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エルデ、宰相閣下と『御話』する。

 



 ―――― そんな『想い』を胸に秘めつつ、朝食会は進み、やがて食後の黒茶に辿り着く。




 歓談も良い感じに進んでいる。 貴族的な腹の探り合いは、何時もの事なんだけれど、閣下もフェルディン卿も、それなりに楽しんでおられるのよ。 知識と知恵の交歓。 とても、良い事なのよ。 事象を多面的に見詰める事は、より深く問題解決の道を模索できるって事。


 宰相として、日々のお勤めで、ややこしい問題ばかり持ち込まれる宰相府に於いて、多元的な視点が問題解決の糸口に成っているのは間違いないわ。 だから、宰相閣下は柔軟な思考を良しとされるのよ。


 そして、朝食会は終わる。


 フュー卿も、シロツグ卿も、すべき事は沢山ある。 満足気に大食堂を後にされるお二人。 まぁ、なんとか、別邸『女主人』の役割を果たす事が出来たかな? お二人の後姿を見遣りつつ、閣下がそっと私に言葉を紡がれたの。




「エルディ…… 少々、時間を貰っても良いか?」


「はい? 閣下?」


「この後、君は小聖堂にて、”第三位修道女 エル ”に立ち戻るのであろう?」


「ええ、まぁ…… 左様に御座いますが…… 昨夜の行動に、なにか、わたくしに問題が有りましたでしょうか?」


「いや…… 違う。 先ずは、『謝罪』を…… と、思ってな」


「閣下?」




 驚いた。 本当に、不意打ちだったの。 昨晩の事は、覚えているわ。 何かしら、本邸で有った事は判っている。 あれだけ、苦虫を噛み潰した表情を浮かべていたバン=フォーデン執事長。 ベルクライト本邸執事長に何かを指示した事も知っているし…… その後、慌ただしくあちらが動いていたのも、何となくだけど、感じても居た。


 でも、その『何か』が、判らない。 早々に帰邸したものね。


 閣下が私に手を差し出して、起立を促す。 あまり時間は無いけれど、閣下が『時間が欲しい』と、云われるならば、それに従うしかない。 閣下の手を取り、椅子から立ち上がる。 フェルディン卿が、何とも言えない表情で後に続いていた。




 ――――――




 大食堂を出て、回廊を廻り裏庭へと続く小道へと足を向ける閣下。 私が小聖堂に着任した時には、鬱蒼とした樹々で埋め尽くされていた裏庭であった其処は、聖堂教会 修道士の猛者たちと、別邸の庭師たちの手により、大きく切り開かれ、青々とした芝の絨毯が敷き詰められてたの。


 荒れ果てた…… とも言えた、別邸の様子が、日々更新され、重厚な佇まいに彩りを与えて行っている。


 もう、荒れた屋敷とは見えないわよ。 其処此処に、精霊様の恩寵を感じる素敵なお庭に成ったんだものね。人が棲む…… その家の家人が棲むと云う事は、その屋敷を蘇らせると云う事なのかもしれないわ。 ただ、その家人が『仮初(かりそめ)』の娘と云うのは、少々問題があるとは思うのだけど……


 散策路(プロムナード)を辿り、蘇った小噴水の近くに設置されたガゼボ(東屋)に誘われる。 夏も終わり、秋風が立ち始めた御庭。 まだ、枯れ葉も多くは無いけれど、少々もの悲しさを感じさせているわ。 腕の良い庭職人の手で整えられた庭園に、樹々の扱いの旨い修道士様方が、祝福を与えたとしても、刻の流れには抗しがたい。


 でもね…… 私は、そんな《お庭》が、好きなのよ。 春夏秋冬、其々の時期に様相が流転する、美しいと云える自然の様相。 大地を司られる精霊様と共に歩んでいるのだと、そう思えるのだもの。 常に変化して行く様は、眼と心を癒すの。 


 ガゼボに到着した私達。 閣下は石造りの長椅子の上に、大判のハンカチーフをふわりと落とされる。 これは、此処に座れと云う事ね。 小さく頷いて、その様に。 閣下は、その長椅子の近くに有る別の椅子に腰を下ろされるの。 当然の様に閣下の背後に侍られるフェルディン卿。 


 さて…… 何の御話かな? 身構えながらも、御話を聞く為に心を落ち着かせるの。 




「エルディ…… 済まなかった。 私は初手(・・)から間違いを幾つも犯した。 君について、韜晦された情報を掴まされた事が、事の始まりだった。 そして、幾つもの錯誤と誤解と悪意が混ぜ合わされ、君に要らぬ苦労ばかりさせてしまった。 此処に、フェルデンが当主として…… 亡き妹の『遺言執行者』として、真摯に君に陳謝したい。 申し訳なかった。 今後は、あのような事が無きように、考えていく」


「陳謝には及びませんわ。 なにより、陳謝すべき事柄では無いのでは? 宰相閣下は国家運営に深く関与し、そして、果てしなくお忙しい。 朝食会の参加も、お仕事の一環なのでは?」


「エルディ…… それは、違う。 私は愚かだった。 陛下の藩屏たるを心に、職務に邁進した結果、侯爵家内の事柄について、心を砕く事が無かった。 家内、家政に関しては全て妻フランソワに一任していた。 子供たちの成長も、一枚の報告書だけに頼っていた。 不甲斐ない父親であった。 心を近くしない者が、父などと云えたものでは無い。 子供達に厳しく接するのは、フェルデンが家風でもある。 私もそう育った。 しかし、私が厳しくすればするだけ、妻が甘やかした事は、想定外であった。 いや、言い訳だなコレは……」


「つまり…… 今朝、閣下が別邸にて『朝食』を、取られたのは……」


「『君への謝罪を成す為』にだ。 昨晩…… 別邸の侍女に ”叱られた ”。 幼子の時に、乳母から叱られて以来、何十年ぶりかに。 ―――命を賭した『箴言』だった。 別邸の者達は、君に心酔しているモノと見える。 そうでなくては、あれ程、真摯に意見する事など、考えられない。 使用人達の心の根底に有るのは何かを考えた。 そして、各種の報告書が語っている事実に気が付いた。 そう、君は別邸に於いて、フェルデンが別邸『女主人』として、振舞おうとしている。 そして、その能力も有る。 バン=フォーデンが、私に告げたよ。 『別邸の事は、別邸にお任せを』 とね。 私は恥ずかしい。 君を『娘』に迎えると云いながら、一体、何をしていたのか と。 ただ、ただ、君その存在を貶める手助けをしただけだったのでは無いか と。 昨晩…… 一晩中、自問したよ。 そして、一つの想い(・・)が湧きあがった」


「どのような、『想い(答え)』に御座いましょうか?」


「あぁ。 エルデ。 君は、亡き ミリリア = アンネマリー = ディー = フェルデン の遺児。 例え面識がなくとも、アンネは君の母親なのだ。 そして、私の姪に当たるのだ。 (アンネ)は私に託したのだよ、『娘の倖せを護って欲しい』とね。 一晩中考えた。 君の倖せは何処に有るのかと。 最終的に、決して『フェルデン侯爵令嬢』である事が、君の倖せでは無いと至った。 「養育子(はぐくみ)」として、我が家に迎えた事は、間違いでは無いと思いたい。 しかし、君は『神籍(・・)』に有る『神聖聖女』であったのだ。 たかだか、『フェルデン侯爵家』の令嬢で、収まる器では無いのだと…… 思いに至った。 ……昨日の晩餐会の帰り際に於いて、君は自身の事を『試験紙』と云ったそうだな」


「ええ、御継嗣様が試問される場に於いての『設問』であり、試験紙(・・・)。 わたくしに対する態度と考え方で、彼の尊い方の『為人』、『人品』、『矜持の在り方』が、如実に浮かび上がる為に…… ご協力いたしました。 あの…… ダメでしたか?」


「あの晩餐会は、一族連枝の者達に君と云う人物を披露し、一族に加わると宣する為に行った。 少なくとも私はそう 息子のエサイアスに伝えたつもりだった。 従弟エバン、そうであろう?」




 閣下の背後に控えられていたフェルディン卿が、恭しく頭を下げる。 ふーん、そうだったんだ。 今と成っては、閣下の想いは『どうでもよい事』に成ってしまったわね。 アレでフェルデンが御連枝、御一族様方は、私の事は取るに足らない、教会からの『贄』と認識してしまったのだから。




「エバンの緊急報で急ぎ本邸に帰還し、集まっていた者達に事情を問い質した。 惨憺たる晩餐会の内容に、目の前が暗くなるほどだった。 エサイアスには、会って顔と顔を突き合わせ、伝えるべきだった。 何をどう捻じ曲げたのか…… 曲解にも程が有る。 エサイアスの傍付にしても、同じであった。 いや、その者達が(そそのか)したとも言えたな。 皆、何か…… 固定観念に縛られているかの様な有様だった。 一族連枝の者達も、私の怒りに畏れるだけで、怒りの理由にまでは至っていなかったようだ。 つくづく、私は愚かで、家族を家門を御座なりにしていたと、そう自覚できた。 君に謝罪せねば、と別邸に向かい、そして、王宮侍女殿に『箴言』を喰らった。 自身を見直せと、そう苦言を呈せられた。 状況を見誤った愚行を指摘された私は、私なりに考えた。 『君の倖せ』についてな」


「左様に御座いましたか。 それで、結論と致しましては、わたくしが、貴族家が令嬢としての倖せを望んでいないと…… やっと、至られましたか」


「あぁ、やっとな。 貴族と教会の間の溝を埋める為に派遣された来た神職。 それが、君なのだと、もう一度、ハッキリと理解した。 私が考える、貴族令嬢の『倖せ』など、君にとっては塵芥と同じなのだと、思い至った。 既に、君には為すべき『誓約』が有る。 神と精霊に誓った『誓約』が。 ならば、『私の考える』君の倖せを押し付ける事は…… 神の御意思に反するのだと。 故に……」




 静かに瞑目し、そして、言葉を選ぶようにして口に乗せられる閣下。 フェルデン侯爵家が当主が、自身の『名』を持って決断され、誰にもそれを覆させないと云う信念が備わっていた。 と、同時に、静かな諦観と、哀しみと、そして、決意を込めた言葉を紡がれたの。




「君をして、『貴族の世界』に縛る事はしない。 君が望むならば、フェルデンが家の力を使い、君の為すべきを成しなさい。 金穀にしても、人脈にしても、協力(・・)は惜しまない。 そして、君が誰にも利用されぬ様、護り抜く。 ……ただ、見守る事しか、私には出来ないからね。 君が望む(神の御導き)なら、バリュート共和王国でも、蓬莱国でも、その身を移す事にすら援助(・・)しよう。 私はね…… やっと、ウルティアス大公の言葉に理解が及んだのだよ。 ”神聖聖女を縛る鎖と成るなかれ” の意味をね」


「閣下。 有難く存じ上げます。 ……わたくしが何者なのか、そして、わたくしが成すべき『誓約』が何なのを理解して頂いて。 ……それで、御本宅の方は、如何なさいますか?」




 私の言葉に、フェルディン卿がビクリと身体を震わした。 剣呑な光が閣下の瞳の中に浮かび上がる。 その意味を、私が間違う筈は無い。 この瞳の光は、見た事が有るもの。


 御継嗣、ヴィルヘルム = エサイアス = ドゥ = フェルデン 従伯爵が、私を断罪した時にした瞳の中の光と同じだったんだもの。


 こ、これは……

    控えめに言って……

      大惨事に成るわ……





 ――― § ―――





 さやさやと、朝の風がガゼボを通り抜ける。 気持ち良い風なのだけれど、今は少々居心地が悪い。 渋面を作られているのは、侯爵閣下。 様々な思いが胸に去来しているのだろうな。 それに反して、極めて冷徹な表情を浮かべられているのは、フェルディン卿。 『悪鬼』や『羅刹』の表情とも云えるのよ。




従兄()上。 わたくしは、未だに承服致しかねます。 フェルデンが賢姫と云うべきエルディを、市井に放つかのような御言葉、撤回を求めてやみません。 此れだけの才を持ち、王国の『法』にも、高度な貴族の社交にも精通した聡明なる淑女を野に放つ事は、王国に取って大きな損失と成りましょう」


「その結果、エルディを…… 王家血筋の『何方か』に嫁がせるか、侯爵家令嬢(・・・・・)として。 聡明な従弟()エバン。 エルディは、お前も推察する通り、『神聖聖女』なのだ。 その神名を『エルデ』と云う、神籍に属する者なのだ。 国王陛下の深い憂いである、聖堂教会と貴族の者達に穿たれた巨大な溝に対し、教皇猊下が決断して下さった修復へ至る『鍵』なのだよ。 彼女には、その使命が与えられた。 ならば、同じく問題解決を模索する私達は、彼女に協力こそすれ、その身を貴族が社会に取り込み、解決を阻害する事は ”許されざる事 ”なのだよ、エバン」




 グッと、下唇を噛みしめるフェルディン卿。 遣る瀬無さそうに、私を見遣る。 そして、秘すべき事柄として…… 特にフェルデン閣下の心の内にある、極私的な感情を知っているが故に、小さく言葉を紡がれたの。




「しかし、従兄(あに)上。 御心内には『違えられぬ約束』が、御座いますでしょうに。 それは、如何するのです」


「エバン。 私が妹から願われた事は、娘の倖せなのだよ。 貴族的に考えれば、高貴な家へ…… 崇高な家系に嫁ぐのが順当と云えるし、その才を更に輝かせられる『場所』へと、誘う事なのだろうと思う。 が、それは、あくまでこちら側の考えだ。 エルディが思う倖せとは…… 違うのだよ。 エルディが倖せだと思うならば、何をしても、何処へ行こうと、それは『妹の願いに叶う事』なのだと、思い至ったのだ」


「……それは、そうなのですが…… しかし……」




 お二人の間では、フェルデン家中の事より、私の事の方が重要と思えるような会話が成されているの。 故に、居心地が悪いのよ。 だから、私の事なんで今はどうでもいいの。 本邸の方はどうするのよ。




「閣下。 お話の途中ですが、御継嗣様はこれから、どうなりますでしょうか? 貴族学習院でもお会いする機会も御座いましょうが、此方からご挨拶申し上げても良いものか…… 判断が付きかねますので、お教え頂ければ、嬉しいのですが?」


「エルディ、心配するな。 アレは暫くは学習院には顔を出さない。 幸い、学習方面では『極めて優秀』と、教諭より報告があった。 第一王子殿下が在籍されて居なければ、飛び級にて卒業を認められるほどにと。 であるならば、三年もかけて有力貴族達との交流をする必要もあるまい。 深い交流を持ったとしても、学習院を卒業したら、学友と云う大義名分を以て、時間を食いつぶす輩と成り果てるのだからな」


「それは…… 御自身の御経験からの御言葉でしょうか?」


「…………宰相府での仕事は、閣僚達の取り纏めと調整。 陛下の御宸襟を伺い、国の舵を取るのだよ。 間違っても、亡国への道を辿る事の無きように。 利害を含め、様々な場所での均衡を作りだして行くのが我らの仕事。 そうであろう、エバン」


「御意に」


「そこには、家族、連枝、友人達への情は含まれない。 王家に属する人々に対してもな。 勿論、藩屏たるを自らに律する事と、箴言を吐く事は何の矛盾にも成らない。 過酷な決断と、判断の連続なのだ。 エルディになら、予測はつくであろう? 且つて、君自身がリッチェル領を差配していた時を思えばいい。 差配の範囲が一領地では無く、国となったと。 ……胸が悪く成らないか? 自分が善良だと思えなくなる程に、手練手管、権謀術策を弄さねば成らないのだよ」


「確かに…… その様ですわね」


「学習院の高等部の三年間は、そんな『激烈な現実』を少し離れた場所で、俯瞰的に視る最後の時なのだよ。 しかし、大切な時間でもある。 心を決めるべき時。 心根に何を置くかを決める時間。 王国に身命を捧げる事を覚悟するのもよし。 王族の何方かに、魂を以て仕える事を決めるのも良し。 ただし、其処には、貴族たる者の矜持が無くては成らない。 民を思い、国を想い、我が国の屋台骨を粉骨砕身の覚悟で支えると、気概を持たなくては成らないのだよ。 煽られたにせよ、誰かを蔑視するような、軟弱な考えでは、到底無理だ。 根性を叩き直すなら、今しかない」


「……つまり?」


「二年半程、エサイアスにはフェルデン領のあちこちで、汗を流してもらう。 自分が如何に驕慢な考えを持ち、貴族の特権に胡坐をかいていたかを知って貰う。 領の家臣団には、本家の継嗣では無く、フェルデンが漢と云う眼で見て貰い、その上でフェルデンが漢に相応しい振舞いを躾けて貰う。 なに、私も時間を作り、領地には帰るよ。 成長は、この目で確かめたいのでな」


「御政務は如何しますか? 今でも大層忙しいと思われますが?」


「優秀なるエバンが、均衡を取る。 万が一…… エサイアスに才能が無ければ、エバンがこの国の ”次代の宰相 ”となるのだよ、エルディ。 その為の二年半でもある。 最後の見極めは、この私がするのだ。 愚か者が宰相に成るよりは、遥かにマシだな。 宰相職は、家の威信では勤まらない。 高い見識と、本物の貴族の矜持を併せ持ち、それでも尚 前進して行く気概を持つ者にしか担えない。 私は、そう思う」


「……まさしく鉄血宰相が、御血筋ですね。 『火吹き龍』の異名、伊達では有りませんでした」




 そっかぁ…… 学習院から出て、厳しい現実と相見えるのか、従兄様は。 実力が遺憾なく発揮できる事を、自ら証せなくては…… 宰相への道は閉ざされるのかぁ。 各侯爵家の御領地は、王国の外縁部に有るのよね。 リッチェルは南方辺境域。 そして、フェルデンは…… 西方辺境域だったかしら? 魔物の森も多く、畜産が盛んな御領だと良く聞くわ。 


 相当に揉まれるでしょうね。 人間的にも、肉体的にも。 十五歳からの武者修行って事かしら? 本家の血統の最たる方だから、命の危険が有る場所には行かないだろうけれど…… 厳しい環境なのは、眼に浮かぶわ。 それこそ、晩餐会で私が食したモノが、御馳走に成る程の場所。 



 ――― 耐えられるのかしら?



 ちょっと、心配。 この後の『お勤め』で、神様と精霊様にしっかりとお願いしなくちゃ。 ええ、ええ、必ずや、フェルデンの漢になって帰って来て下さる事を期待して。 



 ――― 心配事が増えてしまった。



 でも、驕慢で傲慢で、下々の事を知らぬ方が、宰相として国を率いる事は、不幸な事だもの。 宰相閣下の御決断に、私は心打たれたの。 


 だって、人任せにはせず、ご自身もご領地に向かわれ、彼の成長を見守ると仰られたんだもの。




 私は、そこに、父親としての『愛』を感じ、素直に御継嗣様が……




 ――――羨ましかったの。





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― 新着の感想 ―
[良い点]  ああ、「人として」の生き様と土台、「貴族として」の矜持と責任を高いレベルで等しく維持出来ているのは流石です宰相様。  御子息の現状は残念ですが、次代はフェルディンに育ってはいるのではない…
[気になる点] >皆、何か…… 固定観念に縛られているかの様な有様だった。 エルデ嬢がなぜか名前を思い出せない教諭といい、 妖精の手が深く長く伸ばされている気配がしてなりません。 [一言] ボンクラ様…
[良い点]  フェルデン卿(御当主・伯父上)が、エル殿の幸せとは何かを、ようやく思慮に入れたこと。  ただしフェルディン卿(従叔父上)は、まだエルディ嬢に執着しているっぽいのが気になりますが……。 […
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