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山姥(やまんば)  作者: 野松 彦秋
第2章 謎の少年
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5.正体判明

その日の夜、哲也の家にカッチの電話がかかって来た。


カッチが言うには、事件の現場になった勝平寺は、暫く親戚以外の人は立ち入り出来ないらしい。


それで、カッチが提案してきた会う場所は、カッチの家から近い、勝平保育園の横にある公園だった。


保育園の目の前には、児童会館という託児所があり、小学生は名前を書くだけで其処が利用できた。


児童会館は、学童保育所ではなく、ボランティアの小学生の親が、管理人としており、学校がある日は、14時から夕方の17時、夏休みは始まってから5日間だけ、9時から15時まで開いていた。


児童会館の中は、畳12畳の大部屋の遊戯室、後は6畳一間のマンガ室、3畳ほどの小さい部屋がマンガ室と遊戯室の間に有り通路代わりになっている、其処に管理人の人が居る。


哲也は、会うのであれば、児童会館の方が大人の人達もいるので、安全だと提案したが、カッチが建物に入るのが怖い事、なにより、あの妖怪が襲ってきたら、他の人を巻き込むかもしれないという事で、結局保育園の横の公園にしたのであった。


次の日の午後に、3人は3日ぶりにあった。


かなり傾斜のある長い滑り台のある公園で、滑り台の乗り口のある、狭い場所で4人は話し合った。


夏休みが始まって、未だたったの4日であるが、状況は目まぐるしく変わっていた。


カッチの表情からは、普段の明るさが消え、当然だが元気が無い。


『カッチ、大丈夫か?具合悪そうだよ』


カッチを一目みて、哲也の口から、自然にそういう言葉が出た。


『・・・眠れないんだ。目を閉じると、アイツが来そうな気がして・・・』


『それより、電話で言っていた、オレに見せたいモノ、10年前の卒業アルバム持って来たのかよ?』


『・・・これ、これがそのアルバム、野田君が見た男の子って、この3人の男の子の誰かじゃない?』


準備の良い、いずみは、カッチに見せる前に、開く予定のページに分かる様に、付箋(ふせん)を貼っていた。


其処を開いて、3人の写真が貼ってある場所に指をさし、カッチの顔を見る。


カッチは、疲れた様な目を細くして、いずみの指が指した写真を見る。


『・・・この子、この子だよ。オレをあの妖怪から助けてくれた子・・』


カッチがそう言いながら、一人の写真を指さす。


『ああ、やっぱり、その人だったのね・・』


『エッ、だって、この人って、市立病院で入院している一馬さんの子供の時の写真だろ?』


『なんで、生きている人が、幽霊になってるんだ・・』


カッチが、驚きの声を上げる。


『理由は分からない、だけど、生霊になった人の魂は、身体を離れると聞いた事があるの』


『つまり、何か、俺たちに、あの日、一馬さんの身体に触れるなって、言ったのは、一馬さん自身・・』


ナオケンが、いずみの言葉を確認する様に呟く。


『一馬さんは、10年前、戻って来た。だけど、実は、身体には魂はなくて、身体だけ戻って来た』


哲也も、自分の考えを整理するように、ナオケンに続く。


『じゃあさ、身体から、魂が抜けている一馬さんの身体に入っていたモノ、カーテンが閉まって出てきたモンは・・祖父ちゃんを殺した奴は・・何』


『私達が、3日後に行く、宿泊研修の場所、風越鬼山の伝説に有る・・』


いずみが、バケモノの正体を言おうとしたが、その前に哲也が口を出した。


『山姥(やまんば)・・・だろ』


哲也が、覚悟をするように、名前をあげる。


誰もが暫く沈黙し、否定もしなかった。


『オレはそいつを、祖父ちゃんの仇を必ず退治する・・』


『悪いけど、オレ、これから祖父ちゃんの部屋を探して、妖怪退治に参考になる本とか、祖父ちゃんの日記とか何かを探してみる。だから、これから宿泊研修まではみんなに会えない』


『後、怖ければ、みんな、宿泊研修に来ない方が良いよ・・オレがひとりで倒すから、アイツを』


カッチはそう言うと、滑り台を滑っておりていき、降り口の横に止めてある自分の自転車に乗って家に帰ってしまった。


止める事の出来ない3人は、カッチをタダ見送る事しか出来なかった。


『委員長、カッチが帰っちゃったから、もう今日は解散しよ』


ナオケンが、仕方が無いという様子で、いずみにそう語りかける。


『オレとテッカは、ちょっと残って別の話があるから・・』


『ウン、分ったショウガないね』


『うちの家にはショウガあるけどね(笑)』


いずみの言葉に、ダジャレを言うナオケン。


いずみも、愛想笑いの苦笑いをする。


(面白くないな・・・)


ナオケンが、そう言ってしまったから、いずみはもう帰るしかなかった。


カッチに遅れて、10分後、いずみも自分の自転車に乗り、一人帰って行った。


いずみの後ろ姿が見えなくなった後、ナオケンが哲也に言う。


『ヨシッ、委員長は帰ったな、テッカ、それじゃあ、行くか?』


『市立病院だろ、一馬さんとこ、また妖怪が襲ってくるかもしれないぞ』


『だから、委員長を帰したんだろ、危ない所には、俺たち男だけで行く』


『鉄則じゃん。』


『正直、怖えけど、カッチが見た、一馬さんの生霊、居るとしたら、あそこしかないからな』

哲也は自分を説得する様に言った。


『ショウガないなぁ』


色々考え、最後に出て来たのが、その言葉であった。


『だから、ショウガは俺の家の冷蔵庫の中にあるって・・』


『ナオケン、そのギャグ、面白くないよ。さっき、委員長もショウガなく笑ってたんだぞ』


『・・・。』


『うるせぇ、テッカ!行くぞ』


怖いけど、友達の為、勇気を振り絞り、二人はあの病室にもう一度向かったのであった。

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