2人の相談
「ねぇ、最近の小鳥遊くんの様子、どう思う?」
日の当たるカフェテラスの一席で、そう大垣は切り出した。
「どう……って、なんかおかしくなってる感じはしますね。焦ってるというか、無理に冷静になろうとしているというか……」
変装のためか、似合わない太黒縁メガネをかけながらちびちびと砂糖たっぷりのコーヒーを飲んでいた鳥海はそう答えた。
「だよね。……いくらあの田代さんが倒されたからって、手当たり次第に1人で次々と戦うことないのにね」
大垣が把握してるだけでも、田代が死んでからわずか1ヶ月の間に小鳥遊は11体のプレイヤーを腹の中に放り込んでいた。田代達と出会うまでのペースに比べたら、異常な対戦率である。
「たぶん、自分で因子を独占したいのか、私たちを拘束したくないのかのどっちかだと思うけど」
「そうですね……由子さんは社会人さんでお仕事があるからわかるんですけど、私は無職なのに……」
あなたは休職してるだけで、立派なアイドルだろ……というツッコミをする者はここには誰もいなかった。鳥海はやや沈んだ面持ちで言った。
「ひょっとして、本当に1人でどうにかしようとしてんじゃないか、って思ってしまいますよね」
「友達を作ると人間強度が下がる的な考え? バカみたいだけど、本当に考えてそうだから怖いわ」
ある小説の主人公が一時期掲げていた理論を大垣は心の底から呆れたようにつぶやいた。
「で、あのメールは見た?」
「見ましたよ、4分の1を切ったってやつですよね」
鳥海は大きくノビをした。
「まさか、あれからここまで残れるなんて思ってませんでしたけど……本当に小鳥遊さんと由子さんのおかげですよ」
「何言ってんの、意外に阿鼻叫喚は強力な能力じゃないの。私だってあれに何度助けられたか……」
ここで小鳥遊の名前が出ないのが、どんだけ彼の能力が集団戦に向いてないかを物語っていた。
「とりあえず、これからも前線の由子さんに後衛の私で頑張っていきますか」
そう鳥海は笑って言った。
しかし、この思いが叶うことは無かった。
何の前触れもなく、この翌日、鳥海の名前が連絡帳から消滅するのであった。




