儚そうで儚くなかった⁉︎
夜の春…
いや、春の夜…
ん?
夜よりの春?
いや、夜な夜な春?
春より夜寄り?
え?
もう、意味がわからない。
これじゃあ、明日の国語の提出に間に合わない。
まず春か夜どっちかに絞ろう!
絞って絞って…
いや、これ絞っていいん?
絞りすぎて、いつのまにか寝落ちして朝になっていた。
搾りたての朝…
いや、もういい‼︎
考えなくてもいいんだ‼︎脳みそくんよ‼︎
昨日、脳みそくんを過労死直前に追いやった国語の先生を呪ってやる。
…
いや、そんな物騒なことはいけませぬ!と、過労死から回避したばかりの脳みそくんが言った。
脳みそくんっていうか、オレ?
やっぱりオレって優しいなぁ。
自分の優しさにほっこりしながら、熱々のカリカリトーストをかじった。
正確には、カリカリというかコゲコゲだ。
「母ちゃん…パン焦げてんぞ?」
「あら?たしかに」
と、微妙にしらばっくれる母ちゃん。
知っててわざと、焦げ焦げの上にバターのせたよね?
バターが溶けてバレてんよ?
確信犯やんけ…
証拠隠滅ならず‼︎
「残念でしたー」
「ほんとでーす」
…
母ちゃん…オレは証拠隠滅ならなくて残念って言ったんよ?
焦げたパンで残念でしたーじゃないんよ?
ほんとでーすってなんなん?
もう、いいや。
これはこれで、香ばしくていい。
すんなり焦げを受け入れる優しいオレ。
もうさ、今朝は優しさに包まれてるやん。
リョウくんは、優しさでできています。
…
キモいわ。
自分でくん呼びとか、ヤバいですね。
早速、全身キモさに覆われてたオレは、学校へ行くために、一歩…そしてまた一歩…イチニ、イチニ、と走りだした。
だって、遅刻寸前なんです…
カリカリを堪能し過ぎて、心がカリカリしてございます。
はぁはぁと、息を荒めて学校へ到着‼︎
ってさ、ここは母校の小学校やんけ‼︎
バカやん‼︎
脳みそ小学校に戻っとるやんけ‼︎
慌てて、隣の中学校へ急いだ。
隣でよかったっす。
無事間に合った。
で、一時間目…
国語
少し先生を睨みつつ、ノートをひらいた。
昨日のウラミ…ココではらすべく…
ノートには、グニャグニャの文字で
しぼりぼり
ボリボリボリボ
しぼりぼり
と書かれてあった…
脳みそからのダイニングメッセージ…ですね。
きっと…
季語がない…
「ねぇ、昨日の宿題できた?」
姿勢が良く、色白のキュルルンなおめめの、かわいい儚い系女子がオレに話しかけてきた。
この儚い系女子は、見た目に反してバレー部のキャプテン。
スパイクがめっちゃ強いらしい。
スパイクとは、ボールを強くうつ?みたいなやつだと、友達から教わった。
だから、絶対隣の席の女子を怒らせるなと。
たぶんビンタ力がヤバいぞと。
ビンタされて、むち打ちになるかもしれない。と…
そんな怒らせることも、ないだろうよ?
たぶん…
きっと…
交際とかしなければね?
あ、浮気とかさ…
そもそも、こんな美人さんとオレが交際できるわけもないだろう。
そんな隣の席の女子は、友達も盛りだくさんのコミリョクの大魔神さまだ。
「あー……宿題できたつもりで、できなかった」
「ま、宿題来週までだし大丈夫じゃない?なんとかなるっしょ」
と、涙袋をぷっくりさせてにっこり笑顔の菜美華さん。
それに対し、オレは…ほうれい線がっつりの死んだ目アンド目じりシワシワじじい返しをした。
うるツヤ女子対寝不足ジジイの対決
うるツヤ女子の勝利です‼︎
って、遊んでるから提出日…間違えるんだろうなぁ。
国語の時間は、オレにとったら酷誤な時間だ。
そんな魔の時間を乗り越えて、休み時間とりあえず暇だったので、一人消しゴム落としをしてございました。
すると、隣の席の菜美華さんが
「明日遊ばない?」
って言ってきたんです⁉︎
えっ?
「明日⁉︎」
びっくりするオレをみて、菜美華さんも驚いた顔をした。
で…
「あ、前の席の友達と間違えた。似てたからつい…ごめん」
と、両手を合わせて拝まれた。
…
びっくりするやんけ‼︎
てかさ、前の席の友達って女子やんけ⁉︎
オレ…似てる?
あの人、ポニーテールじゃん?
オレ…けっこう短髪なんですけど?
どうしたら似てるの?
前の席の女子は、休み時間消しゴム落としよくやるんかな?
なら一緒に…って、ならんわ。
菜美華さんは、前の席の女子に
「明日消しゴム買いに行かない?」
って誘っていた。
あ、オレは女子に似てるんじゃなくて消しゴムに似てたんだ?ってこと⁉︎
それもなんかやだな…
なら…ねぇ、消しゴム?ってオレのこと、呼ぶよね?
ん?
もう、どうでもいいけど、さっきいきなり遊びに誘われたもんだから、びっくりして消しゴムどっかにぶん投げちゃったじゃん。
休み時間は、迷子の消しゴム探しに没頭いたしました。
まったく…
どんな間違いなんだよ…
続く。