アジ
給食の時間…
儚くない系女子の菜美華さんは、給食を最近残すようになった。
てか、なんか…皿の上で仕分けしてるっぽい?
「もしかして、好き嫌い?」
「え?花占い始まった?」
「ううん、そうじゃなくて菜美華さんって、最近給食残すなって。」
「あー…それがさ、この前いきなりアレルギー反応でちゃって、色々調べたら鶏肉とにんじんとジャガイモに光物と甲殻類とりんごとキウイと大豆製品の納豆枝豆豆腐に味噌汁醤油もやしなんかとか諸々アレルギー反応でてさ…怖くなっちゃって。一応薬は、あるよ?でもなんかね…」
…
「え…ほとんどオレが毎日食べてるやつ…」
めっちゃ儚い系女子やん…
「それって…ほとんどだよね?食べるものなくない?」
「うーん…そうなの。でも、少しは食べてるかな。ほんとは、食べない方がいいっぽいけどね…」
「だよね…食べるものなくなるよね。」
「そうなの、わたしポテチ好きだし唐揚げも好きなのに…」
かわいそうだ。
食べ物の制限が多すぎて、オレならパニックだ。
醤油だけは、勘弁してほしい…
「オレが君を守る‼︎」
…
「え?キミって…もうないじゃない」
ない?
あんたは、対象外?
あんたなんてナイナイってこと?
オレの給食の目玉焼きのしろみを覗き込む菜美華さん。
「もしかして、、目玉焼きのこと言ってる…?」
「うん、卵アレルギーはないからって、遼河くんの卵狙ったりしないよ?」
目玉焼きの黄身を、一番最初に食べたけどさ…
てか、その黄身じゃなかったんですが…
…
黄身を守るって、なに⁉︎
あんたに奪われないように、黄身は守る‼︎とかってさ…
オレ、食い意地半端ねーみたいじゃんか…
「あ、守るって…そういうことじゃないんだ。ただ…あの…いえ、なんでもない…です」
…
卵告白とか…なんか流れが嫌だ。
てかさ、アレルギーからオレが菜美華さんを、どうやって守るってんだよ…
そんな簡単なことじゃないんだ。
菜美華さんは、とても苦しいだろうな…
食べたいもん制限されて…
ほんとに守ってあげたくなってきた。
そんな儚い系女子の菜美華さんは、学校のバッグに色々なキーフォルダーをぶら下げている。
あの細長いぬいぐるみみたいなものは、なんだろうと、菜美華さんがバッグを机に置いた時に、じっと見てみた。
すると魚⁉︎
しかもアジって魚にかいてあった。
魚…
「そのキーフォルダーって…」
「え?ひよこ?それともこの魚?怪物?」
…
めっちゃぶら下がってるけど…
そもそも怪物がひよこと魚抱きしめてるけど…
てか、怪物の長い手にペリペリがついてるから、抱き抱えられんのか…
てか、
「魚…なんで魚?好きなの?」
「ううん、アレルギーだから食べれない。でもかわいいでしょ?友達とおそろなの」
と、笑顔でこたえてくれる菜美華さん。
あー、なるほど。
女子の間では、これがかわいいのか…
…
てか、おそろなことにびっくりだ。
「なるほどねー…、かわいい…」
「えっ?わたし?ありがとー」
⁉︎
それは…違う…キーフォルダーを…
ん?
いや待て…
たしかに菜美華さんは、かわいいけど…
でも、これって…訂正しない方いいの?
本人は、わざと言ってるの?
…
わからない。
まぁ、でもいっか!
どっちもかわいいもんな。
かわいい…
かわいすぎる…菜美華さん。
これはもう……気づいてしまった。
いや、ずっと気づいていた。
実は、オレは菜美華さんが好きだってこと。
「オレ、好きだなぁ」
「アジ?じゃあ、今夜アジフライにしてっておかあさんに連絡した方がいいね!じゃ」
と、オレの夜ご飯の心配をしてくださった菜美華さん。
…
危なかったぜ。
心の声だだ漏れやんけ…
なんとか気づかれずに、独り言告白は過ぎ去った。
そんな数日後、いきなり菜美華さんがオレに、かわいい包み紙をくれた。
ただの紙じゃないっぽい…ぞ?
なんかこの紙に、包まってるっぽい?
「え?なんか入ってる?あけてもいい?」
「うん、いいよ!」
ニコニコする菜美華さんの隣でオレは、かわいい包み紙をガサガサあけた。
⁉︎
アジ⁉︎
「え?これって…」
「欲しそうだったから、あげるね!この前消しゴムパクりそうになったし、そのお詫び」
…
わざわざそんな…
てか…オレ欲しそうだった…んだ?
自分が自分をよくわからない…です。
ん?
自分自身が自分をよくわからない?自分が自分じゃない?
え?
なになに?
自画自賛?
いや、違う…
もう…わからないが、きっと菜美華さんには、オレがアジを欲しそうに見えたのだから、それでいい。
てか〜、このアジめっちゃ肌触りがいい‼︎
家だったら、がっつり頬擦りしてたこと間違いない‼︎
「ありがとう菜美華さん。」
「ううん」
無邪気に微笑む菜美華さんに、なにかお礼がしたいなぁ。
なにしたら喜んでくれるんだろう?
続く。