悪魔③
男悪魔を討伐した六花。いまだ急に現れた六花に疑心を抱き困惑中のリリィだったがアエラの登場で察する。
「ふん……なるほどな。俺を殺しに来たか……」
弱っている悪魔がいて目の前には天使がいる。リリィの常識としてそう考えてもおかしくないがもちろんそれは勘違いである。
「殺すつもりならさっきの悪魔と一緒に殺してるよ」
「ああ?なに馬鹿なこと言ってんだ?お前が何者かは知らねえがそこの天使がいる限りお前は天使側だろ?」
そう指摘されたアエラは目の前にいるリリィに対して天使の武器である槍を召喚してそれをリリィに突きつける。
「ちょっとアエラ?」
「……殺せよ……それがてめえらの使命なんだろ?」
「リリィも黙ってて! アエラ……ここは私を信じてくれないかな?そもそもどうして2人の悪魔が地球で戦っていたのかも気になるでしょ?アエラも不思議がってたじゃん」
リリィの前に出てアエラからリリィを守ろうとする六花。それには守られている側のリリィも意味が分からないと言った表情。
「てめえはマジでなにがしてえんだよ?」
「それは後で話すから……とりあえず家くる?」
「「は?」」
天使と悪魔という犬猿の仲の2人が初めて心を1つにした瞬間だった。
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行きよりもゆっくりした速度で帰宅。ちなみにリリィは縛られた状態で連行されてきた。
『これが最大限に譲歩した結果です』
とのこと。ちなみにリリィを縛っているのは悪魔の力を削ぐ縄。悪魔には天使に創造する力があるのに反対して破壊する力がある。その力を弱めるのが目的。本来の用途は戦闘中に巻き付けて威力を低下させたり不発に終わらせたりすること。ゆえに力の差があれば別だがそこまでの長時間の拘束力はない。
「到着!リリィ!ようこそ我が家へ!」
「……」
「……」
揃って黙っているアエラとリリィ。両者ともに不機嫌な様子。しかし六花はそれについてはとくに気にせずにリリィを家に上げる。リビングに行き床に座って改めてリリィの話を聞く態勢に。
「で?俺をここに連れてきてどんな拷問をするつもりだ?」
「拷問?」
どうやらリリィは家に連れてこられることに対して拷問をするためと判断したようだ。しかしそれにアエラは怒り心頭。
「我々天使を侮辱するな!!我々は女神ティエラ様に仕える清く正しい存在!!そのような下劣な行為はしない!!」
「けっ……自分で清く正しいとか笑えるぜ……」
「貴様!?」
やはり天使と悪魔は犬猿の仲のようでリリィの言葉にアエラはさらに沸点を挙げた。
「お、落ち着いてアエラ!?そんな怒ってるところ見たことないよ!?」
悪魔が相手ということで沸点が低くなっているアエラ。ここまで声を荒げて怒っているアエラを六花は初めて見た。
「(私がサボっていた時でもここまで声を荒げたりしてなかったのに……これが悪魔と天使の関係ってことか……)」
とりあえずアエラがこの調子ではリリィと話ができないので六花はアエラをリビングの端っこに向かわせることに。本当はアエラの私室など別の部屋に行ってもらおうと考えたがそれは"悪魔がなにをするかわからない"ということで断固拒否。
「そ、それじゃあ話を聞きたいんだけど……」
「へっ……」
質問しようとする六花に話す気のなさそうなリリィ。アエラとリリィとしては先ほどの悪魔同士での戦闘理由を当然聞かれるものと思っていたが六花の思考は斜め上をいっていた。
「悪魔ってどんなところに住んでんの?」
まさか悪魔の住まいについて問うた。それにはリリィもアエラも意味が分からないといった表情。
「……さっきの戦いを聞きたいんじゃねえのかよ?……」
「こんな奴と意見が一致することは不愉快ですが私も同じ意見です。今はふざける時ではありません」
そう言ってアエラから軽い説教を受ける六花。それに頬を膨らませ反抗する六花。
「別にふざけてないもーん。だって私は悪魔がいることをさっき知ったばかりだから何も知らないんだもん。気になるじゃん?」
「そうかもしれませんが……」
「……変な奴……」
リリィの中で天使を従わせ将軍悪魔をいともたやすく討伐する得体のしれない存在から、理解ができない変な奴に格上げ?された。
「……魔界なんてのはなにもない退屈な場所だよ……あるのは荒れた大地と岩山だけ……娯楽は闘技場のみ。殺伐としていて第一階級【悪魔卿】の俺でさえ毎日のように命を狙われる……そんな退屈な場所だよ……」
「うへえ~。娯楽が闘技場だけって……ゲームもないの?それだったら私は無理かな~」
「だからこそ地球に行く悪魔が後を絶たねえんだろうな。あそことは違ってここは娯楽で溢れてっからな」
そう言ってリリィは周囲を簡単に見回す。それはどこか羨ましそうに。するとその言葉を聞いてアエラが立ち上がり近づいてくる。
「その娯楽とは人間を襲い魂を食らうことでしょう?下劣で野蛮な悪魔らしい」
そう座っているリリィを蔑むように見つめるアエラ。それにリリィはニヤリと笑みを受けべ反論する。
「僻むなよ。女神の命令に従うしか能のねえガーゴイルが」
睨みあう両者。六花はまた始まったとあきれ顔。
*ガーゴイルとは悪魔が作り出す像のこと。ガーゴイルは作った本人の命令を聞き行動するロボットのような存在。
「(アエラは強制的にでも部屋に戻らせるべきだったかな?)」
アエラが同じリビングにいることに許可を出したことを後悔していた六花だった。
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