プロローグ④
それはとある日の飛燕市。近くの丘の上に六花たちは住んでいた。そんな眼下の街にて人々に危機が迫っていた。
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「「「ヴ〜……ヴ〜……」」」
それは3mを超える二足歩行の化け物だった。それらはゆっくりとした速度ではあるが着実に歩を進める。対抗するように放たれる警察の拳銃は一切効果を発揮しない。
バンバン!バンバン!
「ダメです!?銃弾が効きません!?」
「効かずとも撃ち続けろ!!1人でも多くの人が逃げる時間を稼ぐんだ!!」
そんな立派な警察の姿勢も虚しく警察の拳銃も狙撃も化け物には効果をなしていなかった。そして警察に守られながら身体を震わせている男が1人。
「あ!?当たり前だ!?僕が研究していた強化兵計画は世界征服をするための計画!既存のどんな兵器にも耐えうるようにあらゆる実験をしてきた!そんな拳銃如きでは足止めにもならんぞ!せめて戦車を用意せよ!そうすれば僕が逃げる時間ぐらいは稼げるはずだ!」
この警察の背後にて震えている男。この男こそがこの化け物たちを作り出した悪の科学者。マッドサイエンティスト。非人道的な人体実験にて男が言及した強化兵を作り出そうとした時に実験体が暴走。男の言うことにも反応せずに不完全な形で街中に出てきてしまった。
「てめえ!?頭わいてんのか!?」
「そんな奴に構うな!!今は目の前の脅威にだけ集中しろ!!」
そんな悪逆非道な犯罪者であっても警察にとっては裁判にて罪を償わせなければならない守るべき存在。
しかし部下を叱咤する上司が少し目を離した隙に今までゆっくりとしか歩いてなかった化け物が一瞬にして接近する。
「しまっ!?」
「桐島さん!?」
振るわれようとしている化け物の右腕。桐島と呼ばれた警察官の命もこれまでと思われたその時に救世主、地球の守護者がやってくる。
「菊一文字」
ザン!
桐島という警察官に迫っていた化け物の右腕が切断された。それは多くの花びらを一枚のように集め鋭くした名刀のような花びらの刀。それを成した六花がいま警察官を守るように化け物たちの前に立ちはだかる。
「ギリギリセーフ!っかな?」
『日本の警察官の迅速な対処により大した犠牲者は出ていないようです。死んだのもその梁間弥五郎と共に非道を行っていた人間たちですから』
「だったらいいか」
表に出ているのは六花のみ。天使のアエラはその存在がバレないように透明となっている。あくまでも六花のサポートであり六花のみでは手に負えない状態となるまでは見守るのが役目。
「……き、君は一体……」
もうダメだと思ったその時に空から飛来し周囲に花びらを浮かべた少女。理解不能な事態の連続に警察官も呆然とする。
しかし化け物はただ右腕を斬り落とされただけ。吹き飛ばされはしたもののまだその個体だけでなく多くの化け物が生きている。
「危ない!?」
警察官が叫ぶ。よそ見をする六花に右腕を切断した化け物が腕を生やして六花に高速で迫る。しかし当然ながらアエラと話しながらも六花の警戒は緩むことはない。
「花吹雪」
ザザー!
大量の花がその化け物に飛来する。どうやら化け物には再生能力があるようだが細切れにされては生きていけないらしい。再生しなくなった。
「バカな!?失敗作とはいえ僕の強化兵が!?なんだあいつは!?」
そんな驚愕している様子のこの事態を作り出した元凶・梁間弥五郎を睨みつける六花。
「……」
「ひぃ!?」
それに怯える梁間弥五郎。
『六花様。お気持ちはわかりますがまずは安全の確保が大事かと』
「……わかってる……私が早く楽にしてあげないとね……」
そうして六花の守護者としての初仕事が始まった。これにより六花の存在は世界に周知されることになるが、アエラの力によって六花の存在も丘の家もどちらもバレることはない。
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梁間弥五郎が起こした事件については六花が登場して30分と経たないうちに終わりを迎え2人は帰ってきた。
「ふう。初めての仕事があれか〜……ちょっと精神的に疲れたかも……」
「ですが、あの人間が逮捕された事でこれ以上の犠牲者は生まれなくなり、天へと昇った彼らも六花様に感謝しているでしょう」
「だといいけど……ねぇ?今日は一緒にゲームしない?こういう時に良いゆったりした感じのやつ知ってるんだ〜」
「その前にご飯といたしましょう」
そう言ってアエラが買い物袋を見せる。
「アエラなら買い物なんかしなくても創造で出せば良いじゃん?」
「それでは味気ないではないですか。人間の姿に化け買い物をするというのも楽しいものですよ?」
「ふ〜ん。 ねえねえ?今日はなに?」
「今日は初仕事記念として六花様のお好きな生姜焼きです」
「やったー!アエラの生姜焼きって美味しいんだよねえ!」
これが六花の地球の守護者としての仕事であり役割。そしてこれを境にして女神様が言っていた通りに次々と六花の稼働は増していく。
いらない情報:梁間弥五郎は32歳。
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