プロローグ①
近年、日本の過労死する人数は増加傾向にあると言われている。そして今日もまた1人、とあるOLが過労死により死を迎えようとしていた。
/////
「ああ…今日もまた…23時に…」
女性の名は氷見六花(34歳)。最近になり同性の先輩や後輩から仕事を押し付けられてしまい毎日のように帰宅時間が23時を超えていた。
その原因は会社の女性たちの憧れでありアイドルのような顔立ちをしていて仕事も出来る超イケメン会社員:齋藤一真(26歳)からのデートの誘いを断ったため。
『一真様から誘われただけでなく!それを断り悲しませるとは!なんという悪逆非道な女!』
という一部の一真ファンガチ勢が意味の分からない激昂を見せた経緯があり陰湿なイジメに六花はあっていた。
「…そういえば…もう何年も…ゲームしてないな…」
六花は学生時代はオタクとしてゲームに時間をかけていたが成人してからはその頻度も減り最近では休みの日でも嫌がらせに遭うので最低でも数ヶ月はゲーム機にすら触れていなかった。
「…ゲーム…したいな…」
バタン
それが氷見六花の生前での最後の言葉となった。
/////
『氷見六花さん…氷見六花さん…。起きてください』
その呼びかける声に意識が覚醒していく六花は条件反射的に飛び起きた。
バッ!
「申し訳ありません!?」
しかし六花は視界に入る光景に戸惑う。
「……え?……」
六花の視界に広がっていたのは真っ白い空間に一人の女性。しかしその女性を視認した瞬間からなぜか六花は目の前にいるのが人ではなく女神であると認識していた。
「女神、さま?」
『はい。私は女神ティエラと申します。氷見六花さん』
「………………私って死んだんですか?」
『はい。あなたは極度のストレスや働きすぎによって過労死いたしました』
「そう……ですか……」
死んだと聞かされても特に反応を示さない六花。
「わたしは……解放されたんですね……」
『六花さんにとっての日常を送らなくていいという意味ならば、六花さんは解放されたと言っていいでしょうね』
「よかった……」
死んだことで地獄のような日々から解放されたと安堵する六花。
「ああ、でも……最後にゲームがやりたかったな~……」
元ゲームオタクとしてはやりたいゲームや未攻略のゲームも存在していたためそれができないのが唯一の心残りなのかもしれない。
そしてそんな六花の様子を確認して女神ティエラが提案する。
『では立花さん……生き返りたいですか?……』
その問いに最初はキョトンとしていた六花だが少し考えて答えた。
「う~ん……ゲームはしたいけど……もう一度あの日々に戻るのは……」
『でしたら別の地球への転生でしたらどうでしょう?』
「転生?っというか今更ですけど……ここは?どうして私はここにいるんでしょうか?」
六花は周囲をキョロキョロと見ながらそう疑問を口にした。
『ここは我々神々が存在する場所。いわば神域とでも言いましょうか』
「はえ~……神域……」
『そしてどうしてここに六花さんがいるのかといえば、私がお呼びしたからです』
「女神さまが?どうして女神さまがわたしなんかを?」
『氷見六花さん……あなたにはぜひ地球の守護者になっていただきたいのです』
「地球の守護者?」
予想だにしていなかったその言葉に理解が追い付かない六花。
『正確には六花さんがいた地球とは違ういわゆるパラレルワールドの地球なのですが』
「……パラレルワールドとかって本当にあるんだ……」
そんな六花の言葉は無視して女神ティエラは本題を伝える。
『その地球ではこの先に度重なる危機が訪れます。その危機に人類だけでは太刀打ちできません。なのでそんな地球を守る存在が必要なのです』
「地球を守る存在……それってどうして私なんですか?というか女神さまが助けることって出来ないんですか?」
六花のその問いに女神ティエラは首を横に振って答える。
『残念ながら我々神々が直接的に世界に介入することは禁じられているのです。なので六花さんにお願いしています。私が守護者として最もふさわしいと考える六花さんに』
「わたしが?でも私にはそんな力は」
『力ならこちらから授けます。補佐役として天使もつけましょう。お願いします六花さん』
そう言って頭を下げる女神ティエラ。そしていつの間にか存在した白い翼の生えた天使のような女性も同様に。
「いや…う~ん…………そこは私が生きた地球ではないんですよね?」
『はい。原則として死した人間を生き返らせるのは神々でも禁止されていますから。今回は別の地球への転生なのでセーフです』
「抜け道的な? 守護者って……ゲームできますか?」
こうして氷見六花は女神ティエラから力を授かり自身が暮らしていた地球とは違うパラレルワールドの別地球へ守護者として転生を果たした。
読んでくださりありがとうございます!
もし少しでも面白いと思ったら評価・ブックマーク・感想をしてくれるとそれが作者の描き続ける原動力となります!よろしくお願いします!




