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藤城皐月物語 2  作者: 音彌
第4章 深まる季節
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206 委員長の仕事ぶり

 藤城皐月(ふじしろさつき)松井晴香(まついはるか)に少し遅れて筒井美耶(つついみや)の席へ行った。昨夜のメッセージでのやり取りのことで美耶に話をしておきたいことがあった。

「おはよう」

「あっ、おはよう。藤城君」

「昨日話してた手書きのページのことなんだけどさ、下書きの原稿はもう書き上げておいたから、清書に取り掛かってもらいたい」

「もう書いちゃったの?」

「まあね」

 美耶とメッセージをかわしていたのは夜の9時半頃だった。健康的な小学生ならそろそろ寝る時間だ。皐月は寝る前に原稿の下書きを完成させて、プリントアウトしておいた。

 美耶に持ってきた下書きを見せると、ホッとした表情になっていた。不安が消えたのだろう。不安の原因は何をどれだけすればいいのかわからないことだ。だから美耶に早くやるべきことを示してあげたかった。

「昨日もメッセージに書いたけど、もし中澤さんが少しでも作業を嫌がるようだったら、筒井一人でやっちゃってほしいんだ。いいかな?」

「うん、わかった。このくらいの量なら一人でも大丈夫」

「ありがとう。助かる」

 昨夜の美耶のメッセージはしおり作りの不安と、中澤花桜里(なかざわかおり)の憂鬱に関することだった。田中優史(たなかゆうし)のやる気の無さで、6年3組の修学旅行実行委員会はうまく機能していない。

 皐月は美耶に花桜里のサポートを改めてお願いし、皐月が美耶のサポートをすることを約束した。これで美耶の不安を全て払拭できたと思う。


 美耶の席に遊びに来ていた晴香は皐月の作った修学旅行のしおりの下書きを見ていた。晴香は皐月の仕事ぶりに感心しているようだ。

「藤城、あんた、ちゃんと委員長やってるんだね」

「ははは。あまりちゃんとはできていないかな。委員の奴ら、みんな俺の言うことなんて聞いてくれないし、江嶋には怒られてばっかりだ」

 皐月としては自分なりによくやっているつもりだが、晴香に言ったことは自分の反省点だ。謙遜でも自虐でもなく、素直に本心から出た言葉だった。

「嘘! 藤城君すっごく頑張ってるんだよ、晴香ちゃん」

「よかったじゃん、藤城。美耶が褒めてくれたよ」

 立候補を取り消した負い目でもあるのか、皐月に対して晴香が妙に優しい。

「まだ大したことしてねーよ。頑張らなきゃいけないのはこれからだ」

 晴香の前で美耶に褒められるのはどうも居心地がよくない。皐月は晴香には少し馬鹿にされているくらいが丁度いいと思っている。

 でも晴香に優しくされるのはやっぱり嬉しい。晴香には大切に扱ってもらいたくなるような女王様的なカリスマがある。

「藤城君ってね、教室にいる時と違って委員会だとテキパキとみんなを仕切ってかっこいいんだよ〜」

「へ〜。クラスじゃいつもバカっぽいのにね〜」

「バカっぽいとか言わないでよ! 明るくて楽しいだけなんだから」

「はいはい。わかりました」

 いたたまれなくなった皐月は速攻で美耶の元から離脱した。美耶の隣の席だと晴香からは逃げられない。美耶と席が離れて心の底から良かったと思った。

 晴香は博紀のことが好きなくせに、6年4組の男子では皐月と一番たくさん話をする。それが皐月にはどうも居心地が悪い。

「委員会、頑張ってね〜」

 晴香が皐月に手を振っていて、その隣で美耶が幸せそうな顔をしていた。


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