風の神様
長らくお待たせしてしまいました。
「今日は探索したくないなぁ。」
朝食を食べているときにぼそりと俺が呟いたのが聞こえたらしく、陽月が理由を聞いてくる。
「ん?なんでだ?ポーションとかは後で買いに行くぞ?」
それはわかってるっての。
「いや、そういうことじゃない、大地とかも探しておこうと思ってな。」
大地というのは俺のクラスメイト。フルネームは神代大地だ。まぁクラスの中心だったりする。このゲームを知っているらしいし、参加するとも言っていた。
「あぁ、そういうことか。じゃあ今日は自分の友人を探すのと個人で狩りにするか。怜ちゃんも友達が参加してたりするんだろう。」
確かそう言っていたな。2.3人くらいいたと言っていた。
「あ。そのこと忘れて今まで狩りに行ってたじゃん。」
おい。大事な友達との約束をドタキャンするなよ。
「名前がわかったら今すぐ1:1して行くてこい。」
「じゃあ私行ってくるね!」
おっと。もう先にしていたようだ。
「アマテラスは?」
「あはっ、あぁ、そんな人いないよ?」
少し笑って言う。恥ずかしいのか?まぁたぶんいるだろうし大丈夫か。
「さて、今日も一日頑張りますか!」
そう言い終わった時に俺は聞いていた「ダイチ」という本名そのままの名前を1:1チャットの欄に打ち込む。
「キリ」様が1:1チャットに参加しました。
「ダイチ」様が1:1チャットに参加しました。
「キリ」:なにしてる?霧亜だ。
「ダイチ」:お。久しぶりだな。
「キリ」:今どこまで攻略してる?
「ダイチ」:えーっと…鬼人族の草原だ。
「キリ」:すまん。そこどこか教えてくれ。
「ダイチ」:王都の東のダンジョンだ。
「キリ」:は?
「ダイチ」:あ、知らないのか。誰かは知らんが死者の洞窟…だっけ?そこをクリアしたからこのダンジョンが開かれたんだ。
「キリ」:へぇ…また今度行ってみるよ。で、本題に移ろう。フレンド登録したいからどこにいるか教えてくれるか?
「ダイチ」:了解だ。いま俺がいるのはさっきもいった鬼人族の草原の座標208.623だ。定点狩りしかできないくらいだし弱いぞ?
「キリ」:ボスとかと戦う時には人だって多いほうがいいだろ?あと凛花さんの居場所知ってるかもしれないし。
「ダイチ」:まぁそうだな。じゃあ来てくれ。
「キリ」:了解ー。今から走りまーす。
「ダイチ」様が1:1チャットを切断しました。
「キリ」様が1:1チャットを切断しました。
ちなみに凛花さんというのは大地の姉。さらに翔という兄もいる。この二人はかなりのゲーム狂で、怜と同じゲームをしたりするので怜とはかなり仲がいい。
「さーてと。探しに行くのも兼ねてアイテム拾いでもしますか。」
俺はいま、ろくに素材がない。採取すればいいものの、全く拾っていない。
「アクセル!」
加速して現在地の王都の宿から走って2.3分で平原に着く。
「お。発見!って薬草かよ…」
薬草 アイテムランクF
少しだけ回復できる。(HPの0.1割回復)
ゴミ決定。100消費したらHP全快は低い。
「さて。他にもないかな?って右にある」
上質な薬草 アイテムランク F
HPを0.5割回復。薬草十個を合成すると作成できる。分解した場合、薬草×3個を入手することができる。
はいゴミ決定。本当にありがとうございました~。えーっと。208.623だっけ?
「見つけたらでいいか。じゃあ出発~。」
1.2分ほど所々でゴブリンがポップするのを無視して走っていると、奥の方にある虹色の花が目に付いた。なんだ?あれ。取ってみるか。
俺はそこをめがけて一直線に走る。その花は、レアな素材だったようだ。
虹の花 アイテムランク S
HP、MP、状態異常を100%回復する。武器に使うと治癒の魔術が使えるようになる。
そのウィンドウが表示された瞬間、前に緊急クエスト発生!注意してください!という文字が赤色で出てくる。厄介なことに巻き込まれたっぽいな…
大して気にせずそのまま進むと、風景が同じに見えた。
「は?行けたいのにいけない」
そうつぶやくと周りにあった草や木をすべて消し飛ばし、空から竜巻を身に纏い、肩に生えた翼で飛ぶ少女が出てくる。
「お前は風神様の怒りに触れた!私についてこい!」
なんかテンプレだなー。まぁいいか。ついて行こう。
「この魔法陣に乗れ!」
言われるがままに魔法陣に乗る。すると、一瞬視界が暗転して、雲の上にある神殿のような場所に視界が移り、目の前にある玉座に堂々と座る50代くらいの男が横にあった矛を天に大きく掲げてから手に持ち、立ちあがる。
「お主はわが怒りに触れた!お前を引き裂いてやろう!」
なんか風神とかいう人短気だな。多分さっきの花を取ったことで怒ってるのか。
「お待ちください。この程度の若輩ならば私一人で十分です!」
少女は風神っぽい人を制止し、背中にかけてあった剣の切っ先を俺に向けて言い放つ。ちょっと怖い。
「分かった。お前ならば我の手を使わずともこ奴を葬ることができるであろう。任せたぞ。」
少女は剣を構えていつでも攻撃できる位置に着く。手に持っていた矛を横に立て、またもや玉座に座る。この状態で攻撃してみるか。
「うらぁ!なんてな!」
斬りかかると同時にナイフを取り出し、玉座へ投げる。狙ってなかったから注意をひくくらいのことしかできないだろう。と思っていると。そして後ろに下がって、玉座を見ると。ポリゴン粒子になって消えている男がそこにいた。
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