悪魔⑫
「んで?ここがピースフルとかいう会社か」
リリィはコーヒー片手に株式会社ピースフルを見上げていた。
「来てみたが……外から見ただけでなにがわかんだよ?」
当然ながら外から見ただけでその企業の闇がわかれば苦労はしない。中で働いていてもわからないからこそ噂となっているのだ。
というわけでリリィは中に入ってみることにした。しかし、
「ご用件がないのであればお引き取りください」
「いや、ちょっと中入らせてくれりゃあいいんだよ。知りたいことがあんだよ」
「お引き取りください」
取り付く島もないとはこの事とばかりに受付に相手にされないリリィ。まあ、何の約束もなしにただ中に入らせてくれで入れる企業など存在しないだろうが。
それに痺れを切らせたリリィが受付にヒソヒソと自身の目的を答えて入れてもらおうとする。
「いやあのな?実は『お・引・き・取・り・く・だ・さ・い』…はい…」
ドン
受付が放つ圧に悪魔卿が押され結局は警備員に弾き出されてしまった。
「……人間って怖えな……」
結局はそのままなにも収穫はなくピースフルから離れようとしたリリィ。
「どうせ天使がなんとかすんだから俺はもういいだろ」
そうして歩き出した時にリリィは次の瞬間すれ違った人物を目で追った。
「……あいつ……」
その人物はピースフルの社員なのか当然のように建物に入っていく。その背中をじっと見つめるリリィ。
「確定だな……あの会社はろくでもねぇ……」
そこでリリィはその人物が外に出てくるまで近くのビルの屋上で張ることにした。
「中々出てこねぇな……働きすぎじゃねぇのか?」
待ち始めた時刻はお昼を過ぎたあたり。もう日も落ちて夜となっている今もずっとあの人物を待っていた……あの悪魔を。
「たぶん近くで魂を喰った後で気が緩んでたんだろうな……悪魔としての気配が若干漏れてやがった……あんなミスをするのなんざ雑魚悪魔かよほど自分の実力に自信があるやつかどっちかだ……」
数時間もずっとビルの屋上で見張っていたリリィ。そこで自分のことながらふと疑問に思った。
「っていうか……俺は何でここまでしてんだ?人間がどうなろうがどうでもいいってのに……」
口ではそう言っておきながら決して家に帰ろうとはしない。それはリリィの優しさもあるがリリィにその優しさを教えた親友ノアならばとふと考えてしまうから。
「あいつなら……ノアならば人間とか天使とか関係なく困ってたら助かるだろうからな……」
感傷に浸っているリリィ。すると六花が持たせた携帯電話が鳴る。
プルルルル!プルルルル!
「ん?ええっと……こうだったか?」
使い方を思い出しながら電話に出る。すると相手はもちろん六花だった。
「おう。どうした?」
『"どうした"じゃないよ!こんな夜まで何してるの!危ないでしょ!早く帰ってきなさい!』
「おい……知ってんぞ?それは親が子供に言う言葉じゃねえか。俺は六花の子供じゃねえ」
『ハハ。ちょっと言ってみたかったから。でも帰るの遅くない?なにしてるの?』
「なにってそりゃ……張り込みってやつだ」
『張り込み?』
そこでリリィは六花に悪魔がピースフルに入って行ったことを説明した。すると六花は少し黙った。
『……そっか……リリィも悪魔を感じたんだ……』
「"も"ってなんだよ?」
『実はこっちでもアエラが捜査した結果、噂は真実ってことが判明したんだ。その近くで定期的に一瞬だけど悪魔の観測がされてるらしいから悪魔が関わってるのは事実だと思う』
「んだよ。だったら俺がここまでする必要はなかったじゃねえか」
『そんな事ないよ。リリィの言葉があったから悪魔の関与が確定したんだから。ちょっと待っててね。私たちもすぐそっちにいくから』
そう言う六花の言葉に了承の返事をしようとしたリリィだったが、ちょうどその瞬間にリリィが数時間もかけて張っていた対象である男=悪魔が会社から出てきた。
「そんじゃあ悪魔の方は俺がちゃちゃっと処理してやるよ」
『え?ちょっ!?待っててってば!?いまリリィは弱体化してるじゃん!?相手の階級もわかんないまま1人で行くのは!?』
「舐めんなよ?俺は弱くなっても悪魔卿リリィ様だぞ?そこらの悪魔に負けるかよ。じゃあな」
『いやいや!?リリィ!?リリィ!?』
ブツッ!
六花の声も虚しく電話を切ったリリィはそのまま会社の屋上から悪魔の前に飛び降りた。
ドン!
「なっ!?」
「よう。同胞。悪魔らしい事してるみてえだな?」
突如として己の目の前に落ちてきたリリィの言葉に一瞬でリリィが悪魔と理解した。しかしこの悪魔はリリィの登場に苛立ちを覚えた。
「……貴様……同じ悪魔か……」
「そうなんだよ。で?なんで悪魔のお前が人間の会社から出てきてんだよ?なにかしてんだろ?」
「……屋上から落ちてくるような後のことを考えん貴様のような馬鹿にまでバレるとは……ここらが潮時か……」
「あん?」
確かにビルの屋上から飛び降りて平気な顔をしているリリィ。周囲には奇跡的に人がいないからといってその瞬間を見られてはただの人間ではないと己で言及するようなものだろう。
「貴様を殺してしばらくは魔界に逃げ込むとしよう」
そう言って男は悪魔の姿となった。
「我は公爵レーズ!殺される者の名を覚えて死ね!」
こうして悪魔同士の戦いが始まった。
「簡単に姿を現しやがって……馬鹿はどっちだよ……」
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