表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

桜の木の下で

作者: しかうさぎ

またもや他サイトに掲載したことのある作品です

それなりに好評でした

ただやっぱオリジナリティには欠けてしまったかな?

どんでん返しではなく若干踏み込んで捻るといったイメージで書いてみました

 今日も彼女の足音が近付いてくる。

 彼女はこの十五年、毎日夜十一時から十二時の間この桜の木の下で誰かを待ち続けている。

 僕のいる場所からは彼女の姿を見ることが出来ないから、恐らく向こうは僕のことに気付いていないだろうね。

 え? それじゃあなんで僕が彼女に気付いているのか、って?

 答えは簡単。毎晩彼女のすすり泣く声が聞こえてくるからだよ。

 多分僕と同じで、来ない恋人と待ち合わせでもしていたんだろう。時折、男の名前が耳に届くんだ。

 僕も彼女と同様、十五年の間、ずっとこの桜の木の下で恋人を待ち続けている。だからちょっと親近感があるんだ。何度か話し掛けようかとも思ったんだけど無理だった。なにせ僕は喋ることができないから。誰かに彼女を慰めて欲しいんだけど、ここには僕と彼女以外滅多に人は入って来ない。正直ちょっと現実的じゃないね。

 なんでだろう。彼女の泣き声を聞いているとどうしても放っておけない気分になるんだ。もしかしたら僕の恋人と泣き方が似てるのかも。

 あいつも泣き虫だったなぁ。怒っては泣き、喜んでは泣き、悲しんでは泣き……。

 うん、やっぱりそうだ。あいつの悲しんでる時の泣き方にそっくりなんだ。こんな時にこそ慰めてやるのが彼氏の役目だろうに。待ち合わせの相手は一体何をしてるんだか。

 そうやって僕が彼女の恋人に怒りを感じた直後、聞き慣れたメロディが流れ出した。どうやら日付をまたいだらしい。彼女はいつもこの時間にアラームとしてこの曲を設定している。僕もお気に入りなんだよね。いつもはこの曲を聞いた後、躊躇いがちに立ち去るんだけど……。

「ごめんなさい!」

 ど、どうしたんだろうか。彼女は泣きながら大声で謝り始めた。聞いているこちらが苦しくなってくる程悲痛な声だった。一体誰に対する謝罪なんだろう?

「……気は済んだかい?」

 彼女のすぐ横から男の声が聞こえた。いつの間にか来ていたらしい。その男は彼女が泣き止むまで待っていたようだ。彼女の声はまだ少し震えていたが、なんとか落ち着きを取り戻していた。そして彼女は……。

「約束の十五年が過ぎました。私は彼を忘れてあなたと幸せになります」

 ほんの少しの躊躇いは混じってたけど、彼女はきっぱりと男にそう告げた。

 そっか……。残念だけどしょうがないよね。十五年も待ったんだから待ち合わせの相手も許してくれるんじゃないかな。

『彼女をちゃんと幸せにしろよ!』

 声が出ないことは承知の上で、それでも僕は叫ばずにはいられなかった。

 僕の想いが届いたかどうかは分からない。ただ男ははっきりと僕に向かって言った。

「彼女は俺が幸せにする」

 ……彼女はもうここには来ないだろうな。

 一抹の寂しさを胸に、それでも僕は彼女の幸せを祈った。

 さて、今日も僕はあいつを待つとするか。彼女は待ちきれなかったみたいだけど、なにせ僕には腐るほど時間がある。永遠にだって待ち続けてみせるさ!この…………





サクラのキの、シタで−−

どうだったでしょうか?

ちなみになかなか気付いてもらえないんですが、犯人は遅れてやってきたあの男なんですよね〜

見えるはずのない土の中の相手を見つめてるわけですから

二度目に読んでもらうとその辺り気付けるかも

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ