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強制連行とその経緯

「……信乃さん、どうしてこうなったんでしょうか……」

「……知るか」

 俺と鳥海は小さくなりながら窓にスモークがかかったリムジンの中にいた。目の前には灼熱魔神(イフリート)と名乗っていた男と迷宮内牛(ミノタウロス)と呼ばれた女、そしてもう1人制服を着た少女が座っている。

「…………」

「…………」

「…………」

 全員無言。リムジンの中は気まずい雰囲気で満ちていた。そんな中、鳥海が再び口を開いた。

「……あの、なんで私たち変身したままここにいるんでしょう……?」

「知るか……」

「ですよね……」


ーーー


 時は遡ること2時間前。黒コゲになって倒れている人狼(ヴェアヴォルフ)の横で人間の姿に戻った灼熱魔神は何かを待つようにウロウロしていた。

「エンさーん、見つかりましたよー」

 灼熱魔神に報告しながら、同じく人間の姿に戻っていた迷宮内牛が傷だらけの誘惑声鳥(セイレーン)を抱えながら、ファーストフード店から出てきた。

「やはり近くにいましたか」

 その姿を見て、灼熱魔神は満足そうにうなづいた。

「どうしますか、これ」

「んー、両方とも気絶してますしね。片方が見ている前でバリバリと捕食するっていうのも……」

「ちょっと待ちなさいよ」

 相談をしていた2人に声がかけられる。2人が声のした方を見ると、1人の少女が歩いて来ていた。その姿を見た灼熱魔神は嬉しそうな顔をして言った。

「あ、お嬢。お待ちしてました」

「あたしが来るまで待っとけ、って言ってたのに……また無視してくれたわね」

「すいません、戦わないと逃げそうだったんで」

 彼よりも確実に年下に見える少女に灼熱魔神はペコペコと謝っていた。ぱっと見異様な光景だが、彼らの世界ではこれが普通だった。

「で……これが倒したプレイヤー?」

 少女が路上に転がされた人狼と誘惑声鳥を怪訝そうに見る。

「メールには1体、って書いてあったけど」

「あ、見つけたプレイヤーを追いかけてたら、たまたま出くわしたんですよ。その代わり、最初見つけたプレイヤーは食べられちゃったんですけど」

「ふーん……」

 迷宮内牛の説明に納得したように少女はうなづいた。そして突然、傍に放置していた人狼と誘惑声鳥の荷物をあさり出した。少女の行動に灼熱魔神は驚いたように話しかけた。

「何やってんですかお嬢!?」

「いや、あれ(・・)を持ってないかなって……うん、あった」

 そう言った少女の手にはそれぞれ黒と水色に塗られたゲーム機のような物体が握られていた。

「……デバイス、ですか? どうして突然そんなものを」

「いや、使えそうな能力持ってたら配下に加えようかな、って」

「え? まだ増やすつもりなんですか?」

「だって、由ちゃん入っただけでずいぶん楽になったじゃない」

「それはそうですけど……」

「あのー、何話してるんですか?」

 迷宮内牛が不審そうに2人を覗き込んだ。それに対し少女は微笑しながら言った。

「ん? 使えそうだったらあの2人を仲間にしようか、って話をしてたの」

「あー、なるほど」

 迷宮内牛が納得したようにうなづいた。

「でも、能力がダメダメだったら使えませんよ? ……誘惑声鳥の方は強敵でしたけど」

「はぁ? そんなことないだろう」

 灼熱魔神が意外そうな顔をして言う。当然であろう、誘惑声鳥はボロボロなのに対し、迷宮内牛は無傷だからだ。

「いや、あの音声攻撃は脅威でした。たぶん、私の能力(スキル)が別の物だったら負けてました」

「……そこまで由ちゃんが言うなら本当そうね。で、もう片方のは?」

 すると灼熱魔神が言いにくそうに口を開いた。

「戦った自分としてはあまり戦力とは言えないと思います」

「え? そうなの?」

 今度は少女が意外そうな顔をした。

「こんなに見た目強そうなのに」

「残念ながら。おそらく人狼の能力は『相手の背後に回り込む』もの。よまれてしまえば、軽くかわされ、カウンターを食らう結果になるでしょう。……実際なったのですが」

「ふーん……。ま、誘惑声鳥は持ち帰るとして、人狼については能力を見てから決めますか」

 そう言って少女は黒いデバイスを起動させた。


「因子は4つ……あんまり戦ってないみたいね」

「そうなると、実戦経験が少ないから簡単によまれたのかもしれませんね」

「ん? そういうことは、大化けする可能性があると言いたいわけですか? 迷宮内牛」

「まぁ……そうですね。でも詳しい所は能力見てみないと……」

 そう言うと、迷宮内牛は「USER DETA」の画面を閉じ、「SKILL」の画面を開いた。

「『深夜強襲(ナイトメアアタック)』、やはりあの動きは能力によるものでしたか」

「あとは『返り討ち』と『人獣調伏』……ここら辺は王道のやつね」

「でも……最後のこれ何でしょう。『沈獣共鳴(ウラノスズフェイルド)』って書いてありますけど」

「確かに、今まで倒してきたやつの中に持ってるやつはいなかったわね……見てみるわよ」

 少女は横にいる2人に確認してその欄を開いた。


「沈獣共鳴」

 UNKNOWN


「「「あ、アンノウン?」」」

 「未知」という意味の英語が表示された画面に3人は目を丸くした。そしてしばしの沈黙の後、少女は何かを決めたように口を開いた。

「……こっちもキープしときますか」

 未知の能力を持つプレイヤー。ここで切るには惜しい。少女は頭の中で即座にそう判断したのだった。

「……そうですね。私もこの『沈獣共鳴』は気になりますから」

「私もキープに賛成です」

 2人がうなづいたのを見て、少女は灼熱魔神に向かって言った。

「遠藤、車、近くに停めてあるから、家までこいつら連れて行くわよ」

「了解しました」

 こうして信乃と鳥海は気絶している内に少女が乗ってきた車に放り込まれることとなる。

 そして目が覚め、自分達の置かれた状況を見て青ざめるのは、冒頭の通りである。

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