拍子抜けとデバイスと結合能力
あれから俺と鳥海は大広間のような、畳敷きの部屋に案内された。
明らかに俺と同じぐらいの年齢のスキンヘッドが「もうすぐ若頭が来ますから」と言って部屋を出ていってから、この部屋には正座状態の俺と鳥海しかいなかった。
鳥海が青い顔をしながら言った。
「こ、これがばれたら芸能界追放の目に……」
そうだよな、昔、暴力団の組長かなんかと食事行ってたとか何かで有名な芸人が引退に追い込まれたからな……ってオイ。
「今考えるのそれか? それよりも命の危険の方だろ」
「そ、そうですけど……そんなこと考えてないと気絶しそうで……」
その時、奥の襖が開き、萌黄色の着流しを着た、薄目の男が現れた。
部屋に緊張が走る。男は俺たちの向かいに座ると、頭を下げた。
「初めまして。私は田代 雄介という。茜がお世話になっているそうで」
「え、あ、はい」
初めて会ったの、今から約2時間ぐらい前なんですけど……とは口が裂けても言えない。
「色々気難しい子だが、どうか仲良くしてやって欲しい」
「あ、はい……」
何を言えばいいのか分からずただ頷いていると、田代氏はすっと立ち上がり、部屋から出て行った。
それから数分後。再びスキンヘッドが部屋を訪れた。
「帰りの準備が出来ましたから、すぐに移動してくれますか?」
え、まさかあれだけで終わり!?
思わずお互いの顔を見合わせる。鳥海のまばたきの数は自然と増えていた。俺もだけど。
ーーー
「早かったですね、父上」
私が広間でくつろいでいると、奥から父の姿が見えた。
「ああ。……2人もなかなかいい顔つきをしていた」
父はそう言うと横にある別のソファーに座った。すぐに相良がお茶を用意しにキッチンへ走る。
「しかし茜。2人とも非常に怖がっていたように見えたが、おまえ何かしたのか?」
「ん? 何もしてないけど……この雰囲気見れば誰だってビビるでしょう」
そう言って私は周りにいる仲間を指差した。中にはサラリーマン風情のヤツもいるが、相良をはじめとして、基本いかにもヤクザやってまーす、という見た目のヤツばっかりだ。
「それに女の子の方は一応アイドルだからねー」
「……暴対法か」
「そういうこと」
少しだけ言えば、すぐに察してくれるのが父のいい所の1つだ。私は再びカップに口をつけた。
「なら、長時間ここにいさせるのはかわいそうだな。……オイ、あの2人を帰してやれ」
「はいっ!」
ーーー
スキンヘッドの男に案内についていくと、先ほどの駐車場にたどり着いた。どうやらこの建物には駐車場に行くルートがいくつもあるようだ。
すぐに車が横づけされる。扉が開くとそこには田代娘ーー名前は茜だったか、そいつがいた。
「お疲れ様。あなた達の家まで、しっかり送らせてもらうわ」
田代はせかすように俺達を手招きした。
俺達が乗り込むと車はすぐに出発した。
そして駐車場を出るとゆっくりと速度を上げていった。すると田代が口を開いた。
「あんた達のデバイス勝手に見せてもらったけど、もう少しちゃんと戦わないと殺されるわよ?」
「「デバイス?」」
俺と鳥海の言葉がハモった。田代は呆れたような表情をみせた。
「もしかして、あなた達何も分からずにやってんの?」
「す、すみません……」
俺の横で小さくなっている鳥海が謝る。田代はため息をついて言った。
「あの変な機械のことよ。この間魔術師風情が送ってきた……」
「あ、あのゲーム機?」
「ゲーム機って……まぁ見た目はそっくりだけど……」
そう言いながら田代はカバンから2つーー俺と鳥海のデバイスを取り出した。
「はい。とりあえず、連絡モードに私と遠藤、由ちゃんのデータを登録しといたから」
手渡されたデバイスの「COMMUNICATE」を早速開くと、そこには「田代 茜/妖精猫」・「遠藤 政孝/灼熱魔神」・「大垣 由子/迷宮内牛」と3つの名前が加わっていた。田代は相変わらず、呆れた顔をしながら言った。
「こんなんじゃ、あの能力のことも知らなさそうね……」
「能力ですか?」
鳥海がすかさず「SKILL」を起動させながら言う。
「今の所、私には阿鼻叫喚と死霊思念と返り討ちがありますけど……」
「あなたの方じゃなくて、小鳥遊……だっけ? そっちの方よ」
「俺?」
すぐに俺も「SKILL」を起動させる。すると見覚えの無い欄が増えていた。
「何だこれ、『沈獣共鳴』?」
タッチしても、表示は「UNKNOWN」のみ。
「……もしかしてこれのことか?」
「……その通りよ。やっぱり結合能力のことも知らなかったか」
「「チェインスキル?」」
再び俺と鳥海の声がシンクロする。
「……特定の因子を獲得すると発動する特別な能力よ……」
「あ、その説明どっかで見た気がする」
確か、初めてデバイス(コレ)を起動させた時に見たような。
「そう。その説明に出てきたのが結合能力よ。大抵、結合能力は劣勢に立たされた状況でも簡単に逆転できるほどの威力を持ってることが多いの」
そう言うと、田代は真面目な顔になって言った。
「だから、私はあなた達を仲間に入れたいの」




