冥土館での遭遇
冥土館の前にある駐車場に大垣さんが車を入れる中、俺は周りを見回していた。
エンブレムから明らかに外国の超有名所の高級メーカーの物だとわかる車があるかと思えば、その横には廃車に放り込まれそうなほどボロボロになった軽自動車が停まっていた。
「小鳥遊くん、どうしたの?」
「いや、この車が使われることはもう二度と無いのかもしれないんだよな……と思ってつい」
「ああ、ここにあるってことはプレイヤーの所有物だってことだもんね。……十円キズでもつけてやろうか」
「ジョークでもやめましょうね、そういうの。後が怖いですから」
軽口を叩きながら黒い格子状の扉を押し開く。「冥土館」というおどろおどろしい名前と違って庭は綺麗に整えられていた。鮮やかな花々が辺りを彩っている。
白い大理石で作られた噴水の横を歩いていると、正面の洋館からタキシードを着た初老の男性が姿を現した。
「いらっしゃいませ。プレイヤー様でいらっしゃいますか?」
「あ、はい」
頷いて招待状を見せる。男性はシワの多い顔をニッコリと微笑ませながら扉を自分の体をつっかえ棒にするように開けた。
「人狼様は4番のお部屋に、迷宮内牛は10番のお部屋にお入り下さい。部屋は階段を上がってすぐの所にございますので」
俺達が入ったのを確認してから、男性は後ろ手で扉を閉めた。
「……ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいですか?」
「何なりと」
「この招待状を送ってきたのは、あなたの主人なの? それとも別の誰か?」
大垣さんからの質問に男性は表情を崩すことなく眈々と答えた。
「その招待状は私の主人、無命闇王様の物でございます。……それが何か?」
「いや。確認だけです。ありがとうございました……いきましょ」
大垣さんは男性から視線を外すと、階段へとスタスタと歩き始めた。そんな大垣さんの後を慌てて追う。
「今の質問は何だったんですか?」
「ん? 単なる興味よ。気にしないで。……あ、ここで分かれるみたいね」
大垣さんが指差す方を見ると「1〜6←→7〜13」と刻まれた金属製の板が壁に立てかけられていた。
「そうですね。……では、また後で」
「はい。必ず生き残ってね」
お互いの勝利を祈りつつ別れた俺は矢印の書かれた通路を進んでいき、「4」と刻まれた扉を開けた。
中には大型のモニターとイスが1つずつポツンと置いてあった。……座って待て、ということだろうか。
とりあえず座ってみる。すると突然モニターが起動して映像が流れ始めた。
「どうも皆様、遠路はるばるお疲れ様でした。そしてここが終の場所となるでしょう」
機械で加工した声が聞こえ始めると同時に、どこからかものすごい衝撃音がした。別の部屋の誰かがキレて暴れたのか。
「私の名前は無命闇王。前回のラビッドファングの覇者……つまりディフェンディングチャンピオン、というわけです」
画面の中の人物が手を組んで、テーブルの上に肘をついた。
「言うならば、ここに呼ばれた者は全員挑戦者なわけであります。しかし全員と戦うのは正直面倒くさい。だからここでふるいにかけさせていただきます」
その言葉と同時に部屋の扉が再び開く。強い光の射した方を見ると先程の男性が出口を塞ぐように部屋の中に現れていた。
「まずは、私の可愛い子分達を倒せるかどうか。私の下にはついてますが一応彼らもファイナリスト。歯ごたえが無いクズではないと思いますよ」
「デ・コード、額宝玉獣」
男性の体が縮んでいくとタキシードがはだけ出す。肌中に満遍なくオレンジ色の毛が生えていき、耳がウサギのように伸び、頭の上にピンとたった時には人間だった男性の額には紅く巨大な宝石が現れていた。
「さぁー、さっさと殺戮を始めちゃいましょうか?」
さっき聞いた物とは全然違うハキハキとした生気溢れる声を発しながら、額宝玉獣がその場で何度も飛び上がる。大人の平均ぐらいの物だった身長は小学校高学年程度にまで縮んでいた。
いつの間にかモニターの画面は消えていた。俺はいつものように、軽く服をはだけさせてから唱えた。
「デ・コード、人狼!」




