ミノタウロス編1
ダジャレいきます。
遭難しました?そうなんです。
やっぱダジャレってイマイチ。小学生の頃はめっちゃダジャレが大好きなだったんだがな。
おい佐藤ダジャレ思いついた、いくぞ?校長が絶好調。どないやうへうへ、みたいなノリだったさ。
たぶんやりすぎて飽きちまったんだろうな。
でも、ダジャレは子供の言語学習にかなり役にたってた気がする。あの頃の俺は面白いダジャレを発明しようと必死に言葉をいじくりまわしてたもんな。
なんか感慨深い。なんかダジャレに感謝の念すらわいてきたよ。ありがとうございますダジャレ。
さて、人魔の森を抜けるまで、結局4日かかった。ちゃんと道通りに歩いたら1日も掛からん距離らしかったのにだな、犬が蝶々を追っかけて、それを俺が追いかけて、気付いたら元の道に戻れなくなっていたのだ。
遭難しました?そうなんです。うーんやっぱイマイチ。
その間はいやあ、いろいろあったあった。同じところを半日かけてグルグル回ってたり、喉が渇きすぎてボケ犬の血ぃ吸うたろかとか思ったり、寝るときに火を起こそうとしてファイヤーボールしても仕様で炎が延焼しないもんだから犬とくっついて暖とって寝たり、バカ犬がバカみたいに後先考えんとバカバカ食うからすぐに食料が無くなって飢えたりこのバカ、そんでキノコがあったから鑑定したら毒キノコ三連発だったり、うさぎっぽい野生動物がいきなり飛び出してきたからやった食料ゲットだぜってファイヤーボールぶちかましたら炭になったりな。
今となってはうさぎには悪いことをした。合掌。
しかし、あそこまで腹が減ったら人って変わるな。精神が限界突破するわ。うさぎが炭になっても罪悪感なんてなくてもったいないしか思わんかったもんな。
あと、何度かカバ太郎を食ってやろうと思ってしまいました。カバ太郎もそれが分かるのか途中でビクビクして俺と距離を置くようになったりしてな。
お前のせいでこうなったんだぞって、念話で説教してやろうかと思った。でも、これMPの減りがけっこうひどいんだよな。1秒でMPが1減る。MP自動回復が10秒で1回復だから全然追いつかない。MPが減ったら倦怠感があるからな。だから結局説教する気がせんかった。
でも、途中でカバ太郎が口をモグモグしてた時は迷わず念話した。
『おいおいおいおい何食ってんだ?言え言え言え言え』
『んー?むしー』
『むし……虫?』
『うん。おにいちゃんもたべるー?』
『……いいッス』
さすがに虫は無理やったわ。あと一日前遭難してたら食ってたかもしれんがな。ふっ。
あと、いつの間にかリミットが30日減ってた。こっちは心当たりがないから、勇者の身に何かあったんだと思う。笹山良子さんは大丈夫だろうか。心配だ。考えてどうにかなるもんではないんだけどさ。ふう。
で、ついにやった。森を抜けたぜ!
周りに木がない。やった。木はもううんざりだった。嬉しい。
そんで畑がある。道がある。田園風景だ。
さらには向こうに家がぽつぽつある。やった。村だ!
ひゃっっほーい。なんか食わしてくれ!
さあ、テンションアゲアゲでいくぞー。
ウインドドライブー!
そんで猛ダッシュー!
両の掌を左右に伸ばして、指先は上向けて。
きーん!
「ワンワンワンワン!」
うるせえダメ犬っ。俺は忙しいんだよ。勝手にお前のマイペースでトロトロ付いて来い。こののろまがっ。しっしっ。
おっ、第一村人発見。
ってあれ?なんか空気が物々しくないか。
鎧を着込んだのが4人いる。3人は、顔がトカゲだ。トカゲ人間?鎧から出ている手足もトカゲっぽい。よく見たら尻尾もあるな。これはトカゲ人間じゃなくて二足歩行トカゲだな。体だけトカゲならトカゲ人間で、体もトカゲなら二足歩行トカゲなんだ。それが俺ルール。どうでもいいことだがな。
これ、デイジーが言っていた龍人ってやつじゃねえか。ミノタウロス討伐がどうこうとかの。
あと、最後のひとりは人間だ。金髪のデブリングの兄ちゃんだ。
トカゲと言いこの人間と言い、でっかいな。身長2メートル以上あるんじゃないか。
で、皆さん手には武器を持っている。トカゲは槍で、人間はでかい斧。これは警戒した方がいいだろな。ゆっくり歩くことにする。
鑑定するか?でも、毒キノコを無駄に鑑定したばかりだからな。節約したいな。
「止まれ。何者だ」
トカゲのひとりが真っ先に俺に気付いて叫ぶ。おっ魔物言語だな。言語スキルは偉大だ。はじめて聞く言葉なのに理解できるし、話すこともできる。ああ、元の世界で英語でこれができたらなあ。
おれは足を止めて言葉を返す。
「怪しいものではない。旅の者だ。そちらこそ何者だ」
「我々ははぐれミノタウロス討伐隊の龍人だ。この近くの村が狂ったミノタウロスによって蹂躙された。そのためこの村で警戒活動をしている」
やっぱりこいつら龍人だ。
話してみた感じ龍人ってなんか品があるな。堂々としてるのに妙に柔らかい印象って言うか。そういやジョセフィンも威厳みたいのがあったよな。魔物って言っても、カバ太郎みたいなアホばかりでもないんだろう。
「森の中で道に迷い、食料が尽きてしまった。金は払う。食料を分けて欲しい」
「分かった。こちらに来て良いぞ。人間もいるので、その者に世話をしてもらえば良い」
「感謝する。あと、カーバンクルが追いかけてやってくる。そいつは俺の仲間だ。手出しはしないで欲しい」
「承知した。私はフェルディナンドだ。あなたは?」
「俺は柴山大吾だ。宜しく」
「シバヤマダイゴか。こちらこそ宜しく」
フェルディナンドが手を差し出してきた。俺は歩み寄り握手する。龍人の手はゴムみたいな感触だ。温かい。
そのうち他の龍人も近寄ってきた。
龍人達は見た目みんな似たような感じだけど、フェルディナンドが一番強そうだ。よし、こいつだけ鑑定するか。
龍人 LV 29/55
名前 フェルディナンド
HP 112/112
MP 3/3
攻撃力 93
防御力 101
素早さ 97
魔法力 2
抵抗力 9
スキル
「捨て身」「HP自動回復(小)」「恐怖耐性(小)」
強そうだと思ったけど、デイジーより見劣りすんな。
あとですな、デイジーはレベル1だった。この龍人はレベル29だ。マックス55だからすでに半分超えてるもんな。やっぱ勇者の仲間は反則に強いくさいな。
そこに人間がやってきた。どしん、どしんって歩く。でかいな。タテにもデカイが、ヨコにもデカイ。力士の体型だ。こいつはかなり強そうだぞ。
フェルディナンドが言う。
「ロック。こちらの旅人の世話をしてあげなさい。彼は食料を求めている。いいね」
「ウス」
「あと、この方を追いかけて仲間のカーバンクルがやってくるそうだよ」
「ウス」
「人間の世界の話もよく聞いておきなさいね。気にかかっていることがあれば、相談してもいいだろう」
「ウス」
なんとなく親しげな空気だ。人間と龍人って仲がいいのか?
ロックと呼ばれた人間が俺に言う。
「こっち、来い」
「ああ、宜しく頼む」
ごっつぁんでーす。
しかしこのロックにはなんか嫌な気がするんだよな。もしかしてあれか?
よし、鑑定だな。
勇者の聖騎士 LV 1/99
名前 ロック
HP 394/394
MP 0/0
攻撃力 176
防御力 201
素早さ 85
魔法力 2
抵抗力 48
装備
大斧
革の鎧
スキル
「目覚めし者」「復活」「死亡時ワープ」「精霊の加護」「ど根性」「仁王立ち」「HP自動回復(中)」「捨て身」
やっぱりなー。そんな気がしたよ。
勇者の聖騎士ときたもんだ。