衝撃の晩餐
樹里さんが鐘を鳴らすと何も無かった壁に格式高そうな扉が現れた。
そして軽く音をたてながらそれが開くと、バラエティ番組でよく見る料理を隠すための蓋を銀色のお盆に載せた執事が2人中へ入ってきた。
「お待たせいたしました、前菜の盛り合わせとなります」
「うん、ありがと」
そしてそう言いながら皿をテーブルの上に置き、蓋を上げる。するとそこには小さく盛られた料理がいくつものったプレートがあった。
樹里さんが何食わぬ顔でナイフとフォークを持って自分の席に置かれた料理のような物に手を伸ばす。その行動を見て、俺はなんで腕だけ自由になっているのかがなんとなく分かった。
「……食べろ、ってことですか?」
「言わなくても、この内装を見れば分かると思うけど?」
確かに昔の食堂っぽい内装と備品だとは思っていたが、まさかその通りだったとは思わなかった。
「ほら、早く食べないと冷めちゃうよ。安心なさい、毒なんか入れてないから」
樹里さんは少し眉間にしわを寄せながらあごをしゃくってきた。
正直、さっきの待合室的な所で飯を食べてしまっているのでお腹はパンパンなのだが……せっかく出された物を無駄にするわけには
「そんなに疑ってるなら、あたしが毒味でもしようか⁉︎」
「え、大丈夫です!」
若干キレかかっている樹里さんの様子に、俺は慌てて前菜に口をつけた。
少し味付けが濃いが、食べられないほどではない。俺は樹里さんから非常に遅れて完食した。
「慈愛蛙のハムのサラダでございます」
次に運ばれて来た物には斜めにスライスされた大きな人間の舌のようなどす黒い物体が野菜の上に大量に乗っていた。それを見た俺は思わず凍ってしまった。
「……まさか、これって」
「うん。あたしが倒してきたプレイヤーを使った料理だよ? 気分悪くした?」
「いや」
俺は短く否定してからヘケトとかいうプレイヤーの舌を口の中に放り込んだ。
「こんなので気分悪くしてたら、プレイヤーの体なんて食えませんから」
「だよね」
サラダを食べ切るとパンと琥珀色に輝くスープが代わりに出てきた。スープは骨から出汁をとったのだと分かるが、パンの材料になりそうな怪物は思いつかない……プレイヤーの体縛りのメニューというわけではないのか?
そんなことを考えながらパンをちぎってはスープにひたし、平らげていく。
「人狼様、パンのお代わりはなさいますか?」
「あ、結構です」
「食べておいた方がいいと思うわよ。これが最期の食事になるんだから」
「そんなことになる気はさらさらありませんから」
樹里さんからの挑発に俺は微笑しながら返す。すると樹里さんも負けずに笑みを浮かべた。
「ふーん……次の料理を見ても同じことを言えるかしらね?」
次の料理を?
俺の頭の中に疑問符が浮かんでいると、執事が3人がかりで大きな皿を運んできた。
「ねぇ、小鳥遊。あたしはね、クローズド・ラピッドファングなの」
「クローズドラピッドファング?」
樹里さんの口から謎の単語が飛び出してきた。咄嗟に聞き返すが答えは返って来ない。
「あたしは女王なの、だからこそ」
「お待たせしました」
覆いが外された瞬間、俺の大切な何かぎ吹き飛んだ。
「誘惑声鳥の姿揚げでございます」
「あたしはプレイヤーと本気で闘う義務があるのよ」




