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迂闊な行動の後始末 完結編

「ミュリエル、話がある……」


「はい、何ですか、お兄ちゃん?」


 帰宅したライは、早速ミュリエルを呼びつけた。


「あまり優華を刺激するようなことは言わんでくれ、頼むから」


「え?……ああ、朝のことですね!

だって、嬉しかったんです……あんなにぎゅっと抱きしめてくれるなんて、久しぶりでしたから……はう〜……」


 思い出して、うっとりとした表情になるミュリエル。あまり話を聞いているようには見えない。


「嬉しかったことを誰かに言いたい気持ちは分かる。だが優華にはあまり言わないでほしい。今日、それでとんでもないこと言われたからな……」


「ほう?どんなことだ?」


 いつの間にかディートリンデが入ってきた。


「姉さん……野次馬かよ……。まぁいいが。

『抱いて』だの『寝て』だのとな……」


「……優華も大胆になったものだな……」


「いや、多分言葉通りの意味でしか使っていなかっただろう。今頃、自分が何言ったか思い出して真っ赤になってるんじゃないか?」





「……はくしょんっ!うう〜……いきなりのくしゃみだよ〜……。

ていうか今朝の私、とんでもないこと言ってたなぁ……いくら抱っこしてもらったミュリエルちゃんが羨ましかったからって、アレはないよね……。

うわぁ、今思い出しても恥ずかしい……!ライ君に痴女だとか思われてないことを祈るしかないよぉ〜……」





「……ライ、今、何故だかお前の推測が的中しているような気がしたのだが」


「奇遇だな姉さん、俺もだ」


「…………?」


 半テレパシー的な何かが発動したようだ。幸いにもミュリエルは除いて。


「まぁ、後で電話でもしてやるがよかろう。ああ見えて優華は……」


「意外と繊細な部分が無きにしも非ず、だろ。言われなくてもするさ、俺としても、あいつが元気でないと拍子抜けするしな」





 風呂も済ませ、夜になった頃、ライは携帯電話で優華に電話をした。

 呼び出し音が鳴ると、どこからともなく「わっ!?」と驚いた声が聞こえたが、それは無視する。そして数秒後に繋がった。


『なんだぁ、ライ君かぁ……』


「優華、お前、丁度電話しようとしてたろ?」


『えっ、なんで分かったの!?もしかしてエスパー!?』


 どうやら自分の声が聞こえてないと思っているようだ。ツッコミをしようとしたライだったが、それはやめてリアクションをした。


「……まぁ、そうとでも考えて構わん」


『わぁ、以心伝心ってやつ?いいねー!』


 果たして、ライの思惑通りに優華は喜んだようだ。そこんとこの空気の読み方は絶妙なライだった。


『それはそうと……あのね、今朝は……ごめんね』


「やはりその事か。気にするな、お前のことはよく知ってる、別にいかがわしい意味で言ったんじゃないんだろ?」


『うん、そうだけど、迷惑かけちゃったのは変わらないから、やっぱりごめん!』


「分かった分かった、それについても怒ってないから!」


 応えつつ、ライは思う。


(普段はおちゃらけてるくせして、やりすぎた悪戯とか自分に落ち度のあることはちゃんと謝るんだから、こっちとしても強く言えないのが、ちと辛いな……)


 そんな想いを知ってか知らずか、優華はあっけらかんと言う。


『えへへ、ライ君、ちゃんと心込めて謝れば許してくれるから、優しいよねー!それじゃ、私もう寝るから。いつかは私も抱っこしてね!』


「……アホか」


 心底呆れたような顔をするライ。声だけで表情まで分かるに違いない。


『なんだよう、ケチー!

それじゃ、おやすみ!

……好きだよ、ライ君』


「へいへい、おやすみ」


 『好き』は言われ慣れているからか軽く流した。

 そうして、色々と波乱万丈の1日が過ぎていった。明日からもまた騒がしいことだろう。


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