2 襲撃
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「ハレベルさん…!!!!!」
遠くで彼が叫んでいる声がする…。
「大丈夫よこれくらい。でも、ちょっと状況が悪いわね。」
私は、余裕そうな返事をしてあげた。実際、これくらい余裕ではあるんだけど。
ぁあ、ここで魔法を使ったら通報ものかしら。
私は人間の前で魔法を使いたくないと思った。
訂正____。
デオラデの前で魔法を使いたくなかった。
「ぁっ…!!」
大きな怪物の動きは早くて、次々に私の体へ蹴りをいれてくる。
この怪物は原始的だ___まだ、耐えられるだろうか____。
「…、服がボロボロだ…。」
私は余裕そうな顔で怪物を眺めた。
このあたりまで怪物が来るようになったのか。
戦争はだいぶ混迷しているようだな_________
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僕は、目の前で起きていることが理解できず、息が荒くなった。
はぁっはぁっはっと肩で息をした。
「あれ…?この景色、前もどこかで…」
急にフラッシュバックするなにか。なにかが頭にちらついた。
この物体…怪物…?僕はどこかで…
何かが頭に浮かびそうだったが、すぐに我に返った。
「ハレベルさんを助けないと…っ!」
僕は立ち上がり、遠く蹴り飛ばされ離れたハレベルさんのもとへ駆け寄った。
走る、なんていつぶりだろう。
とにかく無我夢中で彼女に駆け寄った。
「ハレベルさんっ…!」
「え…?き、きちゃだめ…!!!」
僕が駆け寄ると、ハレベルさんは驚いた顔をしてこちらを見る。
「こないで」という顔をしていた。困った顔をしている。
だめだ、ハレベルさん、ボロボロだよ…!
僕、助けたいんだ…!
ハレベルさんと怪物の間を遮るように立った。
心臓がドクドクと音を鳴らしている。僕は怪物の腕に触れた。
そうその時だった___
久しぶりにあの声を聞いた____
《《《燃やしちゃおう》》》
「燃えろ」
時が一瞬止まったかのように、辺りは静かになった。
目の前にいる大きな怪物は青い炎に包まれて、瞬く間に黒焦げになった。灰になった。
僕の青い瞳の色と同じ…同じ青い炎に怪物は包まれた。
僕の右手からは青い炎がかすかに残り、メラメラと燃えていた。
僕の青い瞳は光輝き、身体じゅうが熱くなっていた。
「…。き、きみもしかして…。」
震えるような。驚くような。か細いハレベルさんの声が背後から聞こえた。
「あ、えと…。」
「デオラデ!今すぐここからっ…!!」
ハレベルさんがそう言いかけたつかの間、僕は誰かに後ろから肩を掴まれた。
「はじめましてデオラデくん。君は素敵な魔法の持ち主だね____」
背筋がぞっとするような、不思議な声。
金色に輝く髪が視界に入る。
そっと振り返ると、すらっと背の高い白衣を着た大人の男性がニコニコと笑顔で立っていた。