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帰る場所

その夜。

ベルノアの常宿、花うさぎ亭の食堂は、いつもより賑わっていた。


草原から戻ったばかりの冒険者や狩人たちが、木の長机を囲んで酒を酌み交わしている。

肉の焼ける香ばしい匂いと、ハーブの爽やかな香りが混ざり、空気そのものが温かい。


レオは椅子に座るなり、鼻をひくつかせた。


「いい匂い!!」


「落ち着け」

リュシアンが呆れたように言うが、自分もどこか期待した顔をしている。


奥の厨房から店主のザンブルが現れ、どん、と皿を並べた。


分厚く焼き上げられたバッファボアのステーキ。

表面はこんがりと焼き色がつき、肉汁が光っている。

その上には、濃い琥珀色のソースがとろりとかかっていた。


隣には、ラゼルベリーが散らされたリーフサラダ。

初夏らしい瑞々しい彩り。


「うわぁ……」

セリスの声が思わず漏れる。


「今日はこれだ」

ザンブルが腕を組む。


「この町じゃ一番うまいぞ」


レオが一口食べた瞬間、目を見開いた。


「……うっま!!」


「騒ぐな」

と言いながら、ルカもフォークを入れる。


肉は柔らかく、噛むほどに濃い旨味が広がる。

ソースは甘みと酸味、そして少しだけスパイスの香り。


「これ、何のソースですか?」

セリスが興味津々で尋ねる。


ザンブルは鼻で笑った。


「企業秘密だ」


「えぇー!教えてくださいよー!」

レオが身を乗り出す。


「断る」


ザンブルの妻・ツムギが、その横でくすくすと笑っている。

小柄で柔らかな雰囲気は、どこか妖精のようだった。


「香草はグランシア草も使っているんですよ」


「おい」

ザンブルが軽く睨む。


「全部は言ってませんよ?」

ツムギはのんびりと首を傾げた。


セリスはサラダを口に運び、少し驚いたように目を瞬かせる。


「ラゼルベリー……甘すぎなくて、爽やかですね」


ヴァルがちらりと彼女を見る。


「……好きか?」


「はい。とても」


ヴァルは何も言わず、自分の皿に視線を戻した。


ルカはそれを横目で見て、わずかに口元を上げる。


「若いねぇ」


「何がだ」

ヴァルが睨む。


「いや別に」


レオが不思議そうに二人を見比べた。


「?」


食堂には笑い声が満ちていた。

長い野営のあと、久しぶりに屋根の下で過ごす夜。


温かな灯りの中、

笑い声が長机を満たしていた。


花うさぎ亭は、いつの間にか

彼らにとって「帰る場所」になりつつあった。

読んでいただきありがとうございました。評価いただけると励みになります。

毎週金曜日21時頃更新予定です。

よろしくお願いいたします。

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