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三種の能力

「う、ぐぅ……田代、さんが、危ない……!」

 意識を取り戻した信乃は身体中を襲う激痛に顔を顰め、ふらつきながらも壁を支えにして上の階へと登っていた。下の階にいたはずの鳥海・大垣ペアがいないことで、焦りすら感じていた。自分が気絶していた間に、2人とも強欲罪魔に殺されてしまったのではないか、と。

 本当は2段、3段飛ばしで駆け上がりたかったが、そんなはやる気持ちとは裏腹に、深く傷ついた身体はついていかない。それでも信乃はしっかりと着実に前へ進んでいた。

 そして行きよりも多くの時間をかけて、4階までたどり着いた信乃は屋上の手前の踊り場で疲れ切った様子でしゃがんでいる鳥海達を見つけた。

「あ、皆さん、無事だっ……」

 そう言いかけた瞬間、彼の視界は真っ赤な炎に包まれた鉄斧で塞がれた。


ーーー


「……他のチームも瘴気蛟のチームを狙ってたんですね」

 道路を走る車の中、つぶやく大垣の横で田代は遠藤のデバイスに新しく表示された怪物の情報を見ながら唸っていた。

象持鳥(ルフ)……正直プレイヤーとしての聞き覚えは無いわね」

「ひょっとしたら仲間の影に隠れていたのかもしれません。そいつ『俺のことはいいからお前は先に行け』って階段にむかって言ってましたから」

 そう遠藤は手首を伸ばしながら言った。遠藤は予期せぬ侵入者(ルフ)との戦闘で、後に出発してたはずの田代達に抜かれていたのだった。

「屋上の床が熱でドロドロに溶けてたから、もうあんたが強欲罪魔と戦って負けたのかと思ってたわ」

「ヒドイですお嬢。そんなに過小評価されてんですか、俺」

「だって九州を1人で制圧したプレイヤーだったのよ? いくらあんたでも敵う相手じゃないでしょ」

「うっ……」

 遠藤が黙り込んだ頃、鳥海の膝枕の上で気絶していた信乃が目を覚ました。

「あ、信乃さん目覚めました?」

「えーと、ここは……?」

「私の家の車の中。で、小鳥遊さん寝起きの所悪いんだけど、色々と聞きたいことがあるんだ?」



 約1時間にわたる質問という名の尋問、及び状況説明が一通り終わった頃、信乃は深々と土下座をしていた。

「……本当に申し訳ありませんでした」

 そんな信乃を鳥海はおろおろと、大垣は頭を抱えながら、遠藤は無表情で見つめていた。そんな中、田代が口を開いた。

「……別にいいわ。あんたが暴走しなければあの化物だって倒せなかった訳だし……とにかく、これで沈獣共鳴の能力はわかったわ」

 田代は背もたれに体を任せると、信乃を席に座わり直したのを見届けてから言った。

「ラビッドファングに出てくる能力は主に3種類に分かれてるの。一つは灼熱魔神の『炎上活発(フリーボルケーノ)』や誘惑声鳥の『阿鼻叫喚』のように直接敵にダメージを与える能力。プレイヤーの中では『魔法型』と呼ばれているわ」

 田代はそう言いながら手をジャンケンのチョキの形にして前に突き出す。

「次にあんたの『深夜強襲』や迷宮内牛の『鉄斧生成(チョッパージャック)』のように使用者や味方に有益な効果を与える能力。これはそのまんま『強化型』って呼ばれてる。そして3つ目が重要で……」

 田代がさらに薬指を立てる。

「使用者が生死に関わる事態になった時にのみ発動する火事場の馬鹿力みたいな能力。これは直前まで味方にも相手にも能力を発動させてるかさせてないかの判別がつきにくいことから『地雷型』って呼ばれてる。おそらく『沈獣共鳴』はこの型の能力ね」

「味方にも相手にも判別がつきにくい、ってどういうことだ?」

「他の型は唱えるか念じた直後に何らかの形で効果が発現しているの。火の玉だったり音波だったり、使用者の移動だったりね。でも地雷型はすぐに発動しない。使用者がその戦いの中で一回でも唱えていれば、そいつが死にかけた瞬間に自動的に発動するの」

「だから見分けがつきにくい、って?」

「そういうこと」

 田代は手を下ろして頷いた。

「しかしさすがは結合能力と言ったところですかね……。死にかけた瞬間に周囲のプレイヤーを喰らい尽くす触手を発現させるなんて……チート級ですよ」

 遠藤が呆れたように首を振ると信乃は少し落ち込みながら言った。

「チート級、って言われても、それで仲間を危険に晒してしまうんだったら、全然意味が無いですよ」

「で、でも意識を失っていたせいで暴走したんですから、意識を保つ方法を見つければコントロールが効くかもしれ……」

「鳥海さん、甘いよ? 地雷型は死にかけないと(・・・・・・・)効果を発揮しないんだ。死にかける程の攻撃を喰らっても意識を保ち続けられる方法があるなら、俺が教えて欲しいな」

 遠藤からの指摘を受けた鳥海は一瞬驚いたような表情をして、下をむいた。田代は天井を見上げながらこう結論づけた。

「とりあえず、集団戦での沈獣共鳴の使用は禁止。私達が全員死んで、あなただけが生き残ることになるまで、ね」

 反論しようとする者は、いなかった。

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