いざ、かま……もとい蛟狩り
翌日、まだ朝のテレビ小説も終わらず、漬け物片手にご飯を食らっていた頃。
「小鳥遊ー、お客さんだよー」
「よ、小鳥遊。準備出来たか?」
樹里さんのうしろには田代の姿があった。俺は味噌汁を一息に飲み干すと渋々立ち上がった。
「あれだけ明日行く、って話してたのに、なんでまだ寝巻なのよ」
「……こんなに早く来るとは思わなかったんだよ……よっと」
俺が下着姿になっているのも構わず、田代は俺の部屋にズカズカと入ってきた。
「……これから着替えるんだけど」
「見慣れてるから大丈夫」
そういえば、あの建物たくさん部屋あったな……と今頃になって思い出す。おそらく子分と共同生活をしてるのだろう。そう考えれば男の下着姿を見慣れているというのも納得できる。
「そんなこと聞く暇あったらさっさと着る!」
「はいっ!」
俺、こいつより年上だよな……と思いつつ俺はTシャツを慌てて着た。
「おはようございます、小鳥遊さん」
俺が寮を出ると目の前にあの黒塗りのリムジンが止まっていた。中で鳥海が手を振りながら声をかけてきた。灼熱魔神こと遠藤の姿も見える。
「おはよ」
「申し訳ないけど、直で瘴気蛟の所には行かないよ。これから由ちゃん拾わないといけないから」
「りょーかい」
俺がシートベルトを締めるのを確認すると運転手はアクセルをかけ、車は出発した。
ーーー
「で、瘴気蛟のグループってどんな陣容なんだ?」
「わかってる情報だけだと所属しているプレイヤーは3人。そのうちの2人が地域の不良グループの首領やってたみたいで、真人間の連中もグループに入ってる。そっちの数は30から40ぐらい、でも鳥海さんの阿鼻叫喚があれば一瞬で無力化できるでしょう」
「……わかりました、全滅させるつもりでいきたいと思います」
「で、プレイヤーの能力は?」
「リーダーである瘴気蛟の能力は『腐敗戦慄』って名前らしい。自分の体から触れた物を劣化・液状化させる液体を出す能力のようだ」
「うわっ、なにそれ気持ち悪そうです……」
実際に想像したのか、鳥海の表情が一気に曇った。
「あとはわからん。ただプレイヤーの内容を見るとそこまで強力な初期能力は持って無いと思われる」
そう言って遠藤は手元に持っていたファイルをこちらに渡してきた。
「えーっと……大章魚と人喰神熊? なんだこのちんぷんかんぷんな名前……」
「調べてみたが、プレイヤーは全員北海道に伝わる伝説に関係している生物だった」
「……アイヌ語か」
北海道と沖縄、元々は外国であったこの2地域では独自の文化と共に言葉も形成されていた。その名残は方言や地名といった形で今も残されている。
「日本の妖怪とかも参加してるんだな」
「このゲームは世界中から選ばれた108体の魔物が戦い合うからね。そう有名な物じゃなくても実力さえあれば参加できるでしょう」
俺がふとつぶやくと田代が反応した。
「現に、今までスライムの因子を持っているやつなんてみたことないし」
「……お嬢、もうそろそろです」
運転手の男が田代に声をかける。すると俺と鳥海以外の3人の顔が一気に引き締まった。
「さぁ、一気に叩き潰すわよ」
ーーー
「……アニキ。なんかきましたよ」
「……来たか」
妖精猫のグループが俺たちを狙っているという噂は蛟のやつから聞いていた。報告してきた子分もそれを聞いていたからこそ、直に俺に報告しにきたんだろう。
「わかった。俺が時間を稼いでるから蛸と蛟と……あと先生を呼んで来い。
「わ、わかりました! でもアニキは……?」
「……俺がそう簡単にやられるヤツだと思うか?」
俺が子分のあごをなでると、子分は震え上がって弾かれたように部屋を出ていった。
「さぁて、いっちょやりますか……デ・コード、人喰神熊!」




