悪魔①
六花の初仕事から少し経過。いくつかの仕事をこなし世間では六花のことで大騒ぎ。この科学が発達した現代においてどんな手を尽くしてもその姿すら確認されない六花は巷では【リアル魔法少女】などと呼ばれていたりする。そんなリアル魔法少女はといえば・・・今日も今日とてゲームをしていた。
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「あと少し!あと少し!」
「あとミリだ!前みたいにここで離脱なんてなしだからな!アイスフラワー!」
「大丈夫!家族の許可は取ってるから!」
六花はドハマり中のVRMMORPG「ファンタジーオメガ」をプレイ中。仲間には前回いいところで抜けたことについて家族から怒られたと説明した。ほぼ事実である。
「いまだ!最後を決めちまえ!アイスフラワー!」
「まっかせろい!スラッシュゲイザー!!」
ザン!
最後は六花が決めて目標のモンスターを討伐。仲間たちは祝杯をあげるため近くの酒場へと行く。
「「「かんぱーい!!」」」
ゲーム内のビール=エールを一斉に飲む一同。
「かあー!!エールが上手いぜ!!さすがオメガ!!」
「だな!飲み物食べ物に味がするなんて凄すぎるだろ!」
「バッカ野郎!黄龍ボルボーザを討伐したから美味いに決まってんだろう!」
「それもそうだな!」
「「「がっはっはっは!!」」」
上機嫌な一同。その飲み会にはアイスフラワーこと氷見六花も混ざっているのだが六花は仲間たちにふと気になることを聞いた。
「そういえばさ~?ポンポコ最近見ないけどどうしたの?」
ポンポコとはVR上で知り合ったゲーマー仲間。六花は彼らが定期的にゲーム内で集まって遊んでいる中に入れてもらった形。
「そうなんだよな~。ここ最近は全然インしねえよな~」
そうつぶやくと1人が焦ったかのように勢いよく立ち上がる。
「まさかあの野郎!?裏切りやがったか!?」
裏切ったとは彼らの言う職についたという意味の隠語。彼らのほとんどは仕事についていないニートの集まりだった。
「それだったら一言あるだろ?」
「確かに。ぽんぽこは"風邪で参加できない"とかそんな細かな連絡は必要ないのにってぐらい細かいし丁寧だからな」
彼らはゲーム内で知り合ったゲーム仲間なためほとんどはリアルであったこともないような間柄。しかしそんな話が始まると1人だけ急に雰囲気が暗くなるメンバーが。
「どうしたの?T-レックス?」
六花の問いかけに彼は少しの沈黙の後に重い口を開いた。
「……俺はあいつとリアルで何回か会ったことがあるんだよ……だから知ってるんだけど……」
「どうしたんだよ?ぽんぽこになんかあったのか?」
そのT-レックスの雰囲気にそれまで騒いでいた者も静かになり一同はT-レックスの話を聞く姿勢となった。そうして話される言葉に一同は驚愕し六花は守護者としての仕事の予感を感じさせた。
「ぽんぽこは……死んだんだよ……」
その言葉に絶句し黙ってしまう一同。
「し、死んだって……マジなのか?」
「大マジだよ。こんなことを冗談でも言うわけないだろ?」
「そ、そりゃあそうだろうけどよ……ぽんぽこ……」
顔も知らない友人の死。しかし彼らに確かな絆があったことは漂う空気からもわかる。どうやらT-レックスはリアルで数回あったこともある友人としてぽんぽこの母親からぽんぽこの携帯を使い連絡がきたらしい。
「このまえ葬儀をしてきたよ」
「……そうか……」
落ち込み話ができない一同の中で一番関係の浅い六花がそれとなく質問をする。
「……いつ亡くなったの?」
「ここ最近だよ。数日前にお昼ごろに買い物に行ってから中々帰ってこなくて次に連絡がきたときには警察からだったらしい」
「それって……事故……だったの?」
その六花の言葉にT-レックスは首を横に振る。そしてT-レックスは自身の心臓の部位を指さす。
「ここにぽっかりと穴が開いてたらしい」
「穴?」
「ああ……いわゆる変死体ってやつなんだと……」
「穴……変死体……」
心臓の箇所だけ穴が開き殺されていた変死体。それが気になった六花はその日の夜ご飯の時に天使アエラに聞いてみた。
「────ってことらしいんだけどさ?これってなにかわかる?」
アエラに簡単に説明した六花。特に自身が気になったぽんぽこの死因についても。するとその話を聞いたアエラは食事の手を止めて険しい表情で六花に告げる。
「それは十中八九やつらの仕業でしょう」
「やつら?」
「それは我々天使の宿敵……悪魔です」
悪魔────それは魔界と呼ばれる場所に住む存在。天使とは逆の黒い翼を生やし2本の捻じれた角を生やした悪魔は人間の魂をご馳走として隙あらば人間を襲う人類にとっても危険な存在。そんな悪魔のやり口が心臓を抜き取り魂ごと食すという行為。
「大昔に女神さまの手によって悪魔神サタンを魔界ごと封印しいまも天使が複数で監視をしているのですが、やつらは時折りその監視の網を搔い潜りこの世界にやってくるのです」
「……悪魔、か……」
六花は女神ティエラが自身を地球の守護者に任命したときに言った言葉を思い出していた。
「……これから忙しくなるかもな~……あいつらに言っておかないと」
予感がしていた。女神ティエラの言った地球に度々訪れる危機が近くやってくるだろうと。
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