俺もよくわかってない。いきなり謝罪とお礼を言われた」

「多分、ローランのやつユウマが大魔法使いだってやっと頭が理解したんだろ」

「あぁ、なるほど」


 おい、何がなるほどなんだ? そもそも俺は、自分が大魔法使いなんて呼ばれてたことのも今さっき知ったんだぞ。


「魔王が一緒にいるんだし、魔術に関してはユウマも聞いてるわよね?」

「あぁ、魔法を使えない奴が魔法を使うためのものだろ?」

「そう。魔術師が魔術を使うには自分以外に魔法構築をして貰わなくてはいけないの」


 なるほど。なんとなくわかった。


「今の魔術師の殆どが、英雄であり大魔法使いでもある勇者、つまりあなたに魔法構築をして貰っているのよ」


 そんな感覚全然ないんだけど。


「力を借りるといっても概念的なものでの、借りる相手に負担などは無いんじゃ。最悪、相手が死者でも機能する。そうでもなきゃ実戦で使えんじゃろ」


 俺に負担がないってんならいくらでも使ってくれて構わない。

 魔法知識は神様が付けてくれたものだし、皆んなで使ったらいいさ。


「ちなみに、500年前の魔族は殆どが妾に魔法構築を頼んどったみたいじゃがな」


 エルがドヤ顔で胸を張る。……張る程の胸も無いくせに。

 いった! 太もも(つね)りやがったこいつ!


「今は魔族もだいたいユウマに構築して貰ってるみたいだけどね」


 やめろ、(すね)を蹴るな。それは俺のせいじゃ無いだろ。


「ローラン、頭を上げてくれ。自分が何かしてるわけでもないのに礼を言われても困る。

 それに、ローランの対応に文句なんか一つもない。むしろ、最初の俺の態度を改めて謝罪したいくらいだ」


 美味い飯も奢って貰ったしな。


「そもそも、此奴の魔力は底が知れぬからの、ちょっとくらい使ってやった方がいいくらいじゃろ」

「流石に魔術を使う奴全員に魔力を使われたら枯渇すると思うぞ」

「冗談じゃ。真面目に返すでない」


 俺とエルの言葉でローランが頭を上げる。


「すみません、大魔法使い様と話すことができるとは思わなかったもので」

「ユウマでいいって。だいたい、大魔法使いって呼ばれてるってのもさっき初めて知ったんだから」

「鑑定板の改良は、英雄の魔力値が測れなかった事がきっかけで推し進められたんですよ。今なら六桁まで出るはずなのでユウマさんの魔力値も測れるかも知れません」


 すまん、ローラン。六桁でもカンストだ。


「落ち着いたのなら登録をしてしまいましょう」

「そういえば登録の名前ってどうしたらいいんだ?」

「冒険者の登録証、このプレートなんだけど、これは魔力を登録するものなの。魔力自体を登録することで勝手に複製したり、偽装したりできなくしてるのね。

 だから、登録する名前はなんでも良くて、それこそ偽名でもいいのよ。

 クエストの達成歴や犯罪歴なんかはプレートに登録されるから名前が違っても構わないし、新しく発行しても魔力で確認するからそういう履歴は消せないわ」


 身分証として使うならそれでいいってことか。


「他の人のプレートを使われたりしないのか?」

「魔力を流せば自分のかどうかはわかるわ」


 かなり便利な身分証だな。必要書類に「写真付きの」とわざわざ書く必要も無い。


「わかった。じゃあ、エルはエルでいいとして、俺はユウマで大丈夫か?」

「ああ、問題ないだろ。ただし、ヤシオは書くな。

 さっきも言ったが、勇者を(かた)るのは重罪だ。基本的に、勇者ヤシオを名乗ること自体が犯罪になる。

 ただ、ヤシオの名前は王国から公表されて使用が禁じられているが、ユウマの方は人伝(ひとづて)で流れたから使用を禁じられなかった。一時期はユウマという名の子供がかなり多かったらしいぞ」

「俺の名前のやつが……」


 その時代に封印が解けなくて良かった。ユウマだらけの世界なんて居づらくてしょうがない。

 前世でも名字が同じって事は良くあったけど、ユウマは名前だし、異世界で俺と同じ名前の人が沢山いるってのはちょっとな……。


「とにかく俺はユウマでいいんだな、登録を済ませよう」


 書類に名前を書き、プレートを受け取る。


「後はプレートに魔力を込めるだけよ。ただ、ユウマは少し待って。先にエルの方を済ませてしまいましょう」


 なぜか俺の登録は後回しにされて、エルがプレートに魔力を込める。(てのひら)に乗せたプレートが淡く光ったかと思うと、表面にエルの名前が刻まれ、すぐに光が消える。


「エルの登録はこれで終わり。

 それじゃあユウマの番だけど、あなた封印の地にある封印の間の二重封印を解いてまた封印し直したって言ってたわよね」


 封印という言葉がゲシュタルト崩壊しそうだ。


「ああ、それでバレたんだろ?」

「あの封印もう一度できるかしら」

「できるけど」


 張り直す為に消す前に内容を確認しておいたからな。


「その封印がどうしたんだ?」

「あれをこの部屋に張って欲しいのよ。あれには魔力の感知を遮断する効果があるから」


 確かにそのような効果があった。

 正確には魔力を通さないという仕掛けだったけど。


「それを使うってことは……」

「あなたの偽装魔法を解除して欲しいの。プレートには魔力を登録するって言ったでしょ? だから、偽装してるとどうなるかわからないのよ。

 一応、プレートは二つ用意したわ。偽装してる時と解除した後とで二回やってみて」


 そう言ってマリアナが二枚のプレートを手渡してくる。

 一枚目のプレートに魔力を流すと、エルの時と同じように淡く光って名前が刻まれる。そして、部屋に封印を張り偽装を解除した。


「……すごいわね。目眩(めまい)がするわ」

「こやつは規格外じゃからな。

 妾もちゃんと確認しておけばあんなことにはならんかったのにのー」


 そういや、俺はエルと対峙した時に魔力を隠したりしてなかったんだからエルには実力差がわかったはずだ。

 自分の力にかなり自身があったみたいだし、油断してたのか?


 俺は偽装を解除した状態のまま先程と同じくプレートに魔力を流してみるが結果は先程と変わらず。光って名前が刻まれただけだった。


「なんかさっきと変わらないな」

「じゃあ、もう一度ステータスを偽装してからプレートに魔力を流してみて」


 偽装魔法を使用し、偽装せずに魔力を登録したプレートに魔力を流してみるとふわっと光りだす。


「あら、普通に反応したわね。偽装していても魔力自体は変化していないということかしら」

「これは面白いですね。ユウマさん、魔力を変化させることはできないのですか?」

「そう言われてもな」

「魔力の色を変えるイメージで偽装を使ってみぃ」


 簡単に言ってくれるが、そもそも魔力の色を変えるイメージってのが難しい。


「そうじゃのー、自分の中に流れている水に他の色を混ぜる感じならどうじゃ?」


 言われるがままにイメージを固めていく。

 体内に流れる水と言われて最初は血液かと思ったが、それだと血液に何か変化が起きそうで怖かったので血液とは別に何かが流れているのを想像する。


「そのイメージで偽装魔法を使ってみるんじゃ」

「よし、じゃあいくぞ」


——〈偽装(ディスガイズ)


「……何か変わったか?」

「わからん。

 成功していれば魔力の質が変わっとるはずじゃが、妾はそこまで詳細に感じることが出来んからの」

「さっきのプレートに魔力を流してみればわかるわ、魔力が違えば反応が変わるはずよ」


 そう言われてまたプレートに魔力を流してみると、光りはするものの先程とは光の色が違う。魔力の変化を試す前は青っぽく光っていたのが、今は赤い光りを放っている。


「本当に変わってるわね。

 偽装魔法自体が失われた魔法だっていうのに、それをこんな簡単に改変して使うなんて……本当に大魔法使いなのね」


 簡単ではなかったけど。

 そういえば魔術は改変とかが面倒なんだったな。


「今も魔法使いはいるんだろ?」

「そこまで簡単に魔法を改変できる魔法使いなんて一握りよ。魔法使い自体が少ないというのもあるけど、普通は色々研究して変えていくものなの」


 俺の場合はイメージだけで改変してしまったからその研究とやらの役にはたたなそうだ。

 いや、残念なことに。


(面倒ごとに巻き込まれなくて良かったと顔に書いてあるがの)


 考えが読まれるというのは不便なものだ。


「このプレートの効果はわかった。魔力の質を変えなければそのまま使えるんだよな?」

「そうね、問題ないわ。

 同じのを二枚持っててもしょうがないから一枚持っていきなさい」


 偽装なしで作った方を使っていて何かあったら嫌なので、偽装して作った方のプレートを受け取る。


「あなた達の冒険者ランクはEで登録しておいたわ。

 実力的に考えればSランクになるはずなのだけど、いきなりSにするには相応の説明が必要だし、目立ちたいわけではないのでしょう?」

「ああ、情報が欲しいだけだしな」


 冒険者が受けるクエストにも興味はあるが。

……あれ? 情報が欲しいだけなら別に冒険者の登録をしなくても教えて貰えばいいんじゃないか?


「なぁ、これ情報だけなら登録は——」

「さてと、登録も終わったことだし何か質問はある?」

「だから情報だけなら——」

「無いなら終わりでいいわね」


 おい、誤魔化し方が雑だぞ。

 本格的に便利屋として利用されそうな空気を感じるけど……まぁ、いいか。嫌なことを押し付けられそうになったらプレート突っ返して冒険者なんて辞めてやろう。


「わかった、それはもういい。依頼を受ける時はちゃんと報酬は貰うし、変な依頼を押し付けられそうになったらさっさと辞めるからな」

「肝に銘じておくわ」

「……ったく。

 それで、俺達のEランクってのが一番下のランクなのか? てか、ランクによって出来る事と出来ない事の違いが分からないんだが」


 現状のランクについては目立たないようにというくらいだから最低ランクなんだろう。

 ランクによる差は、受けられる依頼が違うというのをローランから少し聞いた程度で詳しくは知らない。


「いえ、冒険者ランクの一番下はFよ。子供なんかの戦闘ができない者はこのランクにいるわ。このランクはどちらかと言えば冒険者見習いってところね。

 一応、最初は皆Fランクから始めるんだけど、戦闘能力のテストを受ければすぐにEに上がれるの。あなた達にテストは必要ないでしょ」

「受けてもいいけどな。面白そうだし」

「そうじゃの。戦闘テストというのが何をするのか気になるの」

「そのまんま試験官との手合わせよ。あなた達を試験できる試験官なんていないわよ」


 今のエルなら魔法を使わなければいい勝負できる人は居そうだけど。


「それで、出来る事と出来ない事についてはどうなんだ? ローランから依頼を受けるのに制限があるとは聞いてるが」

「そう、なら違いはほぼそれだけよ。受けられる依頼は基本的に自分のランクの一つ上まで。あ、Fランクは例外ね。Fランクは非戦闘系のクエストしか受けられないから難易度がFで設定された依頼だけ。

 他には、開示される情報にランク制限があったりすることもあるけど、必要ならば私が直接あなた達に話すわ」


 やっぱり冒険者登録する必要ないじゃないか。


「まぁ、わかった。

 俺からの質問はもう無い」

「妾も別に聞きたい事はないの」

「じゃあこれで登録は終了ね。よろしくね、英雄さんと魔王さん」


 マリアナが書類を確認して全員がそういう席を立つ。


「何かあったら、私はだいたいここのギルド長室にいるから。受付に言ってくれたら通すようにしておくわ」

「俺も殆ど商人ギルドのギルド長室にいるな。同じようにしておく」

「そうですね。私もそうしておきましょう」

「そうか。何もないのが一番だが、エルの両親の件に関しては情報が出たら教えてくれ。その分くらいは働いてもいいから」


 とりあえず重要そうなところのトップと繋がりができたのは僥倖(ぎょうこう)だろう。何かあった時にはぜひ頼らせて貰おう。


「そういえば、指輪の件ってなんで問題になったんだ?」

「なんでってお前な」

「いや、指輪が500年前の物だったのが問題なのは分かってるんだが、そもそもそれがなんで分かったのか気になってな」

「ああ、それは簡単よ。指輪に旧ティオール王国の紋章が入ってたからその時代の物だって分かったの。

 封印の地の件があったから関係ありそうってことでルドマンに押さえて貰ったのよ」

「じゃあ指輪は今商人ギルドが持ってるのか。

 ちなみに、他の装備もあるんだがいるか?」


 装備品は指輪以外にも防具や他のアクセサリーなんかが残ってる。


「そうね、是非欲しいところだけれど、くれるのかしら?」

「タダであげるわけ無いだろ。当面の生活資金なんかも欲しいからな」

「それもそうね。ルドマン、どう?」

「うーん、正直言って値段の付けようがないんだよな。

 性能だけなら指輪からみてもかなりの物なんだろうが、英雄が使っていた装備を売るわけにもいかないし」

「それなら英雄ヤシオを讃えて作られた博物館に展示してはいかがでしょう。

 それなら支払いは国が援助していますし、我々がその装備品の保証をすれば問題ないかと思うのですが」


 とんでもない施設が出てきたな。

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