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転校生さん、貴女の家はどちらで?……そこかッ!

「ところで。月夜宮さんはどこまで一緒なんだ?」


 ライが言う。あと百mも歩けば家だという所だが、まだ奈々枝は彼らと同行している。


「そうですね……突き当たりまで行ったら左、なんですが」


「……え?奈々枝ちゃん、それって……」


「行ってみれば分かる。今は不吉な事を言うのはよそう、優華」


 やや青ざめかけた顔でライが言う。

 そして左に曲がり、少し進んだ所で、ライと優華はぴたりと止まった。


「お二方とも、どうかなさいましたか?」


「「俺(私)の家、ここなんで……」」


 向かい合わせに建つ家、それぞれが彼らの家だというのを聞いた奈々枝は、


「あら、本当に奇遇ですね。私は、こっちなんですよ」


 と言いつつ、ライの家の隣を指差した。


「奇遇にも程があるわ!

確かに前に引っ越し業者来てたが、だからってここか!

ドッキリか?ドッキリなのか!?」


 渾身の力を込めたようにも感じられる、強烈なツッコミ。言い終えた後には息継ぎするほどだった。


「そ、そんなに怒鳴らなくても……」


「……悪かった。だが、さすがに驚いたな……」


 頭を掻きつつ謝るライだが、まだショックは抜けきらないらしい。


(これがクラスの皆に……特に城二の奴に知られたら大変なことになるな。うっかり口を滑らせないように気をつけねば)


 と、そこにディートリンデがやって来た。


「おお、ライ、帰ったか。……そちらの見慣れぬ人は?」


「ただいま、姉さん。今日転校してきた月夜宮 奈々枝さんだ」


「よろしくお願いします、えっと……」


「ディートリンデだ」


「あ、ありがとうございます」


 高身長はライで慣れたのか、大人と子供ほどの差―――いや、年齢的にもそれでいいのかもしれないが―――があっても物怖じすることなく挨拶する奈々枝。

 そんな彼女に、優華は驚いたようだ。


「おー、初対面でディー姉に驚かないで挨拶できるなんて、奈々枝ちゃんすごー……」


「それは私に失礼な物言いだぞ、優華」


「あ、ごめんなさーい」


 軽く小突かれ、ちろっと舌を出しながら謝る優華。よくある風景なのか、ライが何かを言うでもなかった。

 そこで、ディートリンデが思い出したように言う。


「しかし……月夜宮……月夜宮……最近聞いたことがあるような……」


「そうなのか、姉さん?

別にテレビでやってたわけでもないと思うが」


「私も、同じ苗字の芸能人とか聞いたことないなー」


 三人揃って、「うーん……」と唸りながら考え込む。そして、気づくのは言い出しっぺのディートリンデだった。


「そうだ!昨日新しく就任した講師の姓が月夜宮だった!」


「……姉さんの大学の話か……」


「私とライ君、悩み損じゃないのー」


「いやはや、面目ない」


 からからと笑いながら言うディートリンデの顔は、やたらと晴れ晴れしていた。胸のつかえが取れたというのはこのことだろう。


「そうですね、月夜宮つきよのみや 大悟だいごは私の父です。私が引っ越してきたのも、お父さんがこの近くに就職できたからなんですよ」


 奈々枝がディートリンデの話を補足した。すると彼女は大きく頷きながら言う。


「成程々々、では、ある意味で我々は家族ぐるみの付き合いということになるかもしれぬな。月夜宮先生は、私の受ける講義の講師となるのだから」


 本当にある意味でだ。片やクラスメート同士、片や教師と生徒。これで、ミュリエルやライ達の両親が関わってきたら完全に家族ぐるみとなる。


「ねー、私も一緒でいいでしょー?」


 そこで優華がライに駄々をこねるが、


「いや、とっくに俺とお前は家族ぐるみの付き合いになってるだろう」


 と、あっさり返された。


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