6 初めての実習
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身体が重い…。
ずっとベットに横たわる生活をしていた僕にとって、こんなにも活動すること自体が久しぶりなのだ。
今日は大きなホール…体育館のような場所で、実習をするらしい。
いつもの制服から、体操服に着替えて集合場所に向かった。
本格的な実習は初めてで、今までは座学がほとんどだった。
だから、初めて袖を通した体操服のサイズが合わなかったし変な感じがした。
30人くらいが体育館に集まり、各々が好きなところに散らばるような形で座っていた。
先生といった風貌のおじいさんが入ってきて、みんながいる中心に立った。
「今日は、ひとりひとりの能力を確認するテストを行います。ここに花があります。この花を皆さんの力で変化させてください。1人ずつ回っていきます。」
おじいちゃん先生はそういうと、手当たり次第生徒に近づきテストを行っていった。
不思議な実習課題だった。
「あぁ~眠い。てゆうか、1人ずつやってたら何時間かかるんだよ…。」
隣でラムソ君は眠そうな声で呟いた。
「変化させるってどういうこと…?」
「うーん、適当に魔法使えばだいじょうぶだぜ。あれ、お前の魔法ってどんなのだったけか?」
眠そうな、適当な返事だった。
僕の魔法は…。
魔法…、僕に出来ること…それは…。
僕の青い炎は何かを燃やすことしかできない…。
急に、背筋が凍る感じがした。
この場を離れたいと思った。
「「「お前の魔法は誰かに見られてはいけない」」」」
かつて言われた言葉が、僕の頭に流れてきた。
そうだ、僕の魔法は…誰かに見られてはいけなくて…
だから閉じ込められて…僕はもう生きることは許されてなくて…
「おまえ大丈夫か、顔が真っ青だぞ。」
ラムソ君の言葉に急に現実に戻された。
「っ…。」
「あ~次、お前の番だってよ~!俺は、治癒の力で花をさらに瑞々しく、元気にしてやったぜ~。」
ラムソ君の声がするけど、頭にまったく入ってこなかった。
僕の目の前に、花を持って先生が立つ。
「次はデオラデ、新入生ですか。君の番です。」
急に周りからの視線を感じた。
「そうえいば、デオラデくんは何の魔法を使うんだろうね~。」
周囲にいる女の子の声がかすかに聞こえる。
心臓がドクドクとなっている。
この空気にた、たえられない…、
「さぁ、この花を貴方の力で変化させてみてください。」
「…はぁっ」
僕の目が…瞳が熱くなるのを感じた。
青い瞳がさらに濃い青に色づいていく。
呼吸が荒く、手が熱く…体が暑くなっていく…
身体の中で熱い何かが渦巻き、それは食い止めるすべもなく、
全身から吐き出しそうになったそのとき________
「久しぶり、デオラデ。元気だった?」
ふわりと甘い匂いがした___
僕の腕を誰かが掴んだ。それは柔らかくて、冷たい手をしていた。
絹のように細く綺麗な黒髪が視界に入る。
僕と先生の間に、ふんわりと少女が降り立った。
「ハ、ハレベル…さ、さん」
呆気にとられた僕は、身体中の熱はどこかにいき、
いつも通りの淡い瞳の色に戻った。
「先生、悪いけど、こいつを少し借りていくよ。」
ハレベルさんはそう言うと、僕の手を引っ張って走り出した。
「ちょっ、おまえら、どこにいくんだよっ!」
後ろからラムソ君の声が聞こえた。
僕の手を引っ張り飛び出した彼女は、このホールを出て、学園の知らないところまで
連れ去った。
走って、走って走った_____