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水卜風鈴は中二病?  作者: 悠々
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何でこうなったのか?

2

 ないような荷物をカバンに詰め準備、新品の上履きを履いて支度完了。サイズぴったりなんだが、新しい靴だからか履き心地は良いとはいえない。


 え、何で家で上靴履いてんのって?答えは簡単さ。直接学校に乗り込むからさ。あんまり使いたくないが、背に腹は替えられない。テレポートを使う。


 テレポート:日本語で瞬間移動。距離の離れた二点を瞬時に移動する能力。ほとんどの人は超能力で何がほしい?と訊かれるとこいつを答えてしまいそうだが、全くオススメできない能力。


 一応注意点を添えておく。

 テレポーテーションの注意

 注意1.転移するには先ずその場所に行ったことがないと出来ないので予め行っておくこと。

 注意2.連続使用は出来ない。1分間前後のクールタイムをはさむ必要あり。

 注意3.当然疲れる。遠ければ遠いほど疲労が激しい。地球の反対側に行くとしたら1日は地にへばりつくことになる。

 注意4.ある程度絞り込むことは出来るが、大雑把な場合行きたい場所のどこに飛ぶかは不明。例えば宮城県に行きたい!この場合は過去に行ったことある宮城のどこかになる。宮城の中でも昔行った仙台の〇〇公園のトイレに行きたい!って感じならばしっかり座標を調べなければ問題なし。

具体的に行きたい場所があるなら面倒くさがらずに座標を調べよう。


 と、こんな感じな取り扱い説明がある。 

 な、欲しい気も失せないか?

 某戦闘漫画の世界みたいに、ノータイムで敵の懐に入り込んだり、本命の使い方である旅行などには距離の関係などで行くことは難しい。そもそも行ったことない場所にはいけないしな。

 補足として、瞬間移動するときは物凄く神経を研ぎ澄まさないといけない。って………こんな悠長に解説している暇なんてないんだった。


「学校名は………宮城県の───高等学校っと」


 注意点1の問題点である行ったことあるか問題は幸い受験の時にクリアしている。注意2、3も高校は家から遠いが、片道のみ。往復でないなら体力の問題はなし。

 問題は4番目の注意点だな。学校の校内に適当にテレポートして人に見つかるのだけは回避したい。校内には当然教職員や生徒が、立派な姿になった我が子を入学式で観るための親がいるだろう。


───俺はもう人の前で超能力なんか。


 目の前の掛け時計が着々と針を進ませている。

 甘い考えだが、最初の日の遅刻は先生も許してくれるだろう、と思いたい。


 問題は許す許されないではなく、初日から遅刻した俺を同じクラスの奴らはどう思うか、だ。

 普通を目指して目立たない予定なのに、大事な式の日に遅刻する奴は目立つし軽蔑されるに決まってる。(※決まってません)

 ダメだ、考えちゃ駄目だ。ネガティブになっちまう。


 取り敢えず入学式に関しては、歩かずにテレポートを使えば余裕で間に合う。

 てか、今すぐテレポート使わないと間に合わないか。移動開始ぐらいやっていても不思議でない。


「場所は───高校、受験した教室に飛ぶ」


 あの日緊張感があった教室。受験生たちはみんな机と向き合っていた風景。

 黒板にはテスト科目と時間割が並べられており、端には比較的新しくちょっとデカ目の掃除ロッカー。

 確かあそこの教室の札には2年とあった。今日は俺たち新入生以外の生徒は午後に登校することになっている。

 これは間違いない。さっきプリントを漁った時に目に入って確認した。


 集中しろ。受験の日の教室内を思い出せ。全く同じように、寸分違わず想像して、自分の周りに創り出す。

 机ひとつひとつに意識を割いて。時計、文庫、黒板………


───ピーンポーン。


「ロッカーぁ、──っ!!」


 ぐらりと、宙に放り出された感覚がした。

 この感覚が移動開始の合図だ。なんて最悪のタイミングのインターホンだ。集中を妨害された上に、ちょうど切れたタイミングでテレポートを成功させてしまった。


 一瞬視界が暗転して、水上に浮かぶ感覚と同じような感じがしたらテレポート完了だ。

 うぇ、何回やっても慣れずに酔うな。


「キャッ────」


 集中が切れたせいで変なとこに飛んでなければいいが。奇跡よ、起きて下さい。

 俺は期待を込めて、スローで瞼を上げる。


「そりゃそうだよな、知ってたさ」


 視界を開くと期待は容易く裏切られ、木漏れ日のような僅かな光だけで闇の中にいた。

 ここの場所はある程度推測はつく。

 俺が集中を切られたタイミング、そこで最後に意識してた場所だ。知っていても溜息が溢れる。


「あの───」


 光の漏れている隙間から外を覗くと、そこには知っている教室風景があった。”一応”知っている教室に瞬間移動できたようだ。

 俺のアングルからは生徒達の後頭部と髪の長い若い女の先生の柔和な笑みが見える。聴覚には生徒達は弾んだ声で会話を交わす声、先生は「入学おめでとう」と簡単な祝辞を述べる声が。


「最悪だ。でも何で?」

「もしもし───?」


 俺は教室の後ろ隅にあるロッカーの中にテレポートした。全く分からない。

 いや、別に転移先がロッカーなのは分かっていた。テレポート寸前に意識を割いたのがロッカーだったからな。最悪であって、尚且つ疑問なのはそこじゃない。


「何でこの教室に俺と同じ新入生がいるんだ」


受験の時は2年の教室だっただろ。

今日は2年は午後登校で、今は空き教室のはずだぞ。


「いや待て、落ち着け。テレポートは失敗………

いや、これはもしかしてこれってある意味奇跡起きてるんじゃ………」

「ちょっとぉ───」

 

 そうだ、これは奇跡だ。ありがとう、インターホンを鳴らした人よ。今日イチのナイス、MVP。貴方が俺の集中を切らさずにテレポートしてたら、

「あぶねー、間に合った間に合った。ここの二年の教室から早く移動して、クラス確認して早く教室に向かおう」

「きゃーー」「うわぁ!」「え、テレポート!」


 意識途切れずロッカーに移動しなければ、いきなり教室のど真ん中に俺は現れるとこだったはずだ。

 生徒と先生は突如として現れた俺を驚きつつガン見。超能力者だとならなくても、おかしい奴がいたと噂広まる。結果、俺の高校生活は。


 こんな感じになるだろうと容易に想像できる。

だからありがとう、インターホンを押した人。一瞬でも責めたのは忘れて下さい。


 ロッカーだったら、このまま皆がそう遠くない入学会場に向かうまでバレずに潜伏し続ければいいんだけだ。

結局移動開始後の遅刻になるが。

 そして掃除用具がからっきしないおかげか、このロッカーは中々広く人二人のスペースはある。そんな窮屈になることもない。


───そう思ってた。だからこそ驚いたさ。


「簡単だな。後はこのクラスの奴らがいなくなってから入学式会場に向かうだけだな」

「あの!」


 俺と同じようにロッカーに人が、ましてや女子がいるなんてことに。横を振り向くと隙間から溢れる光が映したのは、小柄な明るい茶色のショートボブの子だった。

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