森の異変
数日後・森の異変ー。
森の奥は、初夏の光が葉に遮られて薄暗かった。
鳥の声も少ない。
「静かすぎるな」
リュシアンが言う。
「嫌な感じ……」
レオも珍しく声を潜める。
セリスが周囲を見回す。
「魔力の濃度が高いです」
その時、茂みが揺れた。
現れたのは、魔力で変異した獣。
通常よりも大きく、目が濁っている。
ヴァルが前に出る。
「任せろ」
「待て」
ルカが言う。
だがすでに戦闘は始まっていた。
連携で撃退するが、
すぐに次の個体が現れる。
そして、さらに奥から気配。
セリスの顔色が変わる。
「数が……多い」
ヴァルが笑う。
「ならまとめて片付ける」
「撤退だ」
ルカが言った。
一瞬、全員が止まる。
「……は?」
ヴァルが振り返る。
「原因は奥だ。ここは前線じゃない。
無理に進めば囲まれる」
「でも――」
「目的は討伐じゃない。調査だ」
その声は穏やかだが、揺るがなかった。
リュシアンがすぐに理解する。
「撤退します」
レオも頷く。
「りょーかい!」
セリスも続く。
ヴァルだけが動かない。
「逃げるのか?」
ルカは少しだけ目を細めた。
「生きて帰るのも仕事だ」
沈黙。
やがてヴァルは舌打ちして背を向けた。
「……了解」
⸻
森を抜けた後。
レオが大きく息を吐いた。
「こわかったー!」
リュシアンが冷静に言う。
「正しい判断でした」
セリスも静かに頷く。
「危険でした」
ヴァルは黙ったまま歩いていた。
ルカが横に並ぶ。
「不満か?」
「……別に」
少し間を置いて。
「でも、お前なら勝てた」
ルカは笑った。
「かもしれない。でも誰かが死ぬ可能性もあった」
ヴァルは答えない。
「それが一番嫌なんだ」
ヴァルはその言葉に、わずかに目を伏せた。
⸻
こうして、
森の異変の長期調査が決まり、
彼らはベルノアに滞在することになる。
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