FourFriend 2
「全員集合ってやつだな」
タカの言葉にカオスが答えた。
「さあてまずはだな、カオスとチーコも飲む飲む」
部屋に入ってきたカオスとチーコにシンゲンちゃんが日本酒のグラスを振って見せる。
「シンゲンのおっさんはもう出来上がってんだな。まずは乾杯といきたいところだが、まっぴ。例のあれが見たい。酒を飲むのはそれからだ」
「そうよちょぴた。私達にもまず見せてちょうだい。タカもシンゲンも見たのよね?」
「YES」
タカは明かりの下、眼鏡を光らせた。
カオスとチーコもあれを見たいと言う。
”あれを見る”
ということが、今日、僕の部屋に仲間四人(僕を含めると五人になるのか)が集まる意味であり目的でもあった。
「う…うん。こ、こっち」
僕は襖をゆっくりと開けた。
再度解き放たれた襖の奥の畳に置かれた光景がカオスとチーコを包み込んだ。
「わぉ。これか」
カオスは見るなり喚声のようなものをあげた。
「そっか…そういうことね…」
チーコは冷静な面持ちで鋭い視線で見続けた。
「ど、どうだろう?な、なにかある?ど、どうだろう?」
僕は恐る恐る二人に聞いてみる。
「ん〜。なにかあるっちゃなにかあるよな。な?チーコもわかるだろ?」
「そうね〜ぱっと見の段階でもちょっと注目する点はあるかも」
カオスとチーコはしばらく注目をしていたが無言のまま襖を閉めていった。
僕は聞きたいことが山ほどある。
彼らはあれを見て何を思い何を発見したのだろうか。
一つの部屋に集まる五人はそれぞれにテーブルを囲むように座っていた。
シンゲンちゃんが慎重な手つきで四つのグラスに日本酒をなみなみとついでいく。まるで何かの儀式みたいに静寂が支配していた。
「まずは乾杯でもしましょうか」
タカがグラスを胸の位置まで持っていった。
「タカさん。ちなみに何に乾杯する?」
カオスが口を挟んだ。
タカは手に持つグラスをそのまま眼鏡の縁に触れさせた。まるで眼鏡がお酒を欲しているかのように。
「カオス。さん付けは止めてください。タカって呼び捨てにしていただけませんか。雲泥の差が生じてしまいます。タカさんじゃ、とんねるずです。タカだと…」
「危ない刑事ね」
チーコが言うとタカは大きく頷いた。眼鏡とグラスがカチンと音を奏でて、頭の左に流れるバーコードが少しずれた。
「すみません。私の話しによって脱線してしまった。とにかく乾杯をしましょう。音頭はシンゲンちゃんお願いします」
「よーしゃ。じゃあ行くよ。はい!出陣じゃぁ」
「出陣じゃぁ」
五つのグラスが証しの触れ合いをした。
仲間の証だ。
少しだけ日本酒を口に含む。苦くて甘い味がした。
「さて。皆さん早速ですが本題に入りましょうか。隣部屋のあれを見てどう思いましたか?」
タカはシンゲンちゃん、カオス、チーコへと視線を移していき最後に僕を見た。
「その前にタカ。まずはよ、まっぴに聞きたいことがあるんだが…」
カオスがグラスを置いてテーブルの上で両手を合わせた。揃えられた長い人差し指は伸ばされ僕に向けられた。
なんてカッコイイ仕種なんだ。カオスがやるから様になる。そこから弾が出るなら僕は撃たれてもいい。
カッコヨサとは一種の麻薬なのだ。見せつけられたとき男女問わずマタタビと猫の関係になる。
僕はいま独り言を言いたくてたまらない。
言わせていただけるならば。
―カオス…撃ってみろよ。それでお前が楽になるなら俺の本望だ。さあ撃て。撃てよ!―
僕は体内に熱く込み上げてくる何かを察知していた。
きっとカオスは僕の弟分。
僕はネクタイを解きワイシャツのボタンを外して、入れ墨が彫られた胸から肩をさらけ出す。
―カオス。撃つならココだ!俺の心の臓を撃ち抜け。やれ!カオス―
カオスは抑揚のない声で言った。
「お前のあだ名はいったいどれが正解なんだよ?」
僕はただただ唖然とした。