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プロローグ 集結する戦いの最中で。

 

 ああ、だめだ。これもうダメだ・・・・。


 既に言葉になることのできない呟きが、女の喉で疼いて頭のなかで反響する。

 荒野とかした戦場の場、強力な魔法でその地を抉られ、水分一つ掠め取られたまさに終焉の地と呼ぶべき地獄で、一人の女は自分の体が既に動かなくなったと理解すると、薄暗く染まる天の雲を見上げながら生存を諦めた。

 

 戦争があった、戦だ。女一人と、国一つの”大規模”な戦争だ。

 

 狂いながら立ち向かってくる戦士たちを、自らの愛刀を血で汚すことで切り裂き、倒し、地につかせ、殺した。

 狂いながら立ち向かってくる戦士は、狂うしか道のなかった一人の民なんのだと知っていながら。だから、女には今自らが置かれている豪が、摂理とも言うべき当然なのだと受け入れることが出来た。

 女の視界の端、戦地に一本差し込まれた敵の旗を、この場に似合わぬ優しい風が駆け抜ける。

 風は女の短髪な金髪を揺らし、しいてはーー彼女から少し先の位置につるぎを持って立ち尽くす少年の赤い髪を揺らめかす。

 女は、視線の中心でこちらを見据えてくる少年を見て思う。


 そんな顔で見られる事したんだ・・・・、ろうな。私は・・・・。


 少年の目にはひたすら殺意がこもっており、顔に浮かべているのは嫌悪に等しい渋顔だった。

 ふとした瞬間、女の脳裏に思考が走る。


 私は・・・、いや、もう考えるのもいいや、知らね。


 既に考えることは、この戦いを始める前に終えてきたはずだ。

 疲労に目の下に浮かんだ隈のせいか、目頭が妙に熱い。

 女がそんなことを考えていると、いつの間にやら少年は剣を高々と掲げていた。そして、神々しく、静かに力を高め始めた。

 ゆっくりと収束していく魔力に、微かに世界が色を暗くし、緊張感を漂わせる。

 女の胸に懐かしく冷たい何かが湧き上がった。

 腕、足、四肢ともに動かぬと言うのに、脳味噌が激しく何かを訴え、心臓が鼓動を高めて、胃はキリキリと悲鳴を上げ始める。

 そして、最後には、幼女期以来流したことなどない、冷たい水滴が目の端から切なく流れ落ちる。

 

 やっば・・・


 女はなにかを悔しがり、少しずつ少年が彼女を殺す力を得ていく中で、目に強く力を込めた。

 

 自分が死ぬべきなのはわかってるんだけど・・・・、


 溢れる透明な雫は止まることを知らない、誰にも見せることのなかった彼女の素直な気持ちを表し続ける。ヒクついている喉の音が、恥ずかしくてたまらない。

 

 ああ、もうちょっとさぁ・・・、


 思いを頭のなかで語るだけでも、流れる涙の量が増えていく。

 だめだった、堪えることができなかった。


「ぼうじょっど・・、ふづうにいぎだがった・・・・!」


 少年により、断罪の一筋が振り下ろされる。

 願わくば、来世は平和な世に生まれ落ちることを願う。


 そこで女の命は終わると、彼女を知る誰もが、彼女でさえもそう思っていた。


 しかし、刹那ーー振り下ろされた一撃が、剣とともに粉砕された。


「まったく・・・。つくづく人間どもには呆れたものですねぇ」


 その斬撃の残像の先に降り立っていたのは、灼熱のようなくれないの髪を持つ綺麗な少女だった。

 驚愕し目を見開く女だったが、既に意識は闇の中に消えていくさなかで、


 ・・・・え?


 間抜けにもその一言しか思い浮かべることが出来ずに、世界を暗闇の中へと閉じた。

呼んでくださった皆様に感謝の意を表します!この先も呼んでいただけると幸いですm(_ _)m

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