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最終決戦への誘い

 雷鳴蜥蜴(イビリア)を倒した翌日から、俺は探索をやめた。……もとい、やめなければならなくなった。

 なぜなら大学の夏休みが終わってしまったからだ。ラピッドファングの最中でも、大学の単位が免除されるわけではない。当然、単位が取れなければ問答無用で落とされる。それが親にバレたらどうなるかは、火を見るより明らかだ。

 というわけで、俺は授業で出されていた課題に必死に取り組んでいた。……キリシタン版ってなんだよ。

「小鳥遊ー、いるか?」

 コンコンとドアがノックされる。俺は椅子から立ち上がると、かけていた鍵を開けた。

「どうした?」

 ドアを開けて外を覗き見る。すると安藤がやや困った表情をして立っていた。

「いや、これ。俺のポストに間違えて入ってたみたいだから」

 そう言って安藤が差し出してきた封筒には「小鳥遊 信乃様」と打ち出された文字が印刷されていた。

「あ、サンキューな」

「いいのいいの、これぐらいどうってことねぇよ」

 安藤はそう言い残すとそそくさと自室に戻っていった。

 再びドアを閉めて、封筒を確認する。封筒には消印もなければ切手もなく、さらに差出人の名前も書いてなかった。

 もはやお馴染みのあれだな、と思いつつ封を切る。すると小さなメッセージカードが中から出てきた。


ーーー

人狼様。

この度、ラピッドファングの選ばれし20体の魔物頂点を決める場所をご用意させていただきました。

明月五日、山梨にあります「冥土館」にてお待ちしております。蜘蛛の糸を辿って天界にたどり着くか、血の池に突き落とされるかはあなた次第です。

ーーー


 カードの裏面には地図が描かれていた。しかしどこにも差出人の名前は書かれていなかった。……おかしい。いつもだったらマスターやら渡し人やらなんやらの名前が入っていたはずなのに。

 …………これは、挑戦状みたいな物か。プレイヤーからの。

 俺はしばらく考えたあと、デバイスを手に取った。久しぶりにあの機能を使うために。


ーーー


 強い雨が降る中、俺の乗る白い軽自動車はのんびりと目的地に向かって走っていた。

「すいません、わざわざ車出してもらって」

「いいのいいの。たまに運転しないとペーパーになっちゃうから」

 大垣さんはしっかりと前を向いたまま答えた。あの謎の封筒は大垣さんの元にも届いていたので、簡単に話がついたのだ。

「にしても、予想していたとはいえ結構田舎ですね。人通りが全然ない」

「……そんなことよりさ、言うことないのかねー?」

「……香上さんの件ですか」

「そう。……連絡がつかなくなったの、知ってるでしょ」

「……眠らされたんですよね。それくらい気づいてますよ」

「……小鳥遊くんは『眠らされた』って言うんだね」

「まぁ、勝ち抜けば生き返るんですから。寝てるのと同じですよ」

 そう俺は断言して横に見える山を見た。

 切り立った崖の上に黒で統一されたような洋館が見える。あれが今回の戦いの舞台、冥土館だ。

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