プロローグ2
とりあえず、何かやってみるか。
スキルの統べる者と言うのがなんか気になった。試しに言ってみた。
「統べる者に鑑定を使用」
『統べる者:魔王の固有スキル。魔物を配下にする。配下のスキルを自らのスキルとして共有することが出来る。使用方法は、相手に自らの力量を認めさせ、刻印を刻む。また、魔王は配下の数と能力によってのみレベルアップが可能』
おお、頭の中に情報が流れ込んできた。すごい。
統べる者なんかカッコいいな。あと鑑定も便利。
こんな訳の分からないシチュエーションなのに、じわじわテンションが上がってきた。最後は夢オチかもしれないけど、ちょっと楽しいんじゃないか。
次に、暗闇の中で声に言われていたランダムワープを鑑定してみた。
『ランダムワープ:不確定の場所にワープすることが出来る。但し、即死する場所へはワープしない。ペナルティーとして、不運(中) が発生する』
ランダムな場所にワープってそのままだが、即死しない場所にワープしないってのが分かったのは収穫だな。
あと不運(中)って何だ。これも鑑定してみる。
『不運(中):勇者のイベント時入手アイテムのレア率がアップする』
なるほど。勇者に良いアイテムが手に入ったらこちらが不利になる。だから、不運なんだろう。イベントが何かはわからんが。
ところでランダムワープにペナルティーがついてきているけど、ペナルティーは特殊スキルの仕様なのか?
じゃあ、鑑定もペナルティーがあるのかもしれんな。確認するべか。
「鑑定に鑑定を使用」
『鑑定(大):あらゆる事象の説明を受けることが出来る奇跡。ペナルティーとして、リミット10日増加が10%の確率で発生する』
ビンゴだ。
自分のステータスを見てみる。
魔王 LV 1/5
名前 柴山大吾
配下 0/15
リミット 1010日
...…
おっ、リミットが10日増えている。
なんかやっちまった感があるな。
しかしまあ良いか。
1000日、いや1010日なんて、そんなにも長い間勇者から逃げ回るなんて、さすがに面倒臭いからな。
勇者に殺されたら元の世界に戻れるんだよな。だったら早めに勇者にやられてしまった方が楽でいいだろ。
俺は草の上で寝転び、空を見ながらぼんやり考える。
でも、逃げ切ったら願い事が叶うんだよな。それは捨てがたいぞ。
もし願い事をするのなら、永遠の命……は、嫌だな。自分だけひたすら生き残るのは多分きつい。そう言うマンガがあったよな。ろくな内容じゃなかった。やめとこう。
なら、恋人かな。彼女いない歴22年の22歳で素人童貞だもんな。可愛くておしとやかな女の子が良いな。
いや、お金もありだろ。お金があれば何でも出来る。いい車乗り回していたら、女も寄って来るだろ。そんで、会社を辞めてひたすら遊ぶ。女をとっかえひっかえしてさ。うへへ。これいいかもしれんぞ。札束の風呂とか入ってみたりしてな。
おお、なんかやる気が出てきた。
よーし、まずは特殊スキルから潰すとしますか。
「口寄せに鑑定を使用」
『口寄せ:配下を自分の近くにワープさせる。ペナルティーとして、配下のレベル分の日数が増加する』
次は魔法を試します!
「火属性魔法LV1に鑑定を使用」
『火属性魔法LV1:ファイヤーボールを使用可能。威力は術者の能力に拠る』
魔法はどうやるんかな。とりあえず口に出して言ってみようか。
「ファイヤーボール」
目の前に、人の頭程の炎の塊が現れた。熱っ。
俺があっちに行けと念じると、炎の塊は10m程向こうにヒュンっと飛び地面に着弾。途端に見上げる程の火柱が上がり、その後何事もなかったように消えた。
後には焼け焦げた地面だけが残った。
「……か、格好いい」
いかん、めっさ感動した。ファンタジーの世界、やばい。
ステータスを確認すると、MPが1だけ減っていた。んで、ファイヤーボールを撃ってから10秒位すると、500に戻る。
こりゃMP自動回復(大)の仕事だな。すげえ。
これならファイヤーボールやり放題だ。
いかん、テンションが上がる。いいなファンタジー。俺カッコイイ。
よし、ここはファイヤーボール祭り行っときますか。
「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール。わはははは。これだけやってもあと492回、いや回復した、493回もファイヤーボールができるぞ。わははははははは、ん?」
見ると、向こうの方になんか生き物がいる。
地面の穴から顔を出してこちらを見て固まっている。犬みたいだが額には小石くらいの赤い宝石のような物が埋まっている。
見た感じやたらに愛くるしいがいわゆるモンスターなのだろうか。
どうやらファイヤーボールをこの犬の巣穴の周りに打ちまくって、それで今恐怖で固まっているくさいな。なんか、妙に罪悪感がある。
とりあえず俺はこの犬を鑑定してみる。
カーバンクル LV 5/10
HP 32/32
MP 6/6
攻撃力 22
防御力 23
素早さ 25
魔法力 7
抵抗力 6
スキル
「火属性魔法LV1」「逃げ足」
俺は魔物言語を持ってるんだよな。これって、カーバンクルと会話できるのか。自分の魔物言語を鑑定してみる。
『魔物言語:魔物と会話する際の言語使用可能』
そのままだな。わざわざ鑑定こいて損したか。
もう一度ステータスを見る。鑑定×93になっていて、リミットは1010から増えていない。うむ。鑑定は限りある資源だから大事にしないといけないな。今後はなんでもすぐに鑑定してしまう習慣をやめるとしよう。
さて、統べる者、いっときますか?