絶対強運
結合能力によって身につけた電撃が室内の調度品を次々と砕いていく。
「あははははははははっ!」
額宝玉獣はそんな俺の攻撃をあざ笑いながら避けていた。
「逃げんなテメェっ!」
「逃げてないよ? 君が僕のいない所に熱心に攻撃しているだけじゃないか」
【深夜強襲】を使って額宝玉獣の後ろに回り込み、蹴りを入れようとする。しかしたどり着いた瞬間に額宝玉獣は俺のいる方を向いて、その蹴りを片腕で受け止めていた。
「ああもう!」
すぐに飛び退いて距離をとる。そんな俺を見て額宝玉獣は感心したように笑顔で頷いた。
「君の能力は相手の背後を取る技なのかな? 一瞬見失っちゃったよー」
「うるせぇよ、あっさりと気づきやがって」
「あれ? 予想的中しちゃったよ。じゃあ、逃げっぱなしじゃ不公平だからこっちもいかせてもらいますか」
そう言って額宝玉獣は手に金属の玉を生み出し、それを投げつけてきた。
しかし非常に遅い。こんなの簡単に避けられる。
俺は一歩横に動いて金属の玉の通ってくるであろう方向から避けて再び電撃を発生させようとして構えた。
するとその瞬間、玉が突然スピードを増して俺のわき腹に直撃した。
「あれー、適当に投げたんだけどなー」
額宝玉獣が困ったように笑いながら自分の頬をかく。
俺は歯を食いしばりながら額宝玉獣を見た。
カーバンクル、額の宝石を手に入れた者に幸運を与える南米の魔獣。
そういう特徴を考えると額宝玉獣の能力は「自分にとって良いことが起こる」と言ったところだろう。
適当に走れば相手の攻撃は当たらない。
相手を見失った時に後ろを向けば相手がいる。
攻撃が避けられそうになったら攻撃が相手に向かって曲がる。
これを強運の持ち主だと言わないで何と言うか。
そう考えるとこのまま正攻法で戦っていては確実にジリ貧で自滅する。俺は何か使えそうな物が無いかと周りを見渡す。
俺と額宝玉獣が対峙しているこの部屋は俺の部屋の数倍はある。
最初は普通の小部屋だったのだが、俺の変体が終わった瞬間に壁が上に上がっていき拡大していた。
そして隠されていた部分には高級ホテル顔負けの調度品や石柱などの装飾品があったが、ほとんど俺の新しく手に入れた能力【神罰】によって粉々に砕かれていて、その破片が床に大量に散らばっている。
「ほら、何よそ見してるんだい?」
「うぉっ!?」
声に反応して慌てて体を反らすと額宝玉獣の拳がすぐ横を通過した。
いつの間にか額宝玉獣の手にはメリケンサックがはめ込まれていた。あれ自体の威力がなくても魔獣の力があれば余裕で生身の体を突き抜くだろう。俺の体は頑丈な鱗や鉱物で覆われてないのだ。
「ほらほらほらほら! 反撃してごらんよ!」
次々と額宝玉獣がパンチを繰り出してくる。俺はそれを必死に避けながら現状を打破する方法を考えた。
「何? 逃げてるだけ? 無駄だよさっさとやられちゃいなよ!」
パンチが石で出来た柱をかすめる。するとそれによって飛んだ破片が額宝玉獣の頬を薄く切った。
その傷から薄く血が流れ始める。俺はそれを確認してから床の上を滑り込み距離をとった。
「はー、君、本当に往生際が悪いね。逃げ回ってても僕を倒すことはできないよ」
「いや」
呆れたように言う額宝玉獣にむかって、俺は軽く顔を拭ってから否定した。
「わかったよ、お前の能力の穴」




