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圧倒する者

「はい、着いたわよ」

 車が止まったのは薄汚れた繁華街の裏路地だった。周りには無骨なコンクリート打ちっ放しの壁、足元には鉄パイプとかタバコの燃えかすが無造作に転がっている。日本にもまだこんなアウトローな場所があるんだな。

 そんな所に俺と鳥海さんは下ろされた。今回、俺たちは正面玄関を固めていた真人間の相手を担当し、その騒動に瘴気蛟達が気を取られている隙に田代グループが裏口から侵入、叩き潰す作戦となっている。従うつもりはさらさらないが。だって結合能力とやら試してみたいもん。

「じゃあ鳥海さん。頼むわよ」

 田代が鳥海さんの肩を叩く。対する鳥海さんは小さくなりながら不安そうにつぶやいた。

「は、はい……本当に大丈夫なんですよね……」

「そこはあなたの力加減次第よ」

「うう……」

 阿鼻叫喚は下手すればそれだけで相手を心臓発作であの世行きに出来る凶悪能力。あまりその操作に慣れていない鳥海に「気絶させるだけ」というのは少々酷だった。多頭多腕の時も範囲はコントロール出来てたけど威力はコントロール出来てなかったし。

「ま、なんとかなるわよ」

 そう言う田代も鳥海に着いて行こうとはしなかった。なんだかんだ言って巻き添えになるのが怖いのか。



「ううわぁぁぁぁぁーーー!!!」

 瘴気蛟のアジトに阿鼻叫喚をぶつけてから入った所、至る所に泡を吹いてぶっ倒れている男が何人も転がっていた。ぱっと見では死んでいないようだ。

「やった、やった、私、出来た……」

 鳥海が嬉しそうに尾びれをうまく使ってピョンピョン跳ねている。ちなみに俺も鳥海さんも獣化状態です。

「わからねぇぞ、まだ入口だし」

 ちなみにアジトは屋上含めての5階立てだ。

「信乃さん! そんな不吉なこと言わないでくださいよ!」

 鳥海がオロオロ顏で叫んでいるのをバックに俺はアジトへと入った。変な邪魔も入らないまま2階へ順調に進んで行くと突然開けた場所にでた。そこで立っていたのは腹にどでかい口がパックリあいた黒い熊だった。

「さっきの奇声で俺の仲間を倒したのはお前か? ふざけた真似してくれたな」

 熊が怒っている様子で叫ぶ。たぶんあれが人喰神熊(ヌプリケスングル)なんだろうが……

「……キモッ」

 なんか腹の口からよだれがダラダラ流れてるし。ハガレンの暴飲暴食人造人間か。

「お前を殺して、あいつらの菩提を弔わせてもらうぜ」

 俺のつぶやきが聞こえなかったのか、熊はそうかっこつけながら宣言するとこっちに突っ込んできた。……でも動き遅いな。それに奇声は俺じゃなくて鳥海さんのです。あとあなたの部下は誰一人死んでおりません。

 と思った瞬間、熊は飛び上がり、俺にむかってのしかかろうとしてきた。もちろん避けるが。

「へぇ……俺の山麓遭遇(モンブランクラッシュ)を避けるなんて中々やるな」

 熊がのっそり起き上がるとのしかかられた床には穴があき、腹の口がその床をバリボリと砕いていた。おそらくモンブランクラッシュとかいうあいつの能力は「のしかかった物を腹の口で砕き切る物」なのだろう。

「……元がスピード型なんでね」

 俺が首を回しながら言うと、後ろから別の声がした。

「あんた、あれだけ先行しすぎるな、って言ってたのに聞いてなかったの?」

 振り向くと女の猫人が歩いてきていた。腰には見覚えのある刀を差している。初めて見るが、これが妖精猫(ケット・シー)の変身姿だろう。

「別に良いだろ。沈獣共鳴(ウラノスズフェイルド)の試し打ちもやりたかったし……」

「どうやって発動するのかもわからない物を対人戦で試すんじゃないわよ」

「…………」

 ばっさり(言葉で)斬られた。うわーん。

「……お前が噂の妖精猫か。なかなか旨そうだな」

 そんな中、熊が顔の口のよだれを拭く。でも腹の口からはダラダラとよだれが大量に流れている。……本当に気持ち悪りぃな。

「そちらが動かないならこちらから行かせてもらうぜ!」

 熊がドスドスと音を立てて近づいてくる。田代はニヤリと笑いながら刀を抜いた。

「スキだらけね。さっさと潰しますか」

 田代はそう言って軽く跳ぶと熊を飛び越え、後ろに着地した。そして振り返りざまに斬りつける。熊の顔が痛みで歪む。

 熊が振り返り爪を叩きつけると、田代は腕を駆け上がり刀を目に突き刺した。

「ぐわぁぁぁぁっ!!」

 刀を刺したまま田代は熊の肩からひらりと降りる。熊は絶叫しながら右目を抑えてうずくまっている。

「なんだこりゃ……」

 あれだけ動いていたにもかかわらず田代自身は息を少しも乱していない。

「き、貴様ぁっ!!」

 熊が刀を抜くと右目からドバッと血が噴き出した。普通の人なら失明確定だが、怪物の力があればすぐに治癒するだろう。……このまま生きていられたら。

「うがぁぁぁぁぁっ!! 山麓遭遇!」

 熊がヤケクソとばかりに飛び上がって叫ぶ。それを見た田代は不敵な笑みを浮かべてその場に座った。

 そして避けることなく熊の巨体に潰された。

「た、田代さん!!」

 この時、俺は田代の体がさっきのコンクリートのようにあの熊の大きな口によってぐちゃぐちゃに噛み砕かれると思った。しかし次の瞬間、


 熊の腹が爆ぜた。


 血の雨が降る中、熊は口を大きく開け、信じられない、という顔をしながら息絶えた。そして腹に大きくあいた穴から田代は何食わぬ顔をして出てきた。

 某然と見つめる俺にむかって、田代は言った。

「『火車轟々(バーニングスティール)』。これが私の能力よ」

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