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藤城皐月物語 2  作者: 音彌
第3章 広がる内面世界
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154 修学旅行実行委員会

 帰りの会が終わり、児童たちが楽しそうに教室を出て家に帰り始めた。そんな中、修学旅行実行委員の藤城皐月(ふじしろさつき)筒井美耶(つついみや)は理科室へ向かった。今日は第1回目の修学旅行実行委員会がある。

 委員会は3棟ある校舎の真ん中の、中校舎の2階の理科室で行われる。中校舎には職員室や備品室があり、理科室は教師にとっては使い勝手がよいところにある。六年生の教室は同じ校舎の3階なので、六年生の児童にとっても理科室へは移動が楽だ。

「ねえ藤城君、修学旅行実行委員って他の委員会よりもプレッシャーがあるよね。そう思わない?」

「ああ、そうかもね。思ったよりも責任が重そうだよな。それにやることが多くて、面倒くさそう」

「あ〜あ、なんか緊張してきちゃった」

「大丈夫だって。俺がいるじゃん」

 皐月も美耶も今まで責任の重い委員を経験したことがなかった。今までに一度でも学級委員をやっておけば、実行委員なんかにプレッシャーなんか感じなかったのかもしれない。

 修学旅行実行委員は毎日のように委員会があり、クラスでその報告をしなければならない。美耶は人の矢面(やおもて)に立つようなタイプではないので、皐月は朝の会や帰りの会での質疑応答を、物怖じをしない自分がするつもりでいる。


 6年1組側の階段を下りるとすぐに理科室がある。戸が開いているのでもう誰かが来ているのだろう。皐月は他のクラスの実行委員が誰なのか気になってきた。

 理科室に入ると一組の男女がすでに来ていた。そこには昼休みに見た顔があった。

「あれっ? お前、実行委員だったの?」

「藤城君! そっか……実行委員だったんだ。だから図書室で京都の本なんか見てたんだ」

 6年1組の修学旅行実行委員は児童会長の江嶋華鈴(えじまかりん)と、顔は知っているが話したことのない黄木昭弘(おおぎあきひろ)という男子だ。

「会長なのに修学旅行の実行委員までやるんだ。大変じゃない?」

「まあね……。でも、修学旅行の期間中は児童会の仕事を全部副会長に丸投げしちゃうから、いいや」

「やるな、江嶋」

「藤城君、よく実行委員なんてやろうと思ったね。こういう面倒なこと好きじゃないでしょ? もしかして、クラスの子たちに押し付けられた?」

 最初は学級委員の月花博紀(げっかひろき)が実行委員をやると言っていた。だが、皐月は博紀の個人的な理由を聞かされて、博紀の代わりに委員をやってくれと頼まれた。皐月は学級委員に推薦されたという形で引き受けることになったが、体よく押し付けられたと言えなくもない。

「まあそんなとこかな……よくわかったな?」

「そりゃわかるよ。藤城君って断るの苦手だもんね。要領悪いし」

「じゃあ、要領のいい江嶋がなんで実行委員なんてやろうと思ったんだよ?」

「だって卒業アルバムに委員会の写真が載るでしょ? 私の写ってる写真が一枚増えるんだから、やらない手はないよね」

「えっ! お前、そんなしょーもないこと考えてんの? じゃあ、児童会長もそんな理由でなったのか?」

「そうだよ」

バカじゃねえの……」

 苦笑した皐月の言葉に笑顔で応える江嶋華鈴。皐月には華鈴の本心がわからなかったが、「そうだよ」を言葉通り受け取る気にはなれなかった。五年生の時の華鈴はそんなに目立ちたがり屋ではなかったからだ。


 2組と3組のクラスの実行委員が理科室に入って来て、4組までの総勢八人が集まった。真面目そうな児童が集まったという印象で、児童会役員が二人もいる。集まったメンバーの中で皐月が一緒に遊んだことのあるのは、2組の男子の中島陽向(なかじまひなた)だけだった。

 他の委員も学級委員でもやっていそうな子ばかりだ。ちなみに学級委員を置いているのは4組だけで、他のクラスには学級委員は存在しない。クラスによっては細かく委員を決めたり、行事ごとに実行委員を決めたりしている。


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