独り言が…
隣の席の女子からの、予想外の遊びの誘いからの人違いのせいで、オレは今消しゴムを必死に探しています。
しかし、消しゴムは見つからず…仕方なく席につきました。
「床にはいつくばって自主練?えらいね」
って菜美華さんは、褒めてくださった。
…
床にはいつくばる自主練ってどんなだよ?
「いや、そうじゃなくて消しゴムがどっかいっちゃってさ」
…
ハッとした顔の菜美華さんは、突然自分の筆箱を漁りだした。
「もしかして、さっき無意識に消しゴム入れたかも」
と、オレの消しゴムを魔法使いのようにだしてきた。
「あった!ごめん‼︎」
って両手でオレを拝んでくる菜美華さん。
いや、オレは神さまじゃないから拝まないでくださいよ…ってさ、そもそも菜美華さんこそ…コミリョクの大魔神さまやん。
そんな神さまに拝まれる一般人おります?
申し訳なく、オレも拝み返した。
「いや、遼河くんは謝らなくても…」
「あ、そうだね」
「うん」
…
⁉︎
今、菜美華さんオレのこと遼河くんって言いましたね⁉︎
オレは、何を隠そう遼河 リョウだ。
りょうがりょうって…
いいんです!
オレは遼河って苗字もリョウって名前も気に入ってるし。
てか、別に隠してもないし…と言いますか、なぜオレは苗字で呼ばれているのに、オレはお隣さんを馴れ馴れしく、菜美華さんと下の名前で呼んでいるのでしょうか?
そもそも担任が、菜美華さんって呼んでたよね?
お友達も菜美華ーって呼んでたよ?
だからだよ‼︎
オレの脳みそが便乗して、インプットしたから、そう呼んでいるのか。
…
でも、いまさら苗字呼びってのもね?
そもそも苗字は、なんだよ?
なんでもよくね?
下の名前で呼ばないでって指摘されるまで、いいよね?
ね?
いきなりビンタとかないでしょう?
さすがにさ。
あー、それにしても幸せ行きの船乗りてーなー。どこにあんだろ?
幸せの森に幸せのスーパー、幸せの詰め放題。
…
「わたしも乗りたい」
⁉︎
独り言妄想が漏れていた…
「あ、そうだよね。でも切符ってどこにあるんだろうね?」
慌てて普通に話を繋げた。
「職員室じゃない?」
…
「え、マジか…でもどこから乗るんだろうね?」
「そりゃ、正門でしょ」
…
「あ、めっちゃ近くにそんなパラダイスが…でも水ないから船進まない…んじゃ」
「空飛ぶ船でしょ?だから大丈夫だよ」
「あー‼︎」
「ねー‼︎」
「じゃあ、放課後職員室に…」
「ムリだよ」
…
くいぎみのムリ…
「なんで…」
「だって、そもそも職員室が空の上にあるから」
空の上の職員室…
「てことは…空にいる人しか切符が買えない…?」
「正解‼︎」
なぜかオレの独り言が、クイズみたいになり、主導権を菜美華さんが握っていた。
そもそも、空の上の職員室ってなーんだ?
なぞなぞだよ?
答えわかるかな?
オレは…わかんねーよ。
でも、楽しかったからよしとしよう‼︎
そんなオレたちのクラスが、急遽席替えというお引っ越しを開催するそうだ。
あーあー…、せっかく菜美華さんとの生活を存分に過ごしていたというのに…
まことに残念‼︎
儚くない系女子とのお別れ…
辛い…
正直辛いって‼︎
でも、席替えというなの儀式は容赦なくやってくる。
そして、儀式が始まった。
一人一人、クジをひいていく。
ニコニコする人や、落ち込む人。
きっと落ち込んでいる人は、一番前なんじゃないかな…。
かわいそうに。
しかし、オレは一番前ではなかった。
「よし、じゃあみんな机持って移動開始ー」
と、先生の号令に合わせて大移動が始まった。
さようならと目で菜美華さんに訴える。
それに応えるように…菜美華さんは…
菜美華さんが、ポロッと涙をこぼしたぁ⁉︎
えっ⁉︎
これは…
「待って‼︎」
オレは、か細い菜美華さんの腕を掴んだ。
「泣かないで。オレも…」
「え、やっぱり涙出てた?コンタクトの調子悪くてさ。遼河くんもコンタクトなんだね」
「あー…まぁ」
…
「ちょっとー、前のお二人さーん?早くお引越ししてくださーい」
後ろから迫り来る机と持ち主…
「あ、すみません…」
と、二人同時に前に進んだ。
そしてヨッコラセと机を置いた。
「またお隣だね」
にっこり微笑む菜美華さん。
…
「あぁ、ほんとだー」
黒板をみて、改めてびっくりした。
オレたち、ひとます進んだだけ…
サイコロのいちを出した気分やん…
でも、隣でよかった〜。
席替えの次は、係決めだ。
「そ…それはダメだって‼︎」
ガクン
パッ
目が覚めた
いつのまにか寝ていたっぽい…
席替えでエネルギーを使い果たしてしまったっぽい。
「ダメ?」
なぜか菜美華さんが困った顔をしていた。
「あれ…今って…」
「係決めだよ?わたし…国語係ダメかな?」
…
「ううん、ダメじゃないよ‼︎早く手あげな‼︎はいって‼︎ほら、オレみたいにピーンってあげないと‼︎」
「ほら、」
「「はいっ」」
小さく手を挙げる菜美華さんに、手を挙げることを伝授してあげた。
「よーし、なら国語係は菜美華さんと遼河くんですねー」
…
え…
オレは…その…
…
国語きらいなのにーー‼︎
きらいな国語係に任命いたしました。
続く。