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次は朝日の見える日に

作者: 剛矢

 ピッピッピ


 生体情報モニターの無機質な音が病室中に響いていた。


 僕、多咲竜生はすごく気分が悪いのを耐えながら、窓の外にある数本の桜の木に目をやった。

桜の木には、無数の花が咲き誇っていて春の深みを称えているようだった。ひらりと花弁が一筋落ちると、どこからか幼児の笑い声が聞こえた気がした。


 あぁなんて美しいのだろうか。僕もあそこへ行きたいな


 そう思い手を伸ばして見るものの、当然のように空を切る。指の先が滲んでいるのを見て初めて僕が泣いている事に気付く。


 僕は自分の意識と体が徐々に離れていくのを身をもって感じていた。綱のようにきつく結び付いていた僕の命は、いつの間にかたった1本の糸になっていた。


 僕の意識が完全に体と離れようとしたときに、枕元に置いてあったスズランが視界に入る。


あぁやっと君に会えるのか


僕は遠い日の思い出を、走馬灯かのように思い出していた。



        ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 空には無数の雲が浮かび、その隙間からは陽光が漏れだしている。


 僕は木の柵に手をかけて、そんな風景を眺めていた。


 山の奥にある公園。その公園の更に端に僕はいた。そこにはおまけ程度の木の柵だけがいまだ仕事を続けるように残っていて、他のベンチであったり、給水場であったりは既に壊れて、腐って自然にかえっていた。


 柵の向こうは急な崖となっていた。崖の下を覗きこむように見てみると、崖はそこそこの高さを感じさせる程度に続いて、そしてなだらな斜面に変わった。なだらかな斜面が平らになる頃には、僕はすっかり正面を見据えていた。


 木々が生い茂り、地が見えていない平地の向こうは、見渡す限り山ばかりの殺風景なものだった。そんなつまらない風景を僕は毎日一人で眺めていた。言うなれば独占していた。


 人はきっとどんなに面白味の無いものでも、『独占』という言葉を聞くだけで気持ちが高揚するんだろうな、と同じように気持ちを高揚させながら思う。


 僕がこの公園を見つけたのは、夏期休暇に入るほんの少し前で、この公園を僕は一目で(目の前に広がる山々の全体を一目では見れないけれど)気に入ってしまった。


 今日もこうして、この公園の隅から隅まで眺めている。どこを切り取って見てみても一様なものはなく、草木の1つ1つに物語が隠されている気がした。


隠された物語を語るのは他ならぬ僕だった。昨日は小鳥と蟻の物語だったし、一昨日はお話であった。その前の日となると……流石に覚えていなかった。





コツ、コツ


 おかしいな誰かの歩く音がする。そう感じたのは目が見えない梟に、目のないもぐらが外の景色を教える話を考えていた時だった。


 小鳥のさえずり、油蝉の鳴き声、風が葉を揺らす音。そんなどこか風情のある音と一緒に、コツリ、コツリと誰かの歩く音が確かに近付いて来ていた。


「あれ、先客がいる。」


透き通るような声音が響く。別段大きな声という訳でもないのにその声は世界を駆け抜けていくように響いた。


「あぁ、すいません。邪魔でしたら帰りますが......」


「いえいえ、丁度話相手を探していたの」


 木陰から姿を見せたのは一人の少女だった。ちょうど僕と同い年くらいだろうか?身長は僕より少し低く、長髪で黒髪、その髪と対を成すような白い肌が特徴的だった。


 しかし、話相手を探していたか。それならこんな山奥に来なくても良いだろうに


 そんな事を考えていると彼女は僕の隣に立ち、静かに口を開いた。


「ねぇ、蝉時雨って知ってる?沢山の蝉の声が、時雨のように降り注ぐ事なんだって」


 彼女は空を見ながら呟くようにそう言った。辺りを見渡し、座れるようなものがないと気付いたのか僕が手をかけている柵に腰を下ろす。そんな彼女の姿は、大自然を押し退けてしまうような、彼女以外のものの全てが虚像であると錯覚してしまうような美しさがあった。


彼女の話し方、仕草、その身に覚えのある雰囲気に僕は僅かに違和感を覚える。


「私昔から蝉の声が好きなの。なんでかは分からないけど、何か素敵な事を思いだしそうで......」


 素敵な事......か。


  最初こそ警戒していたものの、僕の心の施錠は彼女を前にしてするりとほどけた。きっと僕にとっての鉄製の施錠は、彼女にとっては蝶々結びにされた一本の糸に違いないんだろうな、と思えた。


 それほど彼女の身振り、素振りは美しく儚げであったし、そんな彼女を前にして自然と僕も笑顔になっていたし、自然に言葉は紡がれていった。


「へぇ、僕も蝉好きですよ。なんだか夏って感じがしていいですよね。」


 僕がそういったのも束の間、彼女はきょとんとした顔をすると途端に笑いだす。僕はその姿を目を点にしながら見ていた。


 瞑られている目の端からは、次々に涙が浮かび出てきていた。何がそんなに面白かったのだろうと僕は少し不満を漏らしたような顔になる。


 彼女は堪えきれない笑いを堪えようとお腹を押さえながら、必死に声を縛り出すようにして口を開く。


「あ、貴方いい人なのね。ふふ、普通はいきなり現れた見ず知らずの女と話したりしないでしょ。」


「えぇ?そうかなぁ......」


「そうよ。みんなそうだった。私と話してくれたのは貴方が始めて。」


彼女はコホンと一度咳払いをして落ち着いた口調でそう言った。


「そうだったのか。僕ならいつでも話し相手になるよ」


 彼女は「ありがとう」と言って視線を正面の山々に戻すと、再び雑談を始めた。




 あれからどれだけ時間が経っただろうか。僕たちは時を忘れて未だにあの公園で雑談を交わしていた。


 蝉の事から始まり、蝉の事で雑談は終わった。勿論、蝉以外の事も話した。花言葉であったり、宇宙のことであったり、夢の事であったり。そんな事を話しているときの彼女の瞳は、時には愛おしげであったし、時には神秘的であったし、時には儚かった。


 日は既に山の下に沈もうとしていて、辺りは夕闇に落ち始めていた。そのなかで微かな夕焼けの光が自分を強く主張するように、山陵をはっきりと写し出すばかりか、殺風景な山々を赤く照らしていた。


 僕らは、いや正しく言えば彼女はそんな光景に目を奪われていた。僕は最初こそそんな光景にうっとりさえしていたが、どうしてか次第に目の前の光景がちっぽけに見えて仕方がなかった。


横をちらと見やると、瞳を朱色に染め、少し口を開けながら夕焼けに見とれている彼女がいた。


あぁ君のせいか、と心の中で溜め息をつく。


 きっと彼女はモノクロの世界でも充分に美しいんだろうなと思った。カラーの美しさには及ばないかもしれないけれど、それを言ってしまうとカラーでも現実世界でも、4次元でも彼女の本当の美しさを表す事は出来ないだろう。彼女の本当の美しさは、この世というキャンバスの中には描ききれていなかった。


「アーベントロート......」


 彼女は僕にも聞こえないような掠れた声でそう言った。その彼女の横顔は今にでも泣き出してしまいそうなほど寂しげで、どこか遠い日の事を思い出しているようだった。僕は初めて耳にしたその言葉が妙に耳に残ってしまう。


「ん? 何それ」


「いえいえ、なんでもないの。それよりもう日がしずんじゃうね。今日はここでお開き!」


「あぁそうだね。日が沈んでからは気温も下がっていくだろうし」


 なんだかんだ言って彼女との雑談が終わってしまう事に少し寂しさを感じた。


 僕自身、人と話すという事を自分から好んでやる方ではなかった。こうして人と思いっきり話すのも何週間ぶりだっただろう。心のどこかでこういうことを望んでいたのかもしれない。


 人と話さなくなったのも自分が聞き下手だと自覚していたからだった。高校の時、話すと気分が悪くなる人間ランキングで一位を取ったことがあるのだから当たり前だろう。


 しかし、彼女はそんな僕でも聞き上手だと錯覚するほど話し上手だった。もう一度話してみたいと心から思えた。


「じゃあ次は雨が降った日に!」


「えっ! また会えるの?」


 僕は彼女の口から出たとは思えないその言葉に、驚きを隠せなかった。食い入るかのような反応に彼女は少し引きぎみになるものの、先程となんの変わった素振りも見せず返答してくれる。


「当たり前じゃない?私たちはもう友達だもの」



 彼女はそういうと、僕の返事を待たないまま、手を振りながら木陰に姿を消していく。そんな彼女の姿が、瞼の裏にしっかりとに焼き付いていて、そこにはいないはずの少女の姿に僕はしばらくの間見とれていた。


 しばらくの間そうしてボーッとしていたのだが、日はついに沈んでしまい辺りの気温は急激に下がる。公園内は真っ暗になって僕は流石に肌寒くなったので、もう今日は帰ろうと公園の入り口に歩みを進めた。


 暗くなった後の公園からの景色は、日が出ている間とは全く違う一面があった。空には無数の星々が輝いていて、日中はあれほどうるさかった蝉の声が、静かにジンと響いていた。


 それにしてもこの辺は夜になると本当に暗いな。電灯はあるけど整備されてないみたいでまともに機能してないし、なんにせよ麓の町まで随分離れてるんだ。家屋の明かりすらも届かないし仕方ないのかもしれないな。


 そんな事を思いつつ歩いていると、公園の入り口まで来ていた。僕は入り口に止めた自転車に乗る。サドルはヒヤリと冷たく、ハンドルも同じように冷えていた。やけに冷え込んでいる夏の夜空の下で、僕は坂道をブレーキもかけずに降りていくのであった。


 僕は家に帰っている途中も、帰ってからも彼女の事ばかり考えていた。透き通るような白い肌に、端整に整った顔、話し方。僕の心は彼女に対する興味で一杯だった。劣情なんてものではなく、もっと単純な、恋心のようなものなのだろうか。僕は久しぶりに襲われる感覚に息苦しさを感じる。


 適度に散らかった部屋に転がっているリモコンを拾い、テレビの電源を入れる。男の独り暮らしの部屋なんて誰でも散らかっているものだ。僕の場合は部屋に人を呼べないという程では無かったがそれなりに汚い。


 テレビでは天気予報がやっていた。これからの気温、梅雨前線だったり低気圧だったりと庶民の僕ではあまり意識しないような単語ばかりが並んでた。


 しかし、そうか。明日雨が降らなきゃ会えないんだったな。


 ふとその事を思い出した瞬間、俺は食い入るかのような勢いで天気予報を見始めた。


「ーー明日は晴れるでしょう。高気圧が近付いていてー」


「はぁ」


 もはや声となった溜め息がでる。次会えるのはいつだろうか?


 僕は今の季節を忘れてしまっていた。今は8月なのだ。梅雨も明け、雨どころか猛暑が続く日々。そんな真夏に雨なんて降るだろうか?降ったとしてもそれは随分後の事になってしまう。


 そうなってしまっては遅いのだ。今僕は夏期休暇を貰っている。その為今日のような平日でもあの公園に足を運べているが、夏期休暇が終わってしまっては平日は出勤しなければならない。雨なんていつ降るかのも気紛れなのだしそうなってしまっては彼女と会うことは難しいだろう。



 あぁ......また会えるんだろうか


 僕はそのままベッドに横になり、窓から見える朧気な月を滲む視界の中に納めながら眠っていくのだった。




 僕はここ2週間全く聞くことの無かった音で目を覚ました。ザーという音が窓の外から、天井から聞こえてくる。


 どうやら僕は昨日窓を閉め忘れたまま寝てしまったらしい。雨はついさっき降り始めたようで床はわずかに湿っていた。


 しかし、今の僕には正直そんな事はどうでも良かった。雨が降ってるという情報だけが脳裏で反響していたのだ。それ以外の事は全く見えていなかった。


 僕は瞬時に寝間着から私服に着替え、顔を洗い、歯磨きをして、傘を片手に持つと、すぐさま部屋を飛び出したのだった。




 勢いよく飛びしたのは良かったものの、階段を下った先に置いてある自転車に乗ろうとした時に傘を持っていることに気が付いた。


そういえば雨が降ってるんだったな。仕方ない今日は歩くか。


 僕はパッと傘を開き公園を目指し歩き出す。ちなみに公園までは自転車で30分かからない位なので歩きだと一時間弱だろうか。途方もない距離である。


 歩いてみて始めて気付いたが雨の日にこうして歩くのも悪くないと思った。自転車では感じられない空気や、町の雰囲気、雨が傘に打ち付けられる音、全てが実に気持ちのいいものだった。


人の行き交う交差点にはコツコツという足音だけが響き、スーパーマーケットの前を通りかかっても時々自動ドアが開き、中から騒音が漏れるだけのそんな静かな閑かな朝だった。


 そんなこんなで歩いていると、公園の前まで辿り着いていた。赤信号に引っかからなかった為か思いの外早く付くことができたみたいだ。


 公園の中に足を踏み入れると、そこら中に水溜まりが出来ていた。水溜まりの中には大小様々な波紋がポツリポツリと浮かんでは消えている。


 葉に貯まった雨が、大きな粒となって傘へ向かって落ちてくる。ボツっという音と共に水の粒が弾けると、小さな粒となって地に落ちた。


 水滴がついている草花は宝石のように輝いて、雑草すらも名のある絵画のように美しかった。


 たった一夜の雨が公園を全く別の場所へと変えていた。


 僕はそんな景色に見とれながらも、水で濡れた草の上を歩いて公園の端へと向かう。木々の奥には既に彼女の姿があった。透明なビニール傘をさし、昨日と同じ位置に立っていた。


 白いワンピースを着たその姿は、雨のせいなのだろうか昨日より一層美しくなっている。艶かしい肌は適度に潤っていて、サラリと垂れている髪は微かに湿っていた。


 彼女はこちらの存在に気付き振り向いたが、何も言わずに僕を待っていた。


 僕は、彼女の横に立つと空を見上げながら言う。


「雨......降ったね」


「うん」


 彼女はそう一言返す。会話は途切れ、公園内には静寂が訪れていた。


 ヤバイ。僕会話下手くそ過ぎるだろ


 女性とほとんど話したことのない僕、それでいて話し下手でもある僕は、焦りと緊張に呑み込まれる。そんな張り切った僕の顔に気づいたのか彼女は覗き込むようにしてこちらを見ると口を開いた。


「あれ、緊張してる? 顔が赤いよ」


 そんな彼女の言葉で俺の緊張はさらに高まって、汗か雨か分からないような雫が頬を伝って落ちていった。僕は恥じらいながらも早く返事をしなきゃと、より一層赤くなりながら口を開いた。


「き、緊張!? してないよ。顔が赤いのは、走って来たからね!」


「本当かなぁー?」


「ほ、本当だよ! ほら汗かいてるし!」


「ふーん、まぁいいや。今日もよろしくね 」


彼女は意味ありげな笑みを浮かべながらそう言った。「う、うん」と返事をするとさらにニヤニヤしながらこちらを見てきた。


 そんな事をしていると、雨はいつの間にか止んでいて、山々の向こうには微かに虹が見えていた。虹はうっすらとしか見えていなかったが、いつも以上に美しく見えた。


「それじゃあ今日は虹のことから話そうか!」


 彼女はそう言って微笑むと、話しを始めるのであった。



 それから暫く経っての事だった。既に虹は消えていて、僕が彼女に話を振ろうと思い口を開く。


「あっそういえば君は......」


 彼女はこちらの顔を見ながら続きの言葉を待っている。僕は昨日思ったことを聞いてみることにした。


「あ、えっと今思ったんだけどもう君とか、貴方とかで呼ぶのは止めにしないか? 俺の名前は多咲竜生って言うんだけど......君の名前は?」


「えっあ、私の名前?」


「うん、駄目......かな?」


 彼女は急に動揺し出す。キョロキョロと周囲を見渡すと、こちらに視線を合わせないまましどろもどろになって口を開いた。


「いや、駄目じゃないんだけど。わ、私の名前は......えっとあぁもうこんな時間! 私今日は昼から仕事が入っているの。」


 彼女はそう言って会話を切ると、急ぎ足で公園の入り口へと向かう。背中に僕の視線を感じたのか、僕から少し離れた位置で彼女は振り返ると、口元に両手を当てて叫んだ。


「次は、次会うときは! 朝日の見える日に!」


 大きな声でそう言うと、今度は走って公園の奥に消えていくのだった。


 それにしても何故名前を教えてくれなかったのだろうか。


 本当に時間が無かったのか。それとも言えない理由があったのだろうか。いや待てよ?もしかして僕が悪いのか?女性にいきなり名前を聞くのは失礼に当たるのか?これ絶体僕が悪いやつだろうなぁ。


 僕は自問自答を繰り返しながらも、もうここにいる意味は無いと思いブツブツ呟きながら家へと向かうのであった。



「うっわ、もう最低だよー。」


 僕は駆け足で自分の家の玄関に入る。

 

 帰りの途中で降ってきた雨のせいで、僕の体はビショビショに濡れ、髪には水滴が滴っていた。


 これはシャワーを浴びるしか無さそうだと思い、リビングにバスタオルを取りに行く。


 僕がリビングに入った時最初に目に入ったのは、水浸しになったベッドとその上に置きっぱなしになった読みかけの本、そして開きっぱなしの窓だった。


 僕は無言で本を持ちパラパラと本を捲ってみるが案の定字が滲んで全く読めない。本を元の位置に戻し、ベッドを手で押し込んでみる。ジュブブと音を立てて水が溢れ出てくる。僕はくるっと方向転換し、正反対の位置にあるタンスを開け、乾いたバスタオルを取り出して、風呂場へ直行するのであった。



 ザーとシャワーの音が響いている。僕はシャワーを浴びながら、次会ったとき彼女に何と言おうか考えていた。


 とりあえず彼女より先にあの場所に着くことは必須だろう。それからは謝って誤解を解いてから、気まずくならないように華麗に話を運ぶ。


 本当に上手く行くのだろうか?はっきり言って不安だらけだ。



 彼女の言葉が何度も何度も頭の中で反芻し、なかなか消えようとしてくれない。


 朝日の見える日に、かぁ。もちろん雨の日は会えないし、晴れでも雲が多い日は朝日は見えないだろうな。


 僕はシャワーを浴び終えると、部屋着に着替え、彼女についてのことが頭の中から抜けきれないまま部屋の掃除を始めるのであった。


 今日はベッドでは寝れないし、床に寝るしかなさそうだ。本をゴミ箱に入れ、とりあえず窓を閉める。さてベッドはどう乾かすんだ?


 カチカチ


 僕はネットに頼ることにした。フムフム、乾燥機か。無理だな。


 ベッドの処理を諦めると、僕は時計の方に目をやった。どうやらまだ3時になったばかりらしく、テレビをつけてもニュース番組ばかりだ。1番気になっている天気予報も入っていないようだった。


 仕方がないので目の前のパソコンで調べてみることにした。



 明日から四日間雨の予定になっている。幸いな事に5日後は快晴ならしいが......


 僕は特にこれと言ってやることがないので、パソコンの電源を落とし、スマホを手に取った。


 始めは椅子に座りながら某動画投稿サイトを漁っていたものの、急に眠気が来たので試しに床に寝転がってみる。ヒヤリとした感覚が思いの外気持ちよく、僕はそのまま眠っていったのだった。


 あぁ、僕はいつになったら彼女に会えるのだろう


 意識が薄れていく中で、僕は彼女の姿を思い浮かべる。


 あぁ明日、晴れてくれないだろうか?


 もう一度、あと一度だけ彼女の声を聞けたなら。彼女の姿を見れたなら、僕は何かに気付けそうなのに。僕の気持ちがわかりそうなのに......



 目を覚ますと、既に時計は午前7時を回っていて、窓の向こうからは雨の音が聞こえてくるのであった。

 


 それから四日間は雨の日が続いた。あの公園に行くことが日課となってしまっているため、毎日通ってはいるものの、彼女は一度も来ることが無かった。




 そしてやってきた5日後の朝。


 僕はいつもよりも格段と早く起きた。なにせ今日は天気予報では晴れとされている日なのだ。僕は20分程で仕度を終えると、自転車に乗り公園へと向かう。公園についた頃でもまだ辺りは真っ暗で、日は出てきていない。日ノ出前の時刻に到着することが出来たみたいだった。当たり前だが彼女の姿はまだどこにもない。


 僕は空に雲が一切無い事を確認し、殺風景な山々を見る。いつもは優越感に浸れていたこの風景も、今では何かもの足りない景色となっていた。


 僕は目を瞑り、彼女と話したことや、彼女から貰った知識を思い出す。30分程の時が経ち、気温が高くなったのを肌で感じると、僕はゆっくりと目を開けた。


 目の前に入り込んできたのは朝日だった。何よりも眩しく、何よりも綺麗に光る朝日によって山々は赤く輝く。その景色は夕焼けの時とはまた違う雰囲気を醸し出している。


「モルゲンロート......」


「朝焼けで山々が赤く輝くこと......だろ?」


 僕は彼女の言葉が気になって調べていた。どうやらで山々が赤く輝くことをドイツ語でそう言うらしい。朝焼けの場合はモルゲンロート、夕焼けの場合はアーベントロートと言うそうだ。


 彼女はコクりと頷くと、僕の隣に立ち二人でそんな風景をじっと見る。

モルゲンロートが丁度終わろうとしたときに、僕は彼女の方へと視線を送った。彼女は僕の視線に気付き、僕の方へと視線を変える。


「あの、えっとさ。この前はごめん。いや、その、やっぱりいきなり名前を聞くのは失礼だったかな?」


 彼女はそんな僕の言葉に吹き出した。笑い声が山々に反射して木霊となって返ってくる。


 彼女は笑いが収まらないまま、僕に向けて言葉を発した。


「アハハハハ、あっあんたねぇ、2回も会う約束しといて失礼な訳無いでしょうが!」


「えっじゃあなんで?なんで前は答えずに帰ったの?」


 僕は自分の勘違いだった事にホッとしつつもいまだに残る疑問について聞いてみた。


「あぁ、あの時は本当に用事があっただけなの。」


「そうだったのか! 僕はてっきり失礼なことを言ったかと......あのさじゃあ今は良いんだよね? 君の名前を聞いても」


「ーいいえ、それは無理。」


 今までの楽しそうな表情とは一変し、彼女は苦しそうな顔をして下を見ながらそう言った。

僕のあたまの中では疑問ばかりが浮かんでは消え、浮かんでは消えが繰り返されていた。


「えっどうして、どうして教えてくれないの?」


 ついに言葉となった疑問が、僕の口から飛び出る。


「前会ったときから名前を聞かれても断ろうと思ってたの」


「えっどうして?」


「それも、言えない」


 まるで触れてほしくない事かのように、彼女は発言に少し威圧を込めてそう言った。


 どうしてなのだろうか。彼女の反応を見る限り、キラキラネームだからとか、恥ずかしいからとかそんな中途半端な理由じゃないことは見てとれた。


 中途半端な理由じゃないとわかった時点で、僕はそれ以上は深く聞かないべきだと分かっていた。けれど聞き下手であり、話し下手でもある僕は、彼女の含みのある発言を聞いてしまってはそんな事は出来なかった。


「一体どういうことなの? 理由も言えないの」


「貴方に教える事は出来ないの。私は貴方ともっと話していたいから。」


 瞳に少しばかりの涙を貯めて彼女はそう叫ぶと、何やらはっとなって口を押さえた。


そのあとに彼女は小声で呟くように何やら言っていたけれど、既に興奮している僕にそんな声が届くはずもなく虚しく耳の脇を通りすぎていった。今の僕に聞こえている音は彼女の確かな声と先程から強く吹いている風音だけだった。


彼女の叫びに反応してか僕の声も大きくなっていた。


「ちっともわからない。僕にはちっともわからないんだよ! 君が何を考えているのか、何で名前を伏せるのか。僕は君の名前が知りたいんだよ、君の事を知りたいんだよ、君ともっと話したいんだよ。」


 僕がそう言うと、彼女の瞳に貯まった涙は雫となって頬伝い、落ちていった。ポタリポタリ、1粒1粒落ちていく。


「なんで、なんで」


彼女は掠れた声でそういった。


「なんでって、君の事が好きだから。好きだからに決まってるだろ......」


ざわりと木々が大きく揺れた。僕は火照る頬を隠すようにしてうつむく。ザワザワと次々に揺れていた木々はしだいに小さな揺れとなっていき、辺りは沈黙と静寂に包まれていた。


彼女は涙を手の甲に拭いながら、俯いていた顔を上げると、しっかりとした目で喋りだした。


「貴方がそれだけ望んでも、叶わないものは絶対に叶わないの。だからね、いやだからこそ特別に名前だけは教えてあげる。」


「少し待ってて」彼女はそう付け加えると、目を瞑った。途端日の光が急激に眩しくなったと思うと光は彼女の元へ集まる。その眩しさに僕は一度目を瞑り、眩しさが引いたと同時に目を開けた。


「か、霞......?」


 そこには、さきほどの少女とは違った容姿をした女性が立っていた。身長、白い肌、端正な顔立ちはほぼ変わっていないものの、髪はショートカットで茶髪、豊富な胸がある。





 その瞬間僕の脳内に四年前の記憶が浮かび上がって来た。


 そうあれは丁度婚約届を出す前日の事。時期で言えば七夕の前日だ。

 




たっだいまー!


霞は買い物から帰ってくると、食材を冷蔵庫に入れ、本を読んでいる僕にニコニコしながら話しかけてきた。


ねえねぇ明日が私達の結婚記念日になるんだね!


あぁそういうことになるんだな


七夕が結婚記念日だなんて、なんだかロマンチックですなー


彼女のニコニコは止まらないまま彼女は更に話を進めていく。


あっそうだ折角だしさ、明日はどこかに食べに行かない?


おっいいね! どこに行こうか?


それは明日のお楽しみ!


その日は二人で一緒に夜を過ごした。夜が開けた次の日の事。


もう、りゅーが遅いせいでギリギリだったじゃん!


市役所からでた霞は不満そうに頬を膨らませながら言う。


まぁ間に合ったんだから良いだろ


そーだけど......そうだ! お腹空いたね。昨日言ってた場所に案内するよ。


僕より少し前を歩いていた彼女はこちらを振り向いて、微笑むとまた前を歩き出す。


10分程度歩いた歩いただろうか。僕は彼女に案内されながら目的地へと向かっていた。


前では目的地に近づく程足取りが軽くなっている霞がいて、僕らは横断歩道の前にたっていた。彼女は僕の顔を見てニコリとわらい、僕も同じように微笑み返した。


まだ着かないのか?


うーんとね、あと少しだよ!行こ


僕は彼女の笑顔がぐしゃりと歪むのを確かに見た。






霞はすぐに病院に運ばれたが死亡が確認された。

大型トラックとの衝突事故。霞の笑窪であったり、くびれであったり、細い指であっても僕はいつでも思い浮かべる事ができた。思い浮かべる事ができたからこそ、彼女の遺体を見たときはとても辛かった。


ああこれが霞なんだな、と思うことは出来なかった。


僕は初めて怒りを覚えた。生まれて初めてだ。




実感がわかないまま家へと帰った。涙すらも出なかった。きっと何かの悪い夢なのだと、早く覚ましてくれないものかとそう願っていた。


霞がいつも食糧の買い出しに行っているスーパーの前を通る。いつもは霞が作っているご飯が今日は無いのだ。心が何かに食い荒らされそうだった。僕は特に用もなかったが、中に入ることにした。


特に食欲もわかなかったため、水をかった。会計を終え、丁度店から出ようとしたとき、一本笹の葉が目に止まる。そういえば今日は七夕だったか。僕はとりあえず何でも良いので気を紛らわせる物が欲しかった。


笹の葉に近付いて見てみると、小学生や、幼児などの儚い願いが沢山かけられているのが見てわかった。


ヒーローになりたい。大富豪になりたい。


僕はそんな願いを見て心が緩んでいたのかもしれない。僕は数十とある短冊を次へ次へと見ていった。とても全てを見切れないけれど、儚い願いは確かに僕を楽にしてくれたし、僕の怒りは沈められていった。


ように思えた。いや、実際にそうだったのだけれど、僕の瞳についた短冊はとてもじゃないけれどそれらと比べ物にならないくらい僕の心を震わせた。




明日がいい日でありますように 霞




僕は泣いた。スーパーの中でまるで拗ねた赤子のように泣きじゃくった。短冊ごと引きちぎり、家に帰ってからも、それを見るたびにずっと泣いていた。その短冊の儚さは儚さを越えていた。


どうして?どうして死んだのが僕じゃなかったんだろうか?彼女は何かしたのだろうか?

どうして?どうして僕は彼女を助けてあげられなかったのだろうか?どうして?どうして?どうして?



 そう、今確かに思い出したのだ。霞は僕の元妻で、僕より少し物知りで、とても楽しそうに話す一人の女性を。


 僕はもう一度目の前にいる人物に目をやった。朝日に照らされたその姿は間違いなく霞だった。


「思い出してくれた? 貴方が忘れてしまった過去を。」


「霞! 僕は忘れてなんかっ」


 霞はじっと下を向いて必死に涙を堪えて話しだした。僕はそんな霞の話を、焦る気持ちを抑えつつじっと聞いていた。


「私は死んでからずっとりゅーを見ていたの。最初は苦しくて苦しくて堪らなかった。りゅーが泣いているのを見るたびに胸が押し潰れそうだった。りゅーの心を喰い荒らす怪物だけにはなりたくなかった。」


 最初は落ち着いていた霞の声は、次第に叫びと言えるほどまで大きな物となっていた。彼女の息は切れ切れとなり、呼吸の音がこちらまで聞こえてくる


「ええ、苦しかったのよ、辛かったのよ。りゅーと一緒に笑えないことが、りゅーの隣で泣けない事が」


 霞の声だけが公園内に響いていた。それ以外の物音がまるで概念ごと消えてしまったのではないかと錯覚するほど静かだった。


「でもね。りゅーは次第に泣かなくなった。普通の生活に戻っていった。きっと忘れちゃったんだと思った。良かったって安心した。」


 霞は俯いていた顔を上げると、無理をしたような笑顔を作り、一泊置くと震えるような小さな声で喋り出す。


「本当は私は怖かったんだ。りゅーの時間は流れているのに、私の時間はりゅーの所で止まっているの。りゅーは私を忘れていくのに、私はりゅーを忘れる事はできなかった!」


 霞は笑顔を浮かべながらも泣いている。ボロボロ涙を流し、それでも尚ワラっていた。


「私はね、そんな自分が嫌で嫌で、何度自分を呵責したかわからない。なんで、なんでこんなー!?」



僕は霞に抱きついていた。自分でやろうと思ったわけではない。ただそうすることが1番正しいと思ったから、そうしなければならないと思ったからだった。


「えっあ、あ......」


 霞は突然の僕の行動にまだ頭が追い付いていないようだった。僕はもっと強く抱き締めて、霞が落ち着くまでじっと待った。霞の呼吸が落ち着くと、僕は静かに口を開く。


「安心して。僕は一度も霞のことなんか忘れちゃいないさ。」


 僕は霞の耳元でそっと囁くようにそういった


「確かに当時は辛かった。辛かったから忘れてしまおうと思った。思ったのに駄目だった。泣いて泣いたのに無理だった。でもね霞と次に会えた時の事を考えると僕は泣かなくなった。霞は僕の中に生きていたから、霞が僕の中でも生きていたから。」


 霞は僕の胸のなかで泣いている。霞は顔を埋めながら僕の話をじっとではないけれど、服に涙を拭いながらではあったけれど確かに聞いていてくれた。


「だからね。僕は霞の事を忘れはしない。また前みたいに話そうよ。また前みたいに遊ぼうよ。それだけで僕は幸せなんだから」


僕は嘘なんて言っていなかった。霞との出会いや出来事は一度も忘れることはなかったのだ。ただそれは心の奥深く、不満の掃き溜めのようなところに隠されていた。いや自ら泣き暴れることで、霞という思い出の本にわざと埃を被せていたのかもしれなかった。勿論その時は自覚はしていなかった。僕は本能的に辛い思い出から逃げようとしていたのだから。


 霞は声を上げて泣きはじめる。僕は霞の頭を優しくなでる。それこそ触れたかどうかわからないくらい。割れかけの硝子を触るかのように。霞の声は更に大きなものとなり、広い公園内に響き続けているのであった。




 霞が泣き止んでから詳しく話を聞いてみると、やはり今の霞は幽霊ならしい。死後の世界では1度だけ、肉体付きで限世に来ることができるらしい。一度現世に行くと、次に行けるのは100年後だということ。現世に存在出来るのも1週間のみで、日がくれてしまうと生者にはみえなくなるそうで、意外と厳しいんだとか。


「なんだ。だから日がくれる前に帰ったのか。じゃあなんで霞に会える日に条件を付けたんだ?」


「えっ。いやだって、そっちの方が不思議ちゃんを演じれるかと思って......」


 霞は恥ながらそう言うと、開き直ったかのように再び喋りだす。


「いやーなかなか晴れなかったから焦ったなー。」


「アホかお前は! それにしても霞はもう少し落ち着けよなー。あの日だって事故だっていっても後ろ歩きは不注意過ぎるだろ!」


「お腹が空いていたんだから仕方ないんですー。」


 そんな下らない会話を繰り返している自分が、嫌に滑稽に見えてきて僕は笑い出してしまう。霞も同じ事を感じたのか笑い出し、暫くの間二人は笑いを止めることが出来なかった。


 やっと笑いが収まると、霞が先に口を開いた。


「りゅー本当にありがとね3日間しか話せなかったけど、楽しかった。」


「僕もだよ! 久しぶりにこんなに笑った気がする。」


 そう言葉を交わすと、霞は真上にある太陽を見る。


「あぁ、もうこんな時間だ。私はもう帰らなきゃ」


「あれ? 日がくれるまでじゃないの?」


「今日は私はこっちに来てから丁度7日目なんだ。最後の日は昼までにもとの世界へ帰らないと魂ごと消滅するんだ。」


 彼女は少し寂しそうな顔をするが、すぐに笑顔に戻ると何かを思い出したかのようにガサガサと木々の間を探り始めた。


「あった! はいスズランの花。今日はりゅーの誕生日だよね。前はこれを買いに行っていたの。私からの些細なプレゼント。」


彼女はエヘヘと頬を赤くしながら控えめにそれをつきだした。


8月10日。確かに僕の誕生日であった。勿論霞がいなくなってから僕自身、忘れかけていたけれど。


「あ、ありがとう。本当に嬉しいよ......」


「えっとね花言葉はねー」


「幸福の再来だ。」


 僕は目頭が熱くなるのを感じた。必死に堪えようとするが出来るはずもなく、涙が溢れだしてしまう。


「うん! その花を見て私を思い出すのだ!」


 霞はそんな僕に気付いていながらも敢えて触れずにいてくれた。霞は更に言葉続ける。


「じゃあ次会うときは......」


「おう! 次会うときは俺の命が尽きたときだ」


 僕が話し終えた時、先程と同じように霞の元に光が集まる。次の瞬間には、発光が更に強まった。光が完全に消えた時、そこに霞の姿はもう無かった。




 8月も下旬になって、強かった日差しがどこか弱々しく見え始めている。


 テーブルの上に置かれた一輪のスズランがリンと霞がかった音でなった気がした。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あぁ、やっと霞に会えるのか


僕はそう思い、スズランに手を伸ばす。





病室には機械音だけが残っていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が霞に会えることに一喜一憂している姿が面白かったです。特に雨の日でも自転車で行こうとしている所は微笑ましかったです。結局は傘を差して徒歩で公園に行っていますが、主人公の勢いを見ると、…
[良い点] 冒頭の死を連想させる内容からの回想への移り方も良いと思います。物語も濃く、読み進みたくなりました。 [気になる点] 短編小説なので仕方ないとは思いますが、少し物語の展開に無理がある気がしま…
[一言] 話の本筋がしっかりとできている印象を抱きました。その分、若干冗長的になり過ぎている感じも受けました。 この長さなら情景描写に思いっきり舵振り切っても良さそうだなあと。 起承転結の承が長い感じ…
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