おまけ:宴会に行った人達のその後
今回は短くいきます
幕間みたいなものなので
同日、午後7時。ピンポーン、とマルトリッツ家の呼び鈴が鳴った。
「はい、どちらさまですか?」
応対するのは、ゲーム中だったライ。
『こんばんはー、春野といいますけど、お姉さんと妹さんを送ってきましたー』
モニターに出たのは、20歳くらいの女性だ。見れば、彼女の後ろにディートリンデとミュリエルがいる。
「ああ、そうですか、お手数をかけたようですみません、今出ます」
そう言って玄関に向かい、扉を開ける。
「お待たせしました、送っていただいてありがとうございます」
まず最初に礼を言う、そこはちゃんとしている。
「ただいまです、お兄ちゃん!
春野さん、ありがとうございました!」
「ううん、気にしないで、ディーちゃんにはよくお世話になってるから!」
春野と呼ばれた女性は、その直後に「……主に代返とか」と非常に小さな声で付け加えた。
「おかえり、ミュリエル。
……姉さんは……まさか、酒を?」
応えたライは、ミュリエルの背後で暗〜い雰囲気を全開にしているディートリンデを指して訊く。
「……はい。どうして呑んだのかは分からないんですけど……」
「ディーちゃんったら、変な上戸なんだよねぇ……いや、ある意味下戸?」
どうやら酔ってこうなっているらしい。暗いのは雰囲気だけでなく、呟いていることも暗い。書くこともはばかられるほどに自虐的なことを口走っている。
「俺だったら下戸だということにして絶対飲ませないようにしたいですがね……!
自虐上戸なんてとんでもない!」
と力説するライ。そんなに嫌な思い出があるのか。
「あはは、今回はあたしも見てなかったのが悪いし、勘弁してあげてね。ミュリエルちゃん可愛いから仕方ないかもだけど」
「……というか飲ませた人がどんな目に遭うかが心配なんですが。姉さん、すぐ酔うくせして記憶はハッキリしてますからね……」
春野の言葉は半分スルーしたライ。心の中で十字を切ったりしている。
「……まぁ多分大丈夫だよ、やりすぎはないはずだから。それじゃ、ここで失礼させてもらうよ」
「はい、重ね重ね、ありがとうございます。春野さんも夜道にはお気をつけて」
「うん、ありがと。よくできた弟だこと」
軽い感じで春野は帰っていった。
「さて。とりあえず姉さんを部屋まで……いや、ソファくらいにまでは移動させるか」
「あ、わたしもお手伝いします」
「……よし、布団もかけたし、風邪はひかんだろ」
「いつの間にか、すっかり眠っちゃってますね……」
ソファの上には、ディートリンデが寝かされている。普段からは到底想像もつかない姿だ。
「さて、俺達もそろそろ寝るか……ん?」
踵を返したライだったが、小さな声に反応して振り返る。
「……ライ……ミュリエル……お姉ちゃんが、ずっと守ってあげるからね……」
それは、ディートリンデの寝言だった。普段は堅い男口調なので分かりにくいが、実は声そのものは結構可愛げがあるのだ。
ライとミュリエルは、キョトンとした顔で向き合った後、小さく笑った。
「……なんだな、こういうのが見れるなら、たまには酒飲ませるのもいいかもな」
「ふふっ、聞かれてても知りませんよ?
でも、わたしも同じ気持ちです」
軽口を言いながら、二人も各々の部屋に戻ったのだった。
次からどうするか、要望などあればどうぞ!