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第二戦

 熊の手。中国では高級食材として珍重され、特にハチミツが染み込み、柔らかくなった右手は左手の数倍の値がつくという。

 しかし人喰神熊の右手は甘くもなくすじ肉っぽい感じだった。まぁ、大の男が○ーさんみたいにハチミツの壺に腕を突っ込んで食べてるわけがないから当然とも言えるが。

「もしもし、由ちゃん? 2階鎮圧したから上がってきて。うん、これから私達は3階行くから、うん、わかった、そっちもくれぐれも気をつけてね、じゃ、また3階鎮圧したら連絡するから、じゃあね」

 田代がデバイスにむかって話しかけた後、操作し始めた。どうやら由子さんとの連絡が終わったらしい。

「で、小鳥遊は食べ終わったの?」

「あ、今口に入ってるので終わりです。能力は増えなかったですけど」

「そりゃそうでしょ。ウィキにページがないやつに結合するモンスターなんているわけないじゃん」

 でも道産子モンスター全員食えたらわからないけどね、と田代は言った。


ーーー


 アッコロカムイ。

 北海道は内浦湾に住むといわれる蛸の妖怪である。元々は村を荒らしまくる蜘蛛の妖怪だったが、人々の願いを受けた海の神によって捕らえられ、蛸に変化させられた。しかしその獰猛さは変わらず、蛸になってからも漁をしている人々を襲い続けたと言われている。


ーーー


「無事小鳥遊くんと合流できたって」

「あ、そうですか」

 私がピョンピョン嬉しがってる間に信乃さんはずいぶん先に行ってしまっていた。そのため、裏口に回るはずだった田代さんが信乃さんと同行することになってしまった。ただ、遠藤さんクラスのプレイヤーなら1人でも軽々突破できるだろう。

 そして残った私達はしんがりとして、下から登ってくるであろう、下っ端達に備えていたが、阿鼻叫喚が効いているのか、上がってくる人はいなかった。


 ピーッ、ピーッ、ピーッ


 再び由子さんのデバイスが鳴る。由子さんはデバイスを起動させ、軽く2、3言話すと電話を切った。

「田代さん、3階鎮圧したって」

「速いですね」

「ぶっ倒れてる下っ端軍団ばっかだったから、って言ってたよ」

「へぇ……俺っちの可愛い仲間倒したのはあんたらかい?」

 気がつくと1階と2階を繋ぐ階段のそばに1人の男性が立っていた。由子さんが軽く首を回しながら答える。

「そうだけど。もしかして大章魚さんかな?」

「お、ご明察ー。ということはあんたらは妖精猫の仲間っつーことか」

 大章魚の男性はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら手を叩いた。

「迷宮内牛に誘惑声鳥か。食ったら瘴気蛟も軽く嬲り殺せそうだな」

 この瘴気蛟のグループは瘴気蛟が他の2人を屈服させて作ったグループである、という話は車内で聞いていた。やはり下剋上というか、裏切る気は満々だったようだ。

「デ・コード、大章魚!」

 男性の頭が風船のように急激に膨らんでいき、その重さに耐えれなくなった胴体がぐちゃっ、と生々しい音をたてながら潰れた。

 巨大な頭だけになった男性の目がどんどん離れていくと鼻や眉、髪といった人間らしいパーツが次々に消えていった。

「うわっ、気持ち悪っ……」

 先ほどから見せられているグロテスクな変身模様に由子さんがドン引きする。私も声には出さないが、同じことを思ってる。

 そんな思いをよそに、赤く色づいていく頭の下から太い、吸盤が大量についた足が8本生えた。

「さぁ、一方的虐殺を始めようか!」

 大章魚がそう言うのと同時に大章魚の周りの壁や床が急激に赤くなった。由子さんが、能力で作り出した鉄斧を赤くなった部分にむかって投げると赤い部分に触れた瞬間に蒸発して消え失せた。

「ははは、俺っちの能力は『熱持赤潮(ホットスプリング)』! 俺の近くに近づいた者はすべて蒸発させるぅ! どうだ、お前らは反撃することすらできず、俺っちに蒸発させられて吸い込まれる運命なのさ!」

「……鳥海さん。やっちゃっていいよ、ウザいから」

「ですね。念のため耳塞いでてください」

「なーにボソボソと喋ってるのかなぁ?」

「わーっ!」

 問答無用で大章魚に阿鼻叫喚をぶつける。すると一気に赤かった壁が元の色に戻った。

「…………」

 雄弁だった大章魚の言葉が止まる。近寄ってみると白目をむいて痙攣しているのがわかった。

「……こんなあっさり倒せちゃっていいんですか」

「いいんじゃないの?」

 あまりのチートっぷりにドン引きする私をよそに由子さんは大章魚の解体を始めた。

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