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たぶんこれはコイゴコロ

作者: 藤島哉眼




たぶん私は、恋をしたの。



それは随分曖昧で、掴みどころがなくて。

手を伸ばせば届きそうなのに、届かなくて。

少し触れたら、溶けてしまいそうに脆くて。

考えるほどに、私も溶けてしまいそうで。

自分のことなのに、他人のことのようで。



それでも・・・。


この胸を締めつける感覚は確かで。

考えているときは楽しくて。

でもたまにひどく切なくて。

少し気を抜くと、涙が出てしまいそうで。





私は、恋をしている。





 春、あの人に出会った。

どこか儚げで、でもあの人らしい強さがあった。そのときから、私はあの人に惹かれていたのかもしれない。桜の木の下に立つあの人は、どこかに行ってしまいそうね。つかまえようと手を伸ばすことを、私は何度も何度もためらった。私なんかが触れていいのかしら、と・・・。

 あのとき、手を伸ばしていれば、今の気持ちに変化があったのかしら。

その答えは、誰も知らない。私でさえも分からない。永遠に、誰も知ることはできない。



 夏、あの人に少しだけ触れた。

距離が少しだけ縮まったと、内心喜んだわ。話せば話すほど、あの人を知って、私を知ってもらえて。それがなぜ嬉しいのか、そのときの私には分からなかったの。もしかしたら知りたくなかったのかもしれないけれど。

きっと私は臆病なのかもしれないわね。



 そして、秋。

自分の気持ちに、気づいたわ。

あぁ、あの人がすきなんだ・・・。

好きで好きで、たまらなくて。

もっともっとあの人の傍にいたいって。

考えれば考えるほど、楽しくて、幸せだったわ。


けれど、あなたを考えるたびに切なくなった。

手が届かないことに気づいてしまったの。

触れられないことに、気づいてしまった。

悲しかった。寂しかった。切なかった。

涙が止まらなくて、大きな声で泣きたかった。


私は隣にいるのに。近くにいるのに。

後4cmの距離が、ひどくもどかしくて。

いっそのこと触れてしまおうかとさえ思ってしまう自分が怖かった。


あなたなんか嫌い。そう思ってしまえたらどんなに楽でしょうね。

毎晩そう思いながら、あの人の笑顔を見つめているの。

終止符の打てない想いに、押しつぶされる夢を、毎晩見るわ。


ここまできたら、誰から見ても恋をしていると思うでしょうね。

でもね、私には分からないの。

私は本当にあの人を愛しているのか、たまにふと分からなくなるの。




だから、この気持ちは大事にしまっておくの。

私の心の、ずっとずっと奥。

誰にも知られない片隅に。

そっと置いておくのよ。




わたしの、曖昧なコイゴコロを・・・。


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