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山姥(やまんば)  作者: 野松 彦秋
最終章 脱出
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5.キセイ

『ヒィイイギャア~』


『火がァ、火があ』


火だるまになった山姥がのたうちまわる。


しかし、動けば動くほど、火に空気が回り、火の勢いが増す。


『・・・おのれぇ、人間の分際でぇえ』


『このままぁでは、このままでは・・』


『・・・ウギギギィl仕方が無い・・』


突然、山姥の身体が糸が切れた操り人形の様に、力が抜けた様に倒れ込む。


身体が倒れ込むと同時に、焼かれた方とは逆の目が地面に転がった。


転がったと思うと、ナメクジの様な形に変わり、ウネウネト歩きはじめる。


何かを探している様に、時折ピクピクと震える、そして何かを感じ取り一歩一歩目的のモノに近づいていく。


そして、一分もしないうちに彼女の目的地に着いてしまった。


ナメクジの様な紅い生き物が探していたモノは、倒れている加賀谷先生の腕だった。


気がつけば、彼女は先ず細くミミズの様に変形し、加賀谷先生の腕の血管の太さを認識すると、更に身体を細くし、血管の中に入って行った。


倒れた加賀谷先生の腕の血管が時折、彼女が動く度、異常に浮き出るが、暫くしてそれも無くなった。


倒れこんだ山姥の元の身体には火が回り、その火が、子供達を囲んでいた木にも移っていく。


それから間もなく、その場所に哲也が到着した、いや到着してしまったのである。


全力疾走で走って来た哲也は、最初に加賀谷先生が倒れている事に気づいた。


そして、未だ木の檻に捕まっていた二人の男の子を発見したのである。


男の子たちも、哲也にきづき、助けを求める。


哲也は先ずは加賀谷先生の状況を確認しようと、先生の元に駆け寄った。


加賀谷先生は、倒れてはいたが、息は未だしていた、しかし見ると左手の手首より上が無くなっていたので哲也は驚いた。


『先生、加賀谷先生、オレです。佐上です。』


最初、反応は無かったが、哲也が必死に2度、3度呼びかけを繰り返すと加賀谷先生は意識を取り戻した。


『さ・・佐上か・・、オレは、未だ生きているのか?』


『先生、立てる?火がすごいんだよ、早く逃げないと・・』


『スマン、山姥に腕を喰われて、力が・・出ないんだ』


『お前だけ、逃げろ・・オレは足でまといになっちまうから』


その時、哲也は加賀谷先生の近くに転がるナイフに気づく。


『先生、ちょっと待ってて!』


哲也は、ナイフを拾い上げると、木の檻に入れられている男の子の処までいき、それを彼に渡した。


『時間がない、これで自分で檻を開けてくれる、後、君が出れたら隣の子も助けてあげて』


『・・・ウン、分った。ありがとう・・』


ナイフを受け取った男の子は、そういうとナイフで自分の木の檻を壊し始めた。


その後、哲也は既に壊れている木の檻を見て回った。


そしてあるモノを見つけた。それは、少し長い木の切れ端であった。


それを加賀谷先生の所まで持ち帰り、その木の端きれと、哲也の努力のお蔭でなんとか加賀谷先生を立ち上がらせる事ができた。


そして、哲也は自分の肩を貸したりして、なんとか火の手のある場所から、3人を救い出したのであった。


檻から出て来れた男の子達は、哲也に礼を述べると、哲也達がきた方向へ走って行ってしまった。


哲也には、彼らが何処へ向かったのかを疑問に思う余裕は無かった。


加賀谷先生の状況は、哲也が思っている以上に悪そうで、息遣いが荒かった。


『先生、サッキ、山姥に手を喰いちぎられたって、山姥はどうしたの?』


加賀谷先生に肩を貸し、歩きながら、哲也は質問した。


『ウ・・ン、良く覚えていないんだが、オレが火をつけた。持っていた燃料のカン、全部かけてやった』


『後は、分らん。気がついたら、お前が・・』


先生は、そう言うと頭が痛いのか、少し、立ち止まってしまった。


『佐上、他の奴らは大丈夫か?』


『他の奴って、カッチの事、カッチなら先生の指示通り、福岡先生達の元に走って知らせに行ったよ』


『・・・知らせるって、何を知らせに行ったんだ?』


『ウッ』


『先生、どうしたの?』


『いや、何か頭痛が酷くて、記憶が曖昧なんだよ』


『さ・・佐上、それでカッチは、何を知らせに行ったんだ?』


加賀谷先生は、頭を押さえて2度同じことを哲也に聞いた。

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