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藤城皐月物語 2  作者: 音彌
第4章 深まる季節
109/142

213 京都観光予定表

「できたね! これ、完璧じゃない?」

 面倒だと思っていたタイムテーブルの作成が短時間でできた。藤城皐月(ふじしろさつき)は有能な人たちが力を合わせると仕事が早いことを実感した。

「分単位でスケジュールを組むなんて、凄いを通り越してキモいね」

 細かいことが苦手な栗林真理(くりばやしまり)から見ると、この予定表は脅威的だ。辛辣な言葉を吐きながらも、言い方に敬意が込められているので、予定を組んだ岩原比呂志(いわはらひろし)は嬉しそうに真理の言葉を聞いていた。

「バスじゃなくて鉄道で予定を立てたから、ここまで細かく具体的に決められたんだと思う。鉄道好きの岩原さんのお陰かな。私、京都の旅行ってバスやタクシーで移動っていう先入観があったよ」

 二橋絵梨花(にはしえりか)は成果をきちんと評価して、その中心人物を讃えることができる。クラスの男子は絵梨花と話をする機会がほとんどないので、絵梨花のこの能力はあまり知られていない。もしクラスの男子が絵梨花の性格を知ったら、もっと人気が上がるだろう。

「私は鴨川デルタでお弁当が食べられるのが嬉しい」

 鴨川デルタは吉口千由紀(よしぐちちゆき)が行きたいといった場所だ。皐月たちは誰も鴨川デルタを知らなかった。みんなで調べてみると、小説や映画の舞台になったり漫画やアニメにも出てくる聖地らしい。

 皐月には京都と言えば平安京といった市街地のイメージが強かった。だが千由紀は京都の旅行なのに、自然の中でご飯を食べられる時間を考えた。しかも下鴨(しもがも)神社のすぐ近くだ。これは千由紀のファインプレーだ。


「じゃあ、これを先生に見てもらおう」

 作成したファイルをサーバーにアップロードし、班の6人全員で前島先生の元へ向かった。

 教室の窓際の角にある先生の机の周りはいつもよりも場所を広く空けてある。ここに児童たちは自分の椅子を持ってきて、じっくりと腰を据えながら先生とスケジュールの打ち合わせをする。皐月たちの班は予定表の提出が一番遅かった。

「先生、3班の予定表ができました。検証よろしくお願いします」

「はい。じゃあ見せてもらいますね」

 比呂志がアップロードしたファイルを前島先生が開いた。

「うわ〜っ、細かいわね〜」


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3班 修学旅行初日 京都観光予定表


9:10 京都駅 発 JR奈良線 奈良行 各駅停車

9:13 東福寺駅 着

9:26 東福寺駅 発 京阪本線 出町柳行 準急

9:29 清水五条駅 着 徒歩 1.4km

9:49 清水寺 着

10:35 清水寺 発 徒歩 1.4km 産寧坂、二寧坂、ねねの道、円山公園経由

10:55 八坂神社 着

11:10 八坂神社 発 徒歩 1.3km 花見小路通経由

11:31 祇園四条駅 発 京阪本線 出町柳行 特急

11:37 出町柳駅 着 徒歩 190m

11:40 鴨川デルタ 着 昼食

12:00 鴨川デルタ 発 徒歩 500m 河合神社 経由

12:30 賀茂御祖神社(下鴨神社)着

12:35 賀茂御祖神社(下鴨神社)発 徒歩 500m

12:50 出町柳駅 着

12:54 出町柳駅 発 京阪本線 淀屋橋行 準急

13:16 龍谷大前深草駅 着 徒歩 550m

13:23 伏見稲荷大社 着

13:33 伏見神寶神社 着 徒歩 550m 千本鳥居

13:40 伏見神寶神社 発 徒歩 550m

13:50 伏見稲荷大社 着

14:05 伏見稲荷大社 発 徒歩 260m

14:20 稲荷駅 着

14:23 稲荷駅 発 JR奈良線 京都行 各駅停車

14:28 京都駅 着

14:41 京都駅 発 近鉄京都線 橿原神宮前行 急行

14:43 東寺駅 着 徒歩 450m

14:48 教王護国寺(東寺)五重塔 着

15:30 教王護国寺(東寺)五重塔 発 徒歩 350m

15:37 東寺駅 発 近鉄京都線 京都行 急行

15:39 京都駅 着 お土産タイム

16:20 京都駅 発 徒歩

16:30 つづれ屋旅館 着


修学旅行初日 京都観光予定表

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 前島先生の驚く顔を見て、比呂志が得意そうな顔をしている。比呂志にとっては細かいという評価は称賛に等しい。鉄ヲタ比呂志の面目躍如だ。

「遅延が頻発するバスは一切使わないようにしました。鉄道と徒歩だけで計画を立てたので、時間的にはほぼこの通りに行くと思います」

 班長の千由紀を差し置いて、比呂志が先生に答えた。みんなの行きたいところを繋ぐのは比呂志のミッションだった。千由紀は最初から、先生に検証をお願いする時は比呂志に解説をお願いすることを決めていた。


「それにしてもよく歩くわね……」

「だいたい移動距離で10kmくらいですかね」

「10km! 修学旅行というよりも遠足みたいね。10kmと言っても参拝の時も境内を歩くでしょうし、実際はもっと距離が延びますね。大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」

 前島先生の心配に比呂志は即答した。

「清水寺から祇園四条(ぎおんしじょう)駅までは単に移動ではなく、街歩きなんです。楽しいからたくさん歩いても平気です」

 比呂志の言葉足らずの返事では説得力がないと思い、千由紀が先生に移動距離が長くなった理由を説明した。

 産寧坂(さんねいざか)二寧坂(にねいざか)、ねねの道、円山(まるやま)公園と歩いて八坂(やさか)神社まで行き、祇園四条駅までは花見小路通(はなみこうじどおり)を経由するという大回りになる。

 およそ1時間の歩きになるが、途中に見所がたくさんあるので、みんな今から楽しみにしていることを伝えた。前島先生は予定表を見ながら、少し考え込んでいた。

「そうよね……旅行だから、そりゃ歩くわよね。疲れの出ないよう、班のみんなで気をつけてくださいね」

「はい」


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