『 可哀想な鬼の話 』
十二月も終わりに差し掛かったある日、家に鬼が来た。
隆と正月の予定を決めていたら、僕らの横に座ってアハハと笑って。
ああ、来年のことを話すと鬼が笑うとかなんとか、聞いたことあるな。
それを思いだし、僕と隆は再来年の話をしてみることにした。
「アハハハハ!」
案の定、鬼は一層激しく笑い出す。
三年後、四年後と続けていく度に、笑い転げる鬼。
十年後の話に差し掛かった時、彼はもう止めてくれと苦しそうに首を振った。
そろそろ止めてやろうか、僕らが話すのを止めるのとほぼ同時……弟の英二が嬉しそうに部屋に入ってきた。
「ねぇねぇ、おにいちゃん。ごひゃくまんねんごのちきゅうではね」
「あ」
あの鬼には、本当に悪いことをしたと思ってるよ。