プロローグ②
過労死した氷見六花(享年:34歳)。しかし女神ティエラの要望により六花が暮らしていた地球とは違うパラレルワールドの別の地球に守護者として転生することに。
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女神ティエラにより転生した六花。目を開けるとそこは小高い丘の上。そこにポツンと六花が1人で立っていた。
「おお…本当に転生したんだ…」
しかしすぐに異変を感じ取る。
「あれ?なんか……小さくなってない?」
最初に違和感を持ったのは視線の低さ。転生前は168cmと女性の中では身長が高かった六花。しかし今はその慣れ親しんだ視線の高さではないと感じた。
「こちらをどうぞ」
その声の後に六花の前に姿見が登場。そこに映っていたのは小学生だった時の自身だった。
「ええ!?子供に戻ってる!?なんで!?」
「その姿が六花様が一番力を繰り出せる最適な身体だからでございます」
「はえ〜。そんなのあるんだ〜…………え?」
そこで初めて六花は自身以外に誰かいることを理解する。後ろを振り返りそこにいたのは背中から白い翼が生えている女性だった。
「ええっと〜……だれ?」
「私は女神さまの命により守護者様の補佐をいたします天使のアエラと申します」
「あ、ああ~さっきの場所にいた天使さんか~」
納得した六花。そこで補佐役という天使アエラに六花は質問をする。
「あの~アエラさん?『アエラで結構です』……じゃ、じゃあアエラに聞きたいんだけど?私って何したらいいの?」
「守護者様は『六花でいいよ』……六花様はこの地球の守護者として女神さまに任命されました。ゆえに六花様は地球が危機に瀕する際にその脅威に対して行動していただきたいのです」
「でもその脅威ってのはさ?毎日来るわけじゃないでしょ?その間はどうするの?」
「脅威に対抗するための力の鍛錬をしてもらいますがそれ以外は自由となっております」
「自由……自由時間か~……それじゃあゲームもしていい?」
ニヤリとしながら六花はそうアエラに問いかける。そして期待した返事がきた。
「お好きにどうぞ」
「いよっし!」
それを転生の目的の大半はそれなため天使からも了承を得られて喜ぶ六花。それを無視する形で天使アエラが六花の横を通り過ぎて天使の力を行使する。
ポン
それまでは小高い丘にはなにもなく自然がただ存在するだけ。しかし天使がひとたび力を行使するとなんと立派な二階建ての家が現れた。
「おお!これがアエラの力なの?」
「はい。天使の力は創造にあります。個体により違いがありますがほぼどんな物でも作り出すことが可能です」
「へえ~すごっ」
そこから家の中に入りアエラが出したコーヒーを飲みながら簡単にこの地球の説明を受ける六花。
「この地球は六花様がいた地球よりも少し科学力が進んだ地球となっております。その象徴とするものこそあちらです」
そう言ってアエラが窓の外の雲に届きそうな塔らしき建造物を指し示す。
「ああ、あれね。私も気になってた。あれなんなの?」
「あれはいまだ建設途中ではありますが宇宙エレベーターとなっております」
「ええ!?宇宙エレベーターってSFの作品とかに出てくるあの宇宙エレベーター!?」
「おそらく六花様が想像しているもので間違いないかと思われます。あれがつながるのは宇宙ステーションとなるようです」
「はえ~……少し進んだ程度じゃない気が…………だったらさ?もしかして……」
六花は全ゲーマーの夢の機械がこの世界ならあるのでは?と想像し緊張しながらアエラに問う。
「……フルダイブ型VRってあったりするの?……」
その六花の質問にアエラは首を縦に振り答えた。
コク
「マジで!?うっわマジか!?やりたい!?私もやってみたい!?」
「かまいません。ですが力の訓練もやっていただけますか?」
「もちろん!やるやる!あれが体験できるんならなんでもやるに決まってんじゃん!」
というわけでアエラは最新型のフルダイブ型のVR機器を創造した。それは高級なマッサージチェアのようなもので前部分は透明なフィルターで覆われておりそれを開けることで座ることができるらしい。
「よーし!早速使ってみようっと!」
「それでは2時間ほど時が過ぎればお呼びいたします」
「は~い」
六花は聞いているのかわからない生返事をアエラに返してゲームの中へと飛び込んだ。
「へへへ!どんな感じなんだろうな~。楽しみだな~」
ちなみにお金に関してはすべて女神が用意したためなにも気にする必要のない程度のお金を使うことができる。そのお金を使用して六花はゲームを楽しんだ。
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5日後
今日もまた六花は昼からゲームを行っていた。もちろんフルダイブ型のゲームを。六花がやっているのは超王道の"剣と魔法が織りなす中世風ファンタジーMMORPG"。世界的にも超大人気作でありそんなものにかつてのガチゲーマーがドハマりしないわけがない。しかしハマりすぎるというのも考え物ではある。
『アイスフラワー!そっち行ったぞ!』
『おっけい!任せて!』
ゲーム上でのアバター名アイスフラワーというのが六花の名前。今は迷宮にて仲間たちと協力してのフロアボス戦。敵が六花のほうへとやってきてそれに対して六花が剣で一撃を入れようとしたその時、
ドゴン!
大きな音と共にゲームは解除され現実へと戻ってくる六花。
「え?なに?なんのお…………」
最後まで言葉を発する前に六花は理解した。先ほどの音はアエラがVR機器を破壊した音であると。そしてアエラが心底キレていると。
「……六花様……あなたの使命は何ですか?」
「……地球を……守ることです……」
「そのために女神さまよりいただいた力を完璧に使えるようになるために訓練が必要ではないのですか?」
「……必要です……」
「ではあなたがこの5日で力の訓練をしたのはいつですか?」
「……」
「い・つ・で・す・か?」
縮こまる六花に圧を強めで凄む。
「……ゼロ……です……」
六花はあまりにもゲームが楽しすぎたためにゲームにのめり込んだ。それは力の訓練を放棄するほどに。もちろんアエラは力の訓練を求めたが"あとでやる""また今度"とやらない六花。女神さまに選ばれた守護者であるために強く出れなかったアエラはしかしとうとうブチギレた。
そうして転生してから5日。やっと六花は力の訓練をすることにした。
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外に出る六花とアエラ。
「別にあれだよ?この世界のゲームが楽しすぎただけで自分の使命を忘れてたんじゃないからね?」
「……」
「そもそもゲームみたいな力を使えるなんて夢のようだもん!」
「……」
なにを言っても返事は帰ってくることなく無言。それには自身が悪いため申し訳なく思う六花。
「……では始めてください。力の使い方に関しては自ずと本能で理解できるはずです……」
「は、は~い」
そこから六花はまず目を閉じて力というものを知るところから。しかしその様子を見ていたアエラはすでに六花への信頼は地に落ちていた。
「(女神さまを疑いたくはないですが……間違っているのではないでしょうか?この女に女神さまが期待するほどの力があるとは思えません……)」
もはや蔑みの目で六花を見ていた。しかしその目が次の瞬間には大きく開かれ驚愕することになる。
「お?へえ~。私の能力ってお花なんだ~。 こうかな?」
そうして自身の力を把握した六花は自身の周りから花びらを出現させて操作。六花は最初からいきなり何百万何千万もの花びらを自身の手足のように扱って見せる。それに乗って空を歩いて移動したり、動物の形にしたり文字の形にしたり、花びらに属性を付与して燃えたり冷やしたりやりたい放題。
「ははは!なにこれ!楽しい!女神さまはすごい力をくれたね~!」
はしゃいでいる六花。しかしその光景をアエラは目も口も大きく開けて驚愕していた。それは女神さまとの会話から。
『私は六花さんに力は与えましたがそれを扱うセンスや戦いの才能を与えたりはしていません。それはもともと私が手を加えなくとも問題ないほどの才能を持っている方だからです』
どんなに強大な力を有していようともそれを扱うことができるかはその人物の才能に由来する。にもかかわらず六花は初っ端から完璧に扱って見せた。だからこそアエラは驚愕していた。
「これが……女神様がお選びになった守護者様の才能……」
アエラの地に落ちた六花への信頼は以前よりも上昇しV字回復した。
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